『よし、もうすぐで御剣家だ……いいか、確実にこの小娘……御剣冥夜を捕縛して、後催眠暗示で従わせるんだ……他の者達は全て殺せ』
アメリカ海軍海兵隊隊長の大尉は悠陽の双子の妹。冥夜の写真を部隊に見せて、そう指示した。今大尉が率いる部隊は御剣家の目と鼻の先に来ており、後は突入するのみという段階だった。
目標は勿論、冥夜の捕縛。
そして
『突入!』
大尉の指示の直後、10名の精鋭部隊は一斉に突入。一人目がドアを蹴り破り、一気になだれ込んだ。
『なんだ……誰も居ない?』
大尉が首を傾げた直後、御剣家は海兵隊全員諸とも吹き飛んだ。
御剣家から僅かに離れた、ある場所にて
「申し訳ありません、雷電様……邸宅を……」
「いや、邸宅一軒程度構わぬ……冥夜を、連中に渡す訳にはいかんからな……」
霞部隊の副官の一人、
海兵隊大尉は気付いていなかったが、実は御剣家一帯は無人化していたのだ。
しかし鴇堵少佐の判断で、市街地で銃撃戦を避けて、相手を御剣家に誘い込み、諸とも吹き飛ばすという作戦が取られた。
無人化したとはいえ、御剣家周辺は雷電の意向で一般人の家が建ち並んでいる。
一般家庭に損害を出すのは気が引けたので、爆薬の位置も調整し、爆発が真上に向かうようにして、一般家庭に被害は出ないようにした。
「既に、セーフティハウスはご用意出来ております……我々に着いてきてください」
「……私が戦う訳には、いかないのか……」
鴇堵少佐の言葉に、一人の少女。悠陽に瓜二つの少女。
冥夜は手に持っていた刀を握りしめた。
すると雷電が
「……冥夜様。冥夜様の活躍の場は、ここではありませぬ……どうか、今は御身を大事にしてください」
と冥夜を諭した。
実は冥夜は、悠陽の影武者としての役割があり、悠陽とほぼ同じ教育を受けているのだ。
そしてそれは、名前からも示されている。
悠陽と冥夜。
悠陽という太陽が出ている間、冥夜という月が出る事はない。
「……冥夜様、こちらを」
そこに霞部隊の隊員が現れ、冥夜に一つの木箱を差し出した。
「これは……」
「殿下からのお預かり物です……冥夜様へ、と」
隊員の言葉を聞いた冥夜は、木箱を受け取ると、中を見た。中には、一つの人形と手紙があった。
人形は飛騨のさるぼぼによく似ているが、冥夜が知るさるぼぼとは微妙に違う。前掛けを裏返してみると、そこには悠陽という名前が刺繍してあった。
その人形を一度木箱に戻し、次に手紙を取り出して、一読し
「姉上……」
と涙を流した。
手紙の内容は簡単に言うと
私は冥夜の事を思っています。
私の元にある人形には、冥夜の名前が刺繍してあります。それを冥夜だと思い、日々の励みにして政務を頑張ります。冥夜も、その人形を私だと思って鍛練を頑張ってください。
という物だ。
冥夜も、悠陽と簡単に会えるとは思っていない。
悠陽が政威大将軍という立場なのもあるが、やはり悠陽に瓜二つの双子というのが理由だ。
実は近衛の中には、悠陽を軽視する老人が居るのだ。
その理由は、やはり悠陽が若いからに他ならない。
今まで政威大将軍になったのは、若くても30代後半からで、悠陽は歴代最年少で政威大将軍になったのだ。
近衛の老人達の間では、双子は凶兆の兆しという迷信が未だに信じられている。
もし悠陽に双子の妹が居るというのが老人達に知られたら、それを口実に退任を要求してくる事だろう。
勿論だが、双子が凶兆の兆しというのは下らない迷信に過ぎない。
しかし老人達からしたら、今までそうやって双子を排除してきたから、日本帝国は繁栄してきたと信じている。
「……分かりました。今は、隠れます」
「承りました。こちらに」
冥夜の言葉に、鴇堵少佐は頷いてから動き始めた。
そして冥夜は、悠陽が居る国防省の方を見て
「姉上……私は、私の戦いをします……」
と言って、鴇堵少佐と雷電の後を追った。
この事件は、ここから終息に向かう事になる。
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