その日祐輔は、久しぶりに体調を崩して寝込んでいた。
「風邪だね……ここ最近、色んな試験運用とかで忙しかったからだと思うよ? 少なくとも、熱が完全に引くまで安静に」
そう告げたのは、祐輔を診察した百合である。
百合はバインダーの診断書に色々と書いてから、後ろに居た羽黒が背負っていた大型の薬箱から幾つかの薬を取り出して
「この三種類の薬を、一日三回。朝、昼、晩の食後に飲んでおいてください。もし他に症状が出たら、直ぐに私達に連絡を……お大事に」
説明を終えると、羽黒と一緒に祐輔の部屋から退室した。それを見送り
「だってさ、祐輔くん? 確かに最近、凄く忙しそうだったよね?」
と明日奈は、祐輔の額に濡れたタオルを乗せた。
「データ収集を、結構やってましたね……ゲホゲホ……」
「頑張ってる祐輔くんはカッコイイけど、頑張り過ぎも駄目だよ?」
明日奈は祐輔を嗜めながら、百合が出した薬を確認していた。すると祐輔は
「僕より、明佑は……ゴホゴホ……」
「あの子なら、雷ちゃんと浦風ちゃんにお願いしたよ」
並み居る艦娘達の中でも、特に面倒見が良い二人に預けたのは大正解だろう。その二人と鳳翔、電、霞がよく明日奈の手伝いで明佑の面倒を見てくれる。
「霞ちゃんには、祐輔くん用の食べ物と飲み物を頼んだから、もう少ししたら持ってきてくれると思うよ?」
「すいません、お世話になります……」
「少しの間、ゆっくり休んでね?」
明日奈はそう言いながら、祐輔の頭を優しく撫でた。
その後祐輔は、霞が運んできた小粥食べて薬を飲んで寝た。
次に目覚めたのは、窓から見えた陽の高さからお昼頃だった。そして隣には、音姫の姿があった。
「あれ……音姫さん……?」
「あ、起こしちゃった? 風邪って聞いたから、少し様子を見に来たの。大丈夫?」
祐輔の呟きが聞こえたのか、音姫は絞っていたタオルを祐輔の額に乗せながら問い掛けてきた。
ふと気付けば、枕のところに氷枕があった。
「あ、それは明石さんに頼まれてもってきたの。後で夕雲ちゃんと長波ちゃんがお昼を持ってくるって」
音姫は説明しながら、今しがた鳴った体温計を祐輔の脇から取り出して確認した。
「38、5……まだ熱いね。ゆっくり休んでね」
「すいません、音姫さん……」
音姫に頭を撫でられた祐輔は、過去に朝倉家と芳野家で過ごしていた時期を思い出した。
あの時期は死に場所を求めていて、あまり音姫や由夢を気にしていなかった。
「祐輔君は、少し頑張り過ぎだよ? 私達も頼ってね? 艦娘用の装備なら、私達の艦隊でも試験運用出来るから」
「え……?」
「つい先日、技術研究廠から私とアリア大佐の艦隊も試験運用艦隊に指定されたの。だから、こっちに試験装備を回してくれれば、試験運用出来るの」
これは、本当の事だった。
通知が遅れている為にまだ祐輔は知らなかったが、音姫とアリアの艦隊も技術研究廠が指定した為に試験装備の運用が可能となった。
「昔はあまり出来なかったけど、祐輔君の手助け。させてね?」
「……ありがとうございます……音姫さん……」
祐輔の言葉に、音姫は満足そうに頷いたのだった。
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