「何故だ! 何故、我々の精鋭が容易く!!」
第六師団を裏から操っていたアメリカ軍の大佐は、苛立った様子で机を何度も叩いていた。
部下達からの報告では、第六師団だけでなく、アメリカ軍の部隊からの通信も次々と途絶していっている。
陸戦部隊は上陸した二個中隊のうち、一個中隊と一個小隊。戦術機部隊は全滅したと考えている。
大佐からしたら、あり得ない事だった。
確かに、深海棲艦が現れてから数年間はアメリカは衰退してしまった。それは事実だ。
しかし、戦術機が開発され、アメリカ国内にも多少だが艦娘が現れた。
ならば、再びアメリカ合衆国こそが世界の中心になるべきだ。
当代のアメリカ大統領はそう考えて、悠陽の暗殺と調べて分かっていた冥夜を暗示で操り、傀儡政権にし、アメリカを宗主国にしようと画策した。
その矢面に立たされたのが、第六師団だった、ということである。
大佐は何とかしようと、今残されてる戦力表を開こうとした。
その時、建物が大きく揺れた。
「な、何事だ!?」
直ぐに受話器を掴み、警備室に居る部下に繋げた。
だが、返事は無い。
「おい! 答えろ! おい!!」
何度呼び掛けても返事は返されず、大佐は苛立ちから受話器を地面に叩き付けて、今居る部屋から出ようとした。
その瞬間、ドアが轟音と共に大佐の方に吹き飛んできて、ぶつかった大佐は壁に叩き付けられた。
その痛みと衝撃で呼吸困難になりながらも、大佐は何が起きたのか把握しようとした。
だが、入り口からドカドカと黒い装備を身に纏った一団が入ってきて、大佐に一斉に銃口を向けた。
「な……」
大佐が困惑していると、一人が拳銃を向けたまま近寄り
「動くな……抵抗するなら、痛い目を見ることになる……貴様で最後だ……投降するならば、命の保障はする」
と告げた。
つまり、拠点に居たアメリカ軍の部隊は全滅したということだ。
「バカな……! 貴様達のような、極東の黄色い猿の分際で……!?」
「その流暢な英語……貴様、アメリカ人か……」
先ほど投降するよう呼び掛けた人物は、別の拳銃を向けると発砲。撃った弾は大佐のうなじ辺りに命中し
「貴様……」
大佐は直ぐに倒れた。撃ち込んだのは、麻酔弾である。
大佐が寝たのを確認すると、撃ち込んだ人物。
霞部隊、第一陸戦部隊の隊長は
「拘束し、発信器や自爆装置がないか確認し次第、本部に連行し、尋問する……対価を払わせてやる」
と低い声音で告げた。
これが、今回のクーデター事件終結の一打となった。
仮にもクーデター側の総本部だった拠点が陥落し、指揮官だった大佐も捕まった。
これにより、クーデター側の指揮系統は寸断されてしまい、加担していた部隊も次々と壊滅か無力化された。
こうして、第六師団が引き起こしたクーデター。
530事件は終幕した。
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