戦況マップを見ていた祐輔は、少し考えてから右耳に小型のヘッドセットを装着し
「唯依、聞こえる?」
と唯依をコールした。
『どうした?』
「150方角の敵艦隊の前線指揮を、唯依に一任します。八神提督の艦隊が援護に向かってきてるから、八神提督の艦隊が合流し次第、八神提督と協力して」
『了解した。任せろ』
短くやり取りを終えると、祐輔は通信士官に
「千州島に繋げられますか?」
「やってみます、少々お待ちください」
通信士官が機器の操作を始め、祐輔は戦況マップを見た。戦況マップには、長門達が装甲空母姫率いる艦隊に向かっているのが表示されている。
「……信じてますよ、皆さん……」
その頃、最前線。
「レーダーが敵艦隊を捕捉した! 艦載機を出せ!」
『了解!』
長門の指揮に従い、空母艦娘達は次々と艦載機を発艦開始。それに反応したからか、装甲空母姫からも夥しい数の艦載機が発艦。両艦隊の艦載機群が、空中で激突した。
それを見ながら、長門は
「神通は駆逐艦達を率いて突撃! 奴らを撹乱しろ!」
『了解しました! 突撃します!』
長門の指示を受けて、神通は時雨、夕立、綾波、敷波を率いて突撃を開始した。そして長門は
「12時の方向、距離8000! 主砲一斉射! 撃てぇ!!」
と主砲を一斉射した。それに合わせて、陸奥と山城、扶桑も砲撃開始。空を大口径砲弾が走り、深海艦隊に殺到する。
すると
『長門、遠近交差! ただし、2度右に逸れた! 山城、3度上げ! 扶桑、4度左に逸れた! 陸奥、3度下げ!』
と通信が入った。
それは、扶桑と山城が上げた瑞雲からの修正要請たまった。全員は言われた数値から逆算して、砲の角度を修正。
「各艦、各個に自由砲撃開始! 撃てぇ!!」
そして、祐輔艦隊は本格砲撃を開始。
まだ目視は難しい距離だが、向こうからは黒煙が見える。恐らく直撃を受けた敵艦が居るのだろう。
そして勿論だが、敵も無抵抗ではない。
『敵戦艦から、砲撃確認!』
その通信の直後、長門の間近で水柱が数本上がった。
『長門!』
「私は無事だ! 構わず砲撃続行!!」
陸奥が心配してくるが、長門は一喝した。
(この威力……フラグシップ級か!)
長門は着弾時の水柱の大きさから、相手の戦艦級はフラグシップ級だと推測。
「敵戦艦はフラグシップ級と判断する! 総員、決して足を止めるな! 直撃を受けたら、ひとたまりもないぞ!」
『了解!』
長門の指示の直後、祐輔艦隊は一斉に増速と散兵戦法を始めた。
散兵戦法
これは要するに、普段の一定の距離を取りながらの陣形を維持した戦法ではなく、全員がバラバラの距離を取り、各個に攻擊する戦法になる。
こうする事により、敵の濃密な砲撃による面制圧から生存率と回避率を上げる事が出来るようになる。
とはいえ、完全に独立しているという訳でもない。
長門の指示を受けて、重巡洋艦娘の摩耶が戦闘機隊の迎撃を越えて侵入してきた敵機を、濃密な対空弾幕であっという間に蜂の巣にした。
そして摩耶は、一気に蛇行して飛来してきていた敵の砲弾を回避。長門のハンドサインを見て頷き、前に出た。
『こちら神通! 装甲空母姫を確認! その護衛に、戦艦タ級フラグシップ! ポイントは、SE57!』
「了解した! 砲撃する!」
神通からの通信を受けて、長門は主砲の角度を調整し、撃った。
その数十秒後
『こちら時雨! 長門の砲弾は、タ級の左右近くに着弾! 修正の必要無し! 本格砲撃を!』
「了解した!」
今度は時雨からの通信を聞いて、長門は効力砲撃を開始した。各砲の連続交互砲撃により、次々と砲弾がタ級に放たれる。
しかし戦闘というのは時に、予想もつかない事が起きる。
『ソナーに感アリ! 敵潜水艦、2時の方向に確認! ……雷撃来ます!』
「散開、回避!!」
まだタ級に撃ちたかった長門だが、急いで回避を指示し、自身も回避軌道を取った。
扇状に迫っていた十数本の魚雷を、祐輔艦隊は速度の緩急や、不規則な航行で次々と回避していく。
だが
『きゃあ!?』
『陸奥が被雷!』
「陸奥!?」
陸奥がダメージを受けた。
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