祐輔が風邪を引いて、二日目。
「37、8℃……昨日よりかは下がったけど、まだ高いね」
そう言ったのは、確認に来た百合だった。
百合は体温計を仕舞い
「確認だけど、渡した薬はちゃんと飲んでる?」
「うん……飲んでるよ」
祐輔が言うと、百合の補佐役の妖精が薬の入った紙袋を台座の上に置いた。
「確かに……まあ、祐輔は几帳面だから大丈夫かな……あ、ちゃんと最後まで飲むように」
「うん、分かってるよ。姉さん……けほ」
祐輔に注意した百合は、カルテに記入して
「まだゆっくり休む事。無理は厳禁だからね」
と祐輔の額を小突いてから、部屋を出た。
祐輔は額を軽く触り
「……懐かしかったな、今の……」
百合が額を軽く小突くのは、何かを言い聞かせる時にやる癖のようなものだった。
なお対象は、祐輔だけでなく、よく忘れ物をした父親もだった。
祐輔からしたら、約十年振りだった。
そして祐輔は、明日奈が作ったおかゆを口にして、薬を飲んだ。
その後寝ていたら、ふと気配を感じて起きると、雷の姿があった。
「あれ……雷ちゃん……」
「あ、起こしちゃったかしら」
祐輔の声に反応した雷が振り向くと、その手には濡れタオルがあった。
「体を拭くわよ。汗で気持ち悪いでしょう?」
「……ありがとう……雷ちゃん」
祐輔はゆっくりと起き上がり、何とか服を脱いだ。
すると雷は、慣れた手付きで祐輔の体を拭いていく。
「孤児院での経験が活きるわね」
雷は楽しそうにしながら、祐輔の体を拭く。
面倒見良い雷だから、楽しいのだろう。
「それに、少し前に暁が体調崩したから、予行演習にもなったわ!」
「あははは……」
雷の言葉に、祐輔は乾いた笑い声を出すしかなかった。因みに、暁が体調を崩した原因は、お腹を出して寝てしまい、お腹を壊して寝込んだ。
その世話を、雷がしたのだ。
「だけどね、司令官。もっと私達を頼ってくれていいのよ? 努力家だし頑張り屋さんなのは良いと思うけど、抱え込み過ぎるのは良くないわ!」
祐輔の上半身を拭きながら、雷は祐輔に駄目出しする。流石は、駆逐艦寮の寮母なだけはある。
「暁達も、試験兵装の運用してみたいらしいわよ? まあ、暁は無くしそうなのは心配だけど」
雷の言葉に、祐輔は苦笑いを浮かべた。
実は過去に、暁は一回近接戦闘用のナイフを紛失した事がある。
その時雷は遠征で離れていたから、その事を知らない。
「それにしても、司令官って細身だけど筋肉凄いわね……惚れ惚れするわ」
「まあ、衛士ですからね」
衛士は体力、筋力を必要する為、祐輔は日課としてランニングと筋トレを欠かさない。
「はい、背中と前は拭き終わったわ! 流石に可哀想だから、下は勘弁しておくわね」
「あははは……」
雷の優しさに、祐輔は乾いた笑い声が出た。
「私はこれを片付けてくるから、司令官は水分補給しなさい。水筒は麦茶が入ってて、ボトルはハチミツレモンになってるわ」
雷は桶とタオルを持ちながら、祐輔のベッド横の棚を指差した。そこには、大きな水筒と500サイズのペットボトルが置いてあった。
喉が乾いていた祐輔は、ペットボトルの方を一気に飲み干した。
喉もだが、じんわりと体に染み渡る感覚を、祐輔は感じた。
そうして、片付けが終わった雷が戻ってきて
「それじゃあ、私は駆逐艦寮に戻るわ。多分、誰か問題起こしてるかもしれないからね」
と言って、部屋から去ったのだった。
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