祐輔が風邪をひいて、三日目の朝
「36.4度……うん、平熱だね。後は咳だから、咳止めは最後まで飲んでね。解熱剤はこっちで回収しておくよ。ただし、病み上がりだから無理はしないように。戦術機での出撃は許可出来ません」
「うん。ありがとう、姉さん……」
百合の言葉に頷き、祐輔は起き上がった。久しぶりに起きたからか、体の違和感が凄まじいが、休んでばかりはいられない。
「2日も休んだから、書類貯まってそうだ……」
祐輔は着替えながら、自身の机に大量の書類がまるで山のように積み上がっているのを予想して気落ちしていた。
そうして病み上がりの体を労りながら、祐輔は執務室に向かった。
入ると
「む……治ったのか、祐輔」
「あれ、唯依……書類、やってくれてたの?」
唯依が祐輔の机に座り、書類を捌いていた。
「ああ。私とアリア提督である程度は片付けておいた。とは言え、私達では階級的に難しいのは残ってしまっているが」
「それでも助かったよ、ありがとう」
唯依は最後の一枚を終わらせると、席から立ち上がって、終わらせた書類を総務室行きと書かれた台に乗せた。
そして、祐輔の方に向き直り
「今日は私が補佐する。無理はしないようにな」
と忠告した。
「姉さんにも忠告されたから、無理するつもりは無いよ」
祐輔はそう言って、席に座った。
「さて、始めるかな」
そうして、書類を始めた。
そして、一枚を見た時
「唯依、大隊拡充案が技術研究廠から来てるよ」
と祐輔は、唯依に声を掛けた。
「……なに?」
「詳細は、これ」
古鷹と一緒に書類を捌いていた唯依は、祐輔から一枚の書類を受け取り、読み始めた。
因みに要約すれば、ようやく宮内省から許可が降りたから、ホワイトファング隊を大隊にします、という事である。
実は唯依が少佐になったあたりから、巌谷准将は大隊拡充案を宮内省に提案していたが、一部の者が嫌がらせを含めて握りつぶしていたのだ。
しかし巌谷は諦めず申請し続けていた。その間に、宮内省である事件が起きた。
悠陽と崇継による大幅な人員刷新である。
旧い慣習に従うだけの人員を左遷し、新しい人員を配置。これにより、巌谷が出した大隊拡充案申請も受理されたのだ。
「……まあ、大隊で出来る試験もあるか……私は受け入れる方向で行くが、祐輔はどうだ?」
「僕も良いと思うよ? ハンガーの拡大が必要だけど、今の内に拡大工事を申請しておこうかな」
祐輔は唯依に返答しながら、工事に必要な書類を書き始めた。そして唯依も、大隊拡充案にサインした。
唯依としたら、一刻も早く強い新型機や新型兵装を最前線に送りたいし、祐輔からしても戦力の拡充は有難い話だった。
「しかし、大隊か……私に運用出来るかどうか……」
「何時も通りにやれば、唯依なら大丈夫だと思うよ。僕は」
唯依が不安そうにしていたら、祐輔は唯依を励ます。すると、古鷹が
「私もそう思いますよ。中佐は何時も威厳を感じさせますから、何時も通りにやれば大丈夫ですよ」
と祐輔と同じように励ました。
「……分かった、頑張ってみよう」
唯依はそう言いながら、拡充案にサインした。
そして約一ヶ月後、新しく戦術機部隊が初音島鎮守府に来る。
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