祐輔と明日奈に子供が出来た事が分かった翌日
「なるほど……二人に子供が出来たか……それで、昨日休みを取った訳か」
「はい。明日奈さんは、これから暫くの間は出撃は出来なくなりますから、唯依には負担を強いることになりますけど……」
「問題ないさ、頼ってくれ」
祐輔の言葉に、唯依は頷きながら告げた。唯依としては、新しい命を宿したことに純粋に祝福したい気持ちだ。
「けど、祐輔さんと明日奈さんの子供かあ……可愛いんでしょうねぇ」
「本当にね」
そう言ったのは、笑みを浮かべている吹雪と大井だ。二人も、祐輔と明日奈の子供を、純粋に祝福しているようだ。
「明日奈さん、出撃もですが、お腹への衝撃も気をつけてくださいね?」
「ありがとうね、古鷹ちゃん」
そして、明日奈は古鷹と会話していた。優しく面倒見がいい古鷹ならば、心配は要らないだろう。
「体調は大丈夫ですか?」
「今のところはね。悪阻は人によるって聞いたから、少し不安だけど」
「少しでも気持ち悪くなったら、遠慮しないでくださいね。手空きの娘達で、サポートするようにしますから」
「本当にありがとうね」
既に、明日奈が妊娠したことは知られていて、かなりの人数が祝福を言いにきており、中には手伝うことを公言している艦娘も何人か居る。
そういった艦娘達で、持ち回りを決めているのかもしれない。
「さて、こうなったら祐輔が単独になるが……」
唯依の懸念は、戦術機で出撃した際に祐輔が単機になることだった。戦術機の最小単位は、
「どうせ、暫くは出撃は出来ないよ。それに、単機は慣れてるから」
実は今、祐輔機は本土に送ってオーバーホール兼極東衛士ランキングのログ比較の為に、暫く返ってこないのだ。
「それに、多分だけど……そろそろ極光が来そうだしね……弐型は予備機として保管になって、極光に切り替えになると思う」
祐輔がそこまで言った時、電話が鳴った。
「はい、執務室……はい、分かりました」
吹雪が出るよりも早く受話器を取り、祐輔が答えた。そして、受話器を戻すと
「ちょうど来たみたいですね……ハンガーに行きましょう」
祐輔はそう言って、執務室から出た。そして、ハンガーに到着すると、ちょうど奥の搬入用エレベーターが起動していた所だった。
「今から最新鋭機が搬入されるから、各員気を引き締めなさーい!!」
『了解!!』
里佳が大声で激励し、整備士達は斉唱で答えた。そんな光景を見ながら、祐輔は視線を降りてきたエレベーターに向けた。
先に降りてきたのは、蒼い塗装が施された機体だった。その見た目は、不知火の面影を残しつつ、鋭利な印象になっている。
不知火弐型・フェーズ3
本来の不知火・弐型にして、その性能の高さから極光の名前が与えられた。
「はい、1番ハンガーに移動開始! バランスに気をつけなさい! 今までの弐型と同じと思わないように!」
里佳は全体を見ながら指示を出した。すると、ガントリークレーンが極光の肩を掴み、移動を始めた。それを確認した里佳は、エレベーターを上に上げた。その時になって、祐輔に気付いたようで
「あら、いつの間に来てたの?」
と首を傾げた。
「少し前に……あれが、僕用ですか」
「そ……極光試験量産型の1号機……それを、更に祐輔用に調整した機体よ」
里佳はそう言って、仕様書を祐輔に手渡した。受け取った祐輔は、仕様書を読んでいき
「……さくらさん、ありがとうございます」
と小さく呟いた。すると、今度は二番機が降りてきた。肩のナンバリングは、明日奈を示している。まあ、暫くはハンガーで眠ることにはなるだろう。その極光の仕様書を、明日奈は一読し
「……これを読むと、アメリカの技術力が伺えますね……悔しいけど、帝国だけでは数年は掛かってたと思います」
「そうだな……同意する」
明日奈の言葉に、唯依は同意した。
実際問題、今の帝国は新型戦術機の開発に国内の開発リソースの約8割を投入しているために、既存機の大規模改修という案が出され可決されたら、間違いなく年単位の時間を必要としただろう。
これは、凝り固まった国粋主義故の弊害である。アメリカのような非常に高い工業力を有しているならまだしも、日本帝国は工業力が限られてしまっている。
今、その工業力を底上げするために、日本と友好的関係の台湾やフィリピン、パラオに生産ラインを建設するという案が議員と各国と協議中という風に祐輔は聞いている。その案が正式に締結されるのは、まだ当分先になるだろう。
「さて、仕様を覚えましょうか……リズさん、後はお願いしますね」
「はいよー! 任せなさい!」
祐輔は搬入を里佳に任せて、ハンガーを出た。
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