次に祐輔が起きたのは、夕方辺りだった。
気付けば隣に、唯依の姿があった。
「あれ……唯依……?」
「ああ、起こしたか……大丈夫か?」
祐輔が起きた事に気付いた唯依は、祐輔の頭の下の氷嚢を交換した。
「ありがとう……唯依……」
「気にするな。明日奈ならも頼まれてるからな」
唯依はそう言って、祐輔の脇から体温計を取り
「38、4度か……中々高いな」
と確認した。
「まあ、最近はかなり忙しそうだったからな。疲れからだろうな……たまにはゆっくり休め」
唯依は嗜めるようにそう言って、使った道具類を脇に抱えた。そして立ち上がり
「戦術機用試作兵器の試験ならば、ホワイトファング隊も出来る……頼ってくれ」
とだけ言って、部屋から出ていった。
「唯依らしいや……」
笑みをこぼしながら、祐輔は小さく呟いた。
その唯依と入れ替わりで、明日奈がさくらと一緒に入ってきた。
「あ、さくらさん……」
「明日奈ちゃんから連絡貰って、お見舞いに来たよ。大丈夫?」
さくらはそう言いながら、祐輔の隣に座った。
「すいません……さくらさん、実験で忙しいでしょうに……」
「実験なら、今は小康状態だからね。気にしないでいいよ」
祐輔の言葉に返しながら、さくらは祐輔の頭を撫でた。
そこに、明日奈が
「お義母さん、来てくださりありがとうございます」
と軽く頭を下げた。
「気にしないでいいよ、明日奈ちゃん。祐輔くん、中々自分からは頼ろうとしないからね」
「それは、提督になってから?」
「そうだね……軍人になって初音島に帰ってきてからだね……片手で数える程度しか頼られてないね」
明日奈からの問い掛けに、さくらは少し思い出しながら答えた。
そしてさくらは、寝ている祐輔を見て
「だから、体調崩した時位は普通に頼って良いと思うよ?」
と微笑んだ。短期間だが母親代わりとして、祐輔の面倒を見ていたからだろう。その笑みには、大人としての貫禄が感じられた。
「あ、これお兄ちゃんからね」
さくらはそう言って、脇に置いていた紙袋を明日奈に手渡した。
中を見た明日奈は
「あ、リンゴ……」
「知り合いのリンゴ農家さんから頂いたのを、お裾分けだって。丁度良いから、祐輔くんに食べさせたら?」
「はい、そうします」
さくらの言葉に頷いた明日奈は、キッチンの方に向かった。
今や贅沢品の一つになった果物。
買えるのは富裕層位の値段になったが、さくらの兄で音姫や由夢の祖父の純一のように個人的繋がりがあるなら、辛うじて入手可能な代物だ。
「さてと……巌谷くんから、個人的に君宛にだよ」
「巌谷准将から……?」
「うん。正確には、技研の全員から代表して、みたいだけど」
さくらはそう言って、もう一つの紙袋を祐輔に差し出した。既に見えているが、花束だ。
受け取った祐輔だったが、花束の下にUSBメモリを見つけた。
「技研で作ってる新型の補給専用機の設計データだって……見たら感想を言ってほしい。って、言ってたよ。あ、勿論体調が治ってからにするように」
さくらの言葉を聞きながら、祐輔はUSBメモリーを紙袋から取り出して、ポケットにしまった。
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