日本国内、ある場所
「何故だ! 何故、こうも上手く行かない! 呼応した部隊はどうした!?」
次々と派遣した部隊の撃滅の報を聞き、長田は頭を乱暴に掻いていた。すると、副官の一人が
「呼応各部隊の報告からになりますが、陸軍、海軍、航空宇宙軍、近衛軍の合同部隊により迎撃され……」
「合同部隊だと!? 誰が総合指揮を……まさか!?」
長田はその時になり、悠陽が指揮を執り始めたと気付いた。特に近衛軍は悠陽と天皇の指示しか受け入れない為、悠陽が指揮を執り始めたと考えるのが自然だった。
「あのお飾りめ……! お飾りならお飾りらしく、人形のように座っていればいいものを……!!」
長田は、悠陽の事を軽視していた。
実は長田は、須郷を通じてアメリカ軍と繋がりがあり、そのアメリカ軍の高官が長田にある条件を告げた。
それは、クーデターが上手くいった場合、アメリカ軍が後ろ楯になって軍の最高責任者にしてやる。というものだった。
今の地位に不満を抱いていた長田はそれに飛び付き、今回のクーデターを引き起こした。
須郷からの横流しの試作兵器や、単冠湾の提督を通じて入手した
だが、結果はどうだ。
予定より呼応した部隊は少なく、派遣した部隊は次々と通信途絶。何もかもが、上手くいっていなかった。
予定では、呼応する部隊は陸軍の半数と航空宇宙軍の凡そ二割。それと海軍の単冠湾と鎮海警備府の二ヶ所。
しかし、実際に動いたのは陸軍は5%程で、航空宇宙軍は動き無し。海軍も無し。
しかも、既に長田の第六師団は半数が消えた。
何よりも、切り札の気化弾道。10発の内
その4発で海軍の重要拠点の海鳴と初音島鎮守府を潰し、残りの6発で近衛軍と呼応しなかった軍を消し、《既に引き入れたアメリカ軍》で帝都城を占拠し、悠陽を消して、冥夜にすげ替える。
そういう手筈だった。
だが、虎の子の潜水艦枯れたの通信は途絶えた。
「何故だ……何処で計画から逸脱した……!」
呆然と呟く長田を見て、副官が冷たい目をしながら
(……こいつはもう駄目だな……仕方ない、サブプランに移行するか……)
そう判断し、袖の中から小型拳銃とスイッチを取り出した。
場所は変わり、統合司令部。
「なんだと、本当なのか?」
「どうしました、黒鉄大将」
部下からの報告を聞いた黒鉄大将が声を挙げると、悠陽が問い掛ける。すると黒鉄大将は
「殿下。新たに、所属不明部隊が出現し、帝都城に向かいつつあると」
「所属不明部隊?」
黒鉄大将の報告に、悠陽は思わず片眉を上げた。
「は……帝国軍の物とは違う装備の部隊が突如現れ、攻撃を仕掛けてきたと……こちらに映像が」
黒鉄大将はそう言いながら、悠陽に端末を見せた。
確かに、帝国軍とは違う装備。防弾アーマーやヘルメット、小銃を持った部隊が非常に統率の取れた動きで侵攻している。
悠陽はその部隊を見て
「……確かに、帝国軍とは違う装備ですね……照合で出せますか?」
とオペレーターに照合するように要請した。
そこへ、武仁が入室し
「殿下。悪い情報が入りました。どうやら単冠湾はアメリカ軍と接触したようです」
と言って、持っていた端末を差し出した。
「アメリカ軍と?」
「はっ。桐ヶ谷技術少佐の解析により、アメリカ軍から装備を入手した事が確認出来ました。他にも、通信が有りましたが、現在解析中です」
どうやら、第一報を持ってきたらしい。それを聞いた悠陽は、黒鉄大将が出した端末を見て
「つまり、先ほどのはアメリカ軍の装備という訳ですか」
と呟き、それを聞いた武仁が苦々しい表情を浮かべた。どうやら、事態を察したらしい。
「まさか、アメリカと繋がるとは……思いもよらず……申し訳ありません、殿下」
「……防人大将」
「はっ。なんでしょうか」
「単冠湾ですが……もしかしたら装備だけでなく、人員も引き入れた可能性があります」
悠陽の言葉に、武仁と黒鉄大将は驚きの表情を浮かべた。あり得ないとは言えないからだ。
「そうなれば、この所属不明部隊も分かります……この練度はアメリカ軍……それも恐らく、海兵隊でしょう」
悠陽の推測に、司令部の要員達はざわついた。しかし、悠陽が
「落ち着きなさい。アメリカのこれ以上の介入を許す訳にはまいりません。防人長官、黒鉄大将」
『は!』
「虎の子を出します」
悠陽の言葉に、武仁と黒鉄大将は僅かに驚きながらも
「承りました」
「直ぐに手配します」
と告げて、一度司令部から出た。
「殿下」
「今は安寧が重要……機密を気にしている余裕はありません」
真那にそう言うと悠陽は、毅然とした態度で
「霞部隊を動かします」
と告げた。
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