直哉機の撃墜は、初音島鎮守府の司令部にも勿論伝わっていて
「トライアド1、シグナルロスト!」
「直哉ぁ!?」
通信将校の報告を聞いて、吹雪が悲鳴気味に直哉の名前を叫んだ。この時、司令部に居た殆どの人員が直哉の戦死を覚悟した。
だが
『こちらトライアド6! トライアド1のコクピットブロック確保! 海鳴鎮守府に着陸し、保護してもらいます!』
という報告に、吹雪が困惑の表情を浮かべた。すると
「何とか、間に合ったか……」
呟くように、祐輔の声が聞こえた。
吹雪が祐輔の方に顔を向けると、祐輔が左目を抑えて、踞っていた。
「祐輔さん!? まさか、アナリティカルシステムで!?」
「相手が噴式弾を撃った際、直哉君がターゲットだって分かったからね……当たる直前に、緊急システムに介入したんだ……」
吹雪が補助しながら椅子に座らせると、祐輔は戦況図に視線を向けながら語る。本当に、紙一重だったのだろう。少しでも遅かったら、機体の爆発に巻き込まれていた可能性が高かった。
「トライアド2! 以後、部隊の指揮権を委譲!」
『了解! トライアド2、部隊を指揮します!』
唯依が弾に指揮を引き継ぐよう指示を出して、次にレーダー士官に
「接近してくる不審な反応はあるか!?」
「海上と航空レーダーには、今のところ不審な反応はありません!」
どうやら、初音島は今のところ大丈夫なようだ。そう判断したのか、唯依は
「祐輔。しばらく、私が指揮を引き継ぐ。少し休んでいろ。アナリティカルシステムを使ったのなら、脳に負荷が掛かっただろう」
と祐輔に休むように促した。確かに、まだどうなるか分からないのだから、休んだ方が良いのは間違いないだろう。しかし、祐輔はどうにも嫌な予感がしていた。
そして、ある可能性に行き着き
「ソナー要員!」
とソナー士官に声を掛けた。
「今のところ何も……いえ、待ってください! ……微弱ですが、何か聞こえる……今まで聞いたことがない音です!」
「なんだと!?」
ソナー士官の報告を聞いて、唯依が予備のヘッドホンを装着し、音を聞いた。
「この音……何かを吐き出す音か……? 通常のスクリューとは違う……」
「……ウォータージェット推進?」
「それだ! 確かに、技術研究厰で試験されていた新型推進機関だ!」
祐輔の発言を聞いた唯依は、技術研究厰で試験運用中の新型潜水艦用推進機関を思い出した。
スクリューとは違い、音をかなり低減出来るかもしれないということで試作された新型推進機関。
それが、ウォータージェット推進だった。
「バカな! あれは、軍事機密だ! それが、何故……」
「須郷元中佐の横流し品のひとつ……そういう事なんでしょうね……対潜戦用意! VLS解放! 対潜噴式弾、発射用意! ソナー要員、先ほどの音を拾ったソノブイの番号は?」
「7時の方向、5番と4番です!」
ソナー士官の報告を聞いて、祐輔と唯依は即座に地図を確認した。かなり近い。もう10kmもない。
その時
「バラストブロー音! 浮上する模様!」
「緒現入力は!?」
「今……終わりました! 発射します!」
火器管制要員がスイッチを押すと、敷地内の一ヶ所のVLSから二発の噴式弾が発射された。
轟音を立てながら、二発の噴式弾は該当海域に疾走を開始。戦況マップに、その様子が表示されている。順調ならば、一分少々で着弾するだろう。
その時
「何か開く音……潜水艦のミサイル発射菅が開いた模様! 相手も攻撃すると思われます!」
「対空警戒! 対空戦闘用意! VLS、対空噴式弾発射用意!」
矢継ぎ早に指示を出している間にも、
上手くいけば、相手がミサイルを発射する前に潰せる。そう思っていたが
「潜水艦から、ミサイル発射を確認! 数は二発!」
僅かに遅かった。戦況マップに、突然その二発の反応が現れた。入れ替わる形で、潜水艦の反応は消えた。
本当だったら、潜水艦を撃沈した事を安堵したい。しかし、そういう訳にはいかない。
「ミサイルの緒現入力急げ! 対空戦闘!」
唯依は指示を下すが、ミサイルの迎撃というのは何分やったことない事であり、誰もが慌てていた。
その時
「……対空レーダーとリンク……対空噴式弾、センサー同調……」
という声を、唯依は聞いた。
唯依が振り向くと、祐輔が右目を閉じ、左目に手を当てていた。
「祐輔、よせ……」
「対空噴式弾……発射」
唯依が止める間もなく、祐輔はアナリティカルシステムで二発の対空噴式弾を発射した。放たれた二発は、真っ直ぐに迫ってくる二発のミサイルに飛翔する。
この時、潜水艦から放たれていたのは気化弾頭を搭載したミサイルだった。
もし迎撃に失敗したら、最悪は初音島が大打撃を受ける可能性すらあった。
だから祐輔は、確実に破壊する為に二発発射した。
だが
「ぐっ……同調が切れた……!」
「対空一番、反応ロスト!」
一発目が、何らかの不調により空中で爆発した。
「戦術機部隊による対空砲撃用意!」
唯依が指示を出すが、間に合うか分からない。
そうこうしてる間にも、三発がぶつかるというタイミングが来た。
そして、先に爆発したのは対空噴式弾だった。
外部のマイクが轟音を拾い、そちら方面の映像も紅に染まった。それと同時に、レーダーもホワイトアウト。
その爆発の規模からして、確実に一発は破壊している。
まして、ほぼ同じ軌道を飛翔していた二発目も巻き込まれている可能性が非常に高い。
しかし、もし偶然にも無事だったらと考えたら、司令部に居た誰もが戦況マップを注視していた。
そしてどれ程経ったか、レーダーがホワイトアウトから復帰すると、何の反応もなかった。
「敵ミサイル……迎撃出来たと判断します!」
レーダー士官のその言葉に、一気に歓声が上がった。
初音島は、危機を脱したのだ。
どういう話を書いてほしいですか
-
戦闘多め
-
日常多め
-
エロ多め