千州島と初音島の中間辺りの海域にて、撃墜された飛行機から、ドイツ艦娘達は重傷の飛行機の操縦士を担ぎ、微速ながら初音島を目指していた。
「不味いなぁ……艤装の機関部が損傷したから、速度が上がり難い……」
「急がないと、操縦士さんを助けられないのに……」
操縦士を担いだプリンツ・オイゲンを中心にして、Z1、Z3、ビスマルク・グラーフ・ツェッペリンが航行していた。
しかし、そのプリンツ・オイゲンの艤装の機関部が撃墜された際に損傷してしまい、速度が微速から上がらなかい。
「……不味いわ、対空レーダーが敵機を捕捉……190の方向からかなりの数よ……!」
「迎撃機を上げる! 何とかして、時間を稼ぐ!」
ビスマルクの言葉を聞いたグラーフ・ツェッペリンは、戦闘機を発艦させ、ビスマルクが言った方向に向かわせた。
すると、プリンツ・オイゲンが担いでいた操縦士が
「……自分は……捨てていって……ください……足手まといに……なりたくは……」
「味方は見捨てません! 絶対に!」
操縦士の言葉を、プリンツ・オイゲンは即座に否定した。担いでる操縦士は被弾する機体を必死に操縦し、なんとか不時着させた腕を持っていた。
今や、人材はあらゆる面で深刻に不足している。
助けられるならば、助けたい。とプリンツ・オイゲンは考えていた。
「……不味いな……迎撃機が、突破される……!」
「レーベ、マックス! 対空砲撃用意!」
『了解!!』
ビスマルクの指示を聞いて、ドイツ駆逐艦娘の二人は主砲と機銃の準備を始めた。
しかし、彼女達は実戦経験はまだ少ない。
欧州は時獄門と呼ばれたドーバー基地、そこでドーバー海峡を通ろうとした深海艦隊を一方的に砲撃した事はあるが、正面切っての戦闘は無かった。
緊張から、全員の体が固くなっていた時
『……こちら……鎮守府の……』
とノイズ混じりで、通信が聞こえた。
「鎮守府!?」
「こちらドイツ戦艦娘のビスマルク! 応答せよ!」
藁にもすがる思いで、ビスマルクは右耳に手を当てた。切れないで、と強く願いながら。
『……位置を確認した。数分間持ち堪えろ。そちらに急行している』
「了解!!」
希望が繋がった、それだけで戦意が込み上げてくる。
その時、まだ遠いが敵機を視認した。ビスマルクは、主砲を準備。
「方位190、仰角よし……
轟音と共に、大口径の砲弾が放たれた。
とはいえ、彼女達の艤装に装填されている砲弾は少ない。これは、飛行機に乗る都合上、少しでも軽くする為に燃料の代わりに砲弾を減らしていたのだ。
「後数回が限度ね……撃てぇ!!」
ビスマルクは小さく呟きながら、主砲による対空砲撃を敢行。遥か上空で爆発が起きる度に、敵機は減っていく。
だがそれでも、無数の敵機が接近してくる。
「ごめんなさい、主砲は弾切れよ!」
滔々、ビスマルクの主砲の弾が切れて、機銃を動かし始めた。そこに、Z1とZ3の二人が前に出て
「ここからは、ボク達が!」
「数を減らすわ!」
そう言って、手に持っていた主砲を撃ち始めた。
しかし、駆逐艦娘の二人も砲弾は少ないのは変わらない。
三人の主砲の弾が切れた時、敵機の数は砲撃開始前に比べて半分位に減っている。
敵機は上空と海面ギリギリに別れ、攻撃軌道に入った。
グラーフ・ツェッペリンも機銃を準備し、ビスマルク達と一緒にプリンツ・オイゲンの周囲に展開した。
だが、プリンツ・オイゲンの前に居たビスマルクが振り向き
「347から、一機高速で接近中!?」
と驚いていた。最初は敵かと思ったが、見えたのは大型機。全員が見たのは、事前にドイツ軍で見せてもらった資料に記載されていた弐式大艇だった。
「まさか……!?」
プリンツ・オイゲンが呟いた瞬間、海面ギリギリまで高度を下げた弐式大艇から次々と艦娘が着水。素早くドイツ艦娘達の周囲に展開した。
そして、旗艦の長門は敵機を睨み付け
「対空砲撃、開始!!」
と号令すると主砲を放ち、それに呼応して艦隊は対空砲撃を開始。あっという間に、上空と海面ギリギリに展開していた敵機群を殲滅した。
敵機を殲滅したのを確認した長門は、ドイツ艦娘達に振り向き
「間に合ったようで、何よりだ。私たちは第一初音島鎮守府の艦隊だ。
と問い掛けた。
「ええ、その通りよ」
「私達が乗ってた飛行機が、深海艦隊に撃墜されてしまってな」
ビスマルクとグラーフ・ツェッペリンが説明していると、長門の後ろから陸奥が前に出て
「怪我人ね? こちらで治療するわ」
とプリンツ・オイゲンから、操縦士を引き継いだ。その時になり、旋回していた弐式大艇が着水。側面のハッチを開けた。
「とりあえず、今は離脱を優先する。そちらは弐式大艇に」
と長門は、ドイツ艦娘達に促した。
今は、彼女達の危険域離脱が最優先目標だ。
「我々は、彼女達が離脱するまで敵を引き付ける」
どうやら長門は、敵の誘引を引き受けるつもりらしい。勿論だが、長門も犠牲になるつもりは微塵もない。敵を誘引した後、離脱する気だ。
「先ほどの攻撃だと、空母級は確実だな……赤城、加賀」
「分かってます」
「攻撃隊を出します」
長門の意図を察して、赤城と加賀の二人は次々と艦載機を上げた。
第一初音島鎮守府連合艦隊による深海艦隊への、反撃が始まった。
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