初音島鎮守府から出発した二式大挺は目的地に向かって、順調に進んでいた。しかし、第一艦隊旗艦を勤める大井は嫌な予感に苛まれていた。
(何、この感覚……今までこんな感覚、感じたこと無い……)
彼女も祐輔艦隊ではかなり古参な艦娘であり、その実戦経験はかなりある方である。だが、そんな彼女でも初めて嫌な予感を覚えていた。
その時
「下方の島に、不審な光りを確認!」
と後方の機銃座に座っていた妖精が叫んだ。それを聞いて、近くに居た秋月が機銃座近くの窓から下を見て
「下から何か来ます! 衝撃に備えて下さい!!」
と注意喚起した。次の瞬間、二式大挺の両側を何かが通りすぎて、二式大挺が大きく揺れた。それを耐えてから、大井は
「秋月!」
と秋月の名前を呼び、意図を察した秋月は窓から通過した物。飛行機を確認し
「あれは……陸軍の四式です! 間違いありません!」
と即座に機種を特定した。
「なぜ、陸軍の四式がここに居る! この付近に、陸軍の基地は無い筈だぞ!?」
那智の言葉を聞きながら大井は
「機長、IFFに反応は!?」
「……IFFに応答無し!」
「機銃座、すぐに迎撃して!!」
大井の指示に、機銃座の妖精は即座に従って撃ち始めた。もしかしたら味方かもしれないが、
「大井さん! あれは、間違いなく陸軍の四式ですよ!?」
「IFFを起動させないで、真下から急速接近する方が異常よ! 味方なら、なんでIFFを起動させないの!!」
秋月が問い掛けてきたが、大井は理路整然と返答。そして、機長に
「上部の自動機銃も撃って!! 速度上げ! 逃げ切るの! 四式なら、航続距離はそんなに長くない!!」
「了解! シートベルトを締めて下さい!」
大井を含め、乗っていた艦娘達は席に座るとすぐにシートベルトを締めた。その直後、激しい音が鳴り響き、更に二式大挺が激しい機動を始めた。
「左機銃座、弾倉交換します!」
「右機銃座、同じく!!」
左右機銃座は弾が切れたようで、少々重い音が鳴った。その時、機長が
「敵機接近! 衝撃に備えて下さい!」
と言った直後、二式大挺が激しく揺れた。
「損傷は!?」
「損傷軽微! 飛行に支障はありません!!」
大井からの問い掛けに、機長は即座に答えた。
二式大挺は空飛ぶ戦艦と呼ばれており、特徴としては重武装と重装甲が挙げられる。
重武装は、各所に設けられた大口径機銃と秘匿兵装があり、重装甲は20mm機銃すら弾く装甲を全体に備えており、正に難攻不落となっている。
しかし、相手は陸軍に配備されている局地戦闘機。四式戦
迎撃機として開発された機体で、20mm機銃を標準装備し、更に大馬力のエンジンを搭載している陸軍戦闘機の傑作の一つに挙げられる。
今も二機の疾風は、二式大挺の周囲を軽やかに飛んでいる。
「鎮守府に通信は!?」
「それが、酷いノイズで出来ません!」
副機長妖精の話を聞いた大井は、即座にジャミングを疑った。二機が現れる少し前までは、ノイズは無かった筈である。
(計画された襲撃……つまり、救助要請自体がダミーの可能性が高い!)
そう考えた大井は
「秘匿兵装、使用用意!」
「しかし、あれは提督の許可が!」
「私が責任を取ります! アレを撃墜して、鎮守府に帰投します!!」
大井の判断を聞いて、機長妖精は一瞬迷った後で
「秘匿兵装を使います!」
と告げて、懐から小さな鍵を取り出して座席のアームレイカーの根元の紙を突き破るように刺して、回した。すると、機体底部の装甲が開き、中から二本の円柱状の物が現れた。
技術研究厰で開発された試作兵装。試03式対空噴式弾。分かりやすく言うと、対空ミサイルである。
「ターゲットロック……発射します!」
機長はそう言って、正面の機器に追加されていた黄色いボタンを押し込んだ。すると、轟音と共に噴式弾が放たれ、二機にみるみる内に迫っていく。
二機も回避しようとしたのか、複雑な機動を始める。だが、ある程度近づいた時に噴式弾の装甲が開いたと同時に爆発が起きて、あっという間に二機は蜂の巣になり、爆散した。
試03式噴式弾はある程度敵機に接近すると、中から大量の子弾を周囲にばら蒔いて、複数の敵機をあっという間に撃破出来るのだ。
「周囲に敵機、確認されません!」
「鎮守府に帰投します! 最高戦速!」
大井の指示に従って、二式大挺は一気に回頭し鎮守府へと戻ることにした。
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