※この作品はR-18です。

艦隊これくしょん・絆の旋律   作:京勇樹

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特務

その時、艦娘大和は自分の境遇に半ば諦めていた。

旧日本海軍が建造した、最強の火力を誇る大和型戦艦。その艦娘の一人、大和。

彼女と姉妹艦娘の武蔵は、約1ヶ月程前にある泊地にて建造された。

その泊地の提督や他の艦娘達には歓迎され、温かく迎えられた。しかし、その泊地は資源が困窮しており、大和と武蔵は片手で数える程度しか出撃したことはなかった。

それが起きたのは、未突破海域の攻略の時だった。

大和と武蔵、そして主力から四人を選抜し、敵ボス艦隊を撃破出来て、突破出来たという報告を提督にしようと通信回線を開いたら、酷いノイズしか聞こえなかった。それに嫌な予感を覚えた旗艦は、即座に帰還することを決めて、出せる限りの速度で泊地に向かった。

近くまで戻った艦隊が目撃したのは、激しく燃えている泊地だった。泊地近海には、夥しい数の深海艦隊の残骸と泊地所属艦娘達の亡骸が浮いていた。

それらから、泊地は大規模な深海艦隊の襲撃を受けて、泊地艦隊は徹底抗戦したが、壊滅したと分かった。

味方艦隊が現れたのは、大和達が帰還して僅か数分後のことだった。その艦隊の艦娘からの話によると、泊地は鬼級率いる大規模艦隊の襲撃を受けたということだった。

海域攻略戦闘を終えた大和達には、最早燃料と弾薬は尽きていたのでどうする事も出来ず、残敵掃討を終えた味方艦隊に途中から曳航され、別の拠点に避難。

その後、大本営を介してある泊地の所属になった。

なったのだが、その泊地の提督が悪徳提督だった。

その悪徳提督は自身の私腹を肥やす為に、艦娘達を違法オークションに出していたのだ。

それを知った大和達は、それからは出撃指示を拒否し続けた。

それに業を煮やしたのか、提督は大和達を違法オークションに出品したのだ。今しがた、目の前で別の艦娘のオークションが終わり、大和の番になった。

 

『それでは、本日の目玉の一人! 戦艦大和の艦娘です!』

 

司会が言った直後、大和が入れられた檻を載せた台車が会場に入り、オークション参加者達がどよめいた。

 

『こちらの大和、少々曰く付きの艦娘でして、壊滅した泊地の生き残りの艦娘であり、提督の指示を拒否した艦娘です! そういった曰く付きなので、お値段は五百からスタートです!』

 

使われる貨幣は、基本的にアメリカドルになる。

そして、始まったオークションに、大和がもうどうにでもなれ、と思った。その直後、轟音が鳴り、会場が大きく揺れた。

 

「なんだ!?」

 

「何事だ!?」

 

参加者達が驚いていると、一人のスタッフが入り口から入ってきて

 

「た、大変だ! 特務が現れた! 正面は長く保たない!!」

 

と告げた。よく見れば、側頭部に血が流れている。もしかしたら、戦闘したのかもしれない。

スタッフの報告に、参加者達が次々と慌てた様子で立ち上がった。しかし、司会者は落ち着いた様子で

 

『ご安心ください、お客様。当会場には、安全に脱出出来る裏ルートがございます』

 

と言って、机の上のパソコンを操作した。すると、大和と司会者が居る壇の客席側の壁の一部が動いて、ドアが現れた。司会者はそのドアの前に立つと

 

『皆様、こちらから脱出出来ます』

 

と言って、ドアノブに手を掛けた。次の瞬間、轟音が鳴り響いでドアが破砕され、司会者の頭が無くなった。

その光景に参加者達が固まっていると、ドアの向こう側からパイルバンカーを構えた強化外骨格が姿を見せた。

 

『本気で逃げられるとでも、思ったか?』

 

変声器を使っているようで、機械的な声が強化外骨格から聞こえる。その言葉から、正面から来たという特務の仲間だと分かり、参加者達は正面の出入口に向かおうとしたが、先ほどのスタッフはヘルメットを装着した刀を持った人物に斬り殺され、更には両手に銃を持った人物が出入口に立っていた。参加者達が止まっていると、強化外骨格の方から

 

『抵抗並びに逃げるならば、全員殺す。投降するならば、命だけは助ける』

 

と聞こえて、参加者達は全員ゆっくりと両手を挙げて膝を突いた。その後、参加者達は全員拘束され、一人ずつ護送車に乗せられていく。

中には悪態を吐き、直ぐに自由になると言う人物も居るが

 

『二度と、自由になれるとは思うな』

 

と告げられて、沈黙した。

その間、強化外骨格の人物。祐輔は、強化外骨格から出て、檻に入れられていた艦娘達を解放していた。

そして、大和が閉じ込められている檻に近づき

 

「大丈夫ですか、大和さん」

 

鍵を開けて、大和に手を伸ばした。すると大和は、何かに気付いた様子で

 

「その声……あの初音島の……」

 

「……貴女の妹の武蔵さんも、既に保護しました……脱出しましょう」

 

祐輔は答えずに、大和を檻から救出し外に向かった。保護された艦娘達は、続々と車に乗せられて離れていく。

そして車に乗せられた大和は、静かに見送る祐輔を見えなくなるまで見ていた。

この事件から、約二週間後。祐輔の鎮守府に異動艦娘が来た。

 

「本日より、こちらの鎮守府にお世話になります。大和型戦艦一番艦の大和です!」

 

「初めまして、大和さん。第一初音島鎮守府提督の榊原祐輔です。よろしくお願いしますね……最前線にようこそ」

 

今まで武蔵は居たが、大和は居なかったので、これで祐輔の艦隊に大和型が揃った事になる。

人々に称賛される事は無いが、涙を流す艦娘達の為に戦う。それが特務である。

尚大和の妹の武蔵は、暴行を受けた為に暫く療養が必要で、その後は身の振り方を考えるという。

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