唯依と尚人が結ばれて、数日後。
鎮守府執務室にて、明日奈が
「祐輔くん……やっぱり、一時的に編成を変えてでも僚機を編成してほしいんだけど……」
「そうは言いましても……各部隊のバランスも良いですし、僕に付いてこられる人は……」
と祐輔に提案していた。しかし、祐輔は渋い表情を浮かべながら、パソコンのモニターに各部隊の編成表を表示し、唸っていた。そこに、たまたま報告に訪れていたグラーフ・ツェッペリンが
「む? アドミラルは単騎で出撃しているのか? 普通は、
と首を傾げた。
「そうなんですけど……って、グラーフさん。やけに戦術機に関して詳しいですね?」
グラーフ・ツェッペリンが戦術機に詳しいことに気づき、祐輔は思わず首を傾げた。何せ、初音島の艦娘の大半が戦術機の運用に関しては殆ど知らないのだ。
「む? ああ……そういえば、経歴書には私が艦娘になってからの事柄しか記載してなかったな……」
グラーフはそう言うと襟を捲って、その下に隠してあったある二つのバッジを見えるようにした。一つは、衛士を示すウイングバッジ。
そしてもう1つは、三つ首の犬を彷彿させるマークのバッジ。それを見た明日奈は息を呑み、祐輔は驚いた表情で
「ツェ、ツェルベルス!?」
欧州連合ドイツ軍、第44戦術機甲大隊。通称ツェルベルス。欧州連合ドイツ軍が誇る最精鋭部隊で、地獄門と呼ばれるドーバー海峡基地を寄港地とする空母打撃群の艦搭載戦術機部隊である。
そしてツェルベルスで特筆すべきは二つあり、1つ目は即応部隊だということ。故に、その全員が精鋭。
そして2つ目は、全員が貴族だということ。
「ということは、グラーフさんは本当の貴族なんですか?」
「貴族と言っても、領地など無いがな……」
祐輔の問い掛けに、グラーフは肩を竦めながら答えた。しかし、それも無理からぬことである。
今欧州貴族の過半数は、深海艦の大規模侵攻の影響で領地を失っている。その奪還を目指し、欧州連合は奮戦している。
「一応聞きますが、ツェルベルスでの
「強襲前衛を担当していた」
グラーフの告げたポジションを聞き、祐輔は暫く黙考した。そして、グラーフを見て
「少し、腕前を拝見しても?」
と問い掛けた。それから約一時間後、地下のシミュレータ区画。
「なるほど……流石はかのツェルベルス……予想以上でした」
「そう言ってもらえて、光栄だ」
グラーフのシミュレータ結果を見た祐輔は、思わず賞賛していた。グラーフの腕前は、明日奈に優るとも劣らないものだった。それを見て、明日奈が
「祐輔くん、彼女を僚機にしようよ。彼女の腕前なら、問題無いよ?」
と祐輔に提案した。その提案に、祐輔が唸っていると
「私は構わないぞ。私も最近、戦術機に乗りたいと思っていたところだ。腕が鈍りそうでな」
と明日奈に賛同した。どうやら、グラーフも乗り気なようだ。二人の発言と状況から、祐輔は少しの間腕組みして黙考。その結果
「……本当に一時的な措置として、グラーフさんを僕の二番機に指定します」
と祐輔は、二人の提案を飲んだ。その後、祐輔は里佳に明日奈が以前に乗っていた弐型の方を先に調整させて、少しの間その弐型に乗せることにした。
これは、グラーフが日本機の特性に慣れるまでの措置となり、慣れたら極光に乗せる予定だ。
そして、訓練を繰り返しつつも一週間程経ったある日。
『緊急出撃用意! 哨戒艦隊から敵の連合艦隊が接近中と通信がありました!』
グラーフの弐型による初出撃の時が来た。放送を聞いて、祐輔とグラーフは急いで強化装備を装着し、ハンガーに走った。そして、グラーフがコクピットに入ると
『グラーフさんの腕前は信用してますが、久しぶりの出撃なので無理はなさらず。僕も積極的に支援しますから』
「足手まといにならないようにしよう」
祐輔から通信が入り、グラーフはそう返答する。そしてグラーフは、久しぶりの実機の感覚に懐かしさを感じて
「さて……腕が鈍ってないといいがな」
と呟いた。その間に武装が装着され、ガントリークレーンでカタパルトに接続された。隣のカタパルトには、蒼く塗装された極光が固定されている。
『これから出撃しますが、準備は良いですか?』
「ああ、問題ない」
祐輔からの問い掛けに、グラーフは短く返答した。すると、大淀の顔が表示されて
『これより、アサルト隊の出撃を行います!』
『アサルト1、出撃!』
「アサルト2、出撃する!」
そして、祐輔機とグラーフ機は揃って空に舞い上がった。
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