※この作品はR-18です。

艦隊これくしょん・絆の旋律   作:京勇樹

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今回の武の設定に関しましては、ある作者様からキチンと許可を得ています


予想外の介入者

「はやてさん……これ、査問って言うよりも……」

 

「軍法裁判やね……」

 

「何を無駄口を叩いてるかぁ!!」

 

二人が小声で喋っていると、小太りの男将官が怒鳴った

今二人が居るのは、大本営の円形会議室

その真ん中にある被疑者台だった

そしてそんな二人の回りでは、百人近い軍人達が椅子に座って、二人を見下していた

そして一番上の席に座っているのは、中田晃三大将だった

そして二人の手首は、ロープで縛られている

その体は、査問ではなく完全に軍法裁判だった

しかも、重罪レベルのだ

 

「いい加減に、認めてくれんかね? 君たちの言う大規模侵攻など無かった……従って、この戦果は偽りでした……と」

 

と言ったのは、二人の居る台の回りを歩いていた痩せこけた佐官だった

その佐官の手には、二人が大本営に報告した書類が握られている

佐官は用意されていた机に書類を放ると、二人を見て

 

「いいですか? 我々の方では、貴方方が言うような深海棲艦。しかも、姫級二体を含めた大規模侵攻など、確認していないのですよ。もし真実だったとしても、どうして救援信号を発信しなかったのかな?」

 

と問い掛けた

すると、祐輔が

 

「ですから、何度も申し上げたように、それらは全て真実です。それに、救援信号は確かに発信しました」

 

と語気を強めて言った

それに続いて、はやてが

 

「それを受信したから、私は艦隊と共に急行したんです」

 

と言った

実はこのやり取り、既に小一時間程繰り返されているのだ

勿論、話はずっと平行線

大本営側は、一向に二人を解放しようとしなかった

すると、中田大将の隣に座っていた太った将官が

 

「貴様ら、いい加減にしろ! 報告通りならば、こちらのレーダーや通信手が気づかない訳がないだろうが!!」

 

と怒鳴った

すると、祐輔が

 

「それは、そちらの観測員や通信手が無能なだけではないかと」

 

「なんだと、貴様!? 若造の青二才の分際で!!」

 

祐輔の言葉を聞いて、一人の佐官が怒り心頭と言った表情で立ち上がった

それに続くように、別の佐官が立ち上がり

 

「蒼き風神だかなんだか知らんが、調子に乗るな!!」

 

と怒鳴った

蒼き風神というのは、祐輔に与えられた二つ名である

この二つ名は、祐輔が単独で姫級の撃破という偉業を成し遂げた為に与えられた二つ名で、その二つ名が与えられたことで、帝国軍では珍しいパーソナルカラーが許されているのだ

今帝国軍で、パーソナルカラー

又は、パーソナルマークを許されているのは、ほんの数人だけである

祐輔は、その一人だ

 

「まあまあ、彼は戦災孤児ということです。キチンと躾られていないのでしょう」

 

「養母となった芳野さくら博士の器が、たかが知れますな」

 

と二人の佐官が、さくらを馬鹿にした

すると

 

「貴官らは、それでも軍人か!? 守るべき民を卑下し、見下すなど!!」

 

と祐輔が声を張り上げた

その直後

 

「貴様は黙れ!!」

 

と一人の憲兵が、祐輔の側頭部を持っていた刀の鞘で打ち付けた

 

「榊原提督!?」

 

「大丈夫です……」

 

上半身が大きく揺れた祐輔を見て、はやてが声を上げた

祐輔の側頭部からは、血が流れている

どうやら、打撃によって皮膚が割けたらしい

 

「これ以上は、質疑も無駄だな」

 

と言ったのは、それまで無言を貫いていた中田大将だった

中田大将は立ち上がると、二人を見て

 

「これより、二人の処遇を申し渡す」

 

と言った

だがその時だった

部屋の四ヶ所にあるドアの一つが、乱暴に開かれた

それと同時に、三つの人影が入ってきた

二つは、特徴的な赤い軍服を着た人物だった

それは、帝国近衛所属を示していた

しかも、五摂家に連なることを示す赤

片方は、端正な顔立ちの男性

年齢的には、祐輔と同年代位だろう

しかしその階級は、少佐を指し示している

そしてもう一人は、長い緑色の髪に切れ目が特徴の女性だった

年齢は、二十代だろう

階級は、大尉を指し示している

その二人は、軍人ならば大抵が知っている軍人達だった

 

「赤の雷神に煌武院の懐刀……風守武少佐に月詠真那大尉!?」

 

それは、誰が言ったのか分からない

だが二人は、それぞれ左右に別れて

 

「どうぞ」

 

「お入りください、殿下」

 

と奥に居た人物に、道を譲った

そして姿を見せたのは、天皇陛下から全権代行を認められた人物

 

「こ、煌武院悠陽殿下!?」

 

現政威大将軍

煌武院悠陽だった

予想外過ぎる人物の登場に、その場に居た全員に動揺が走った

しかし彼女は、それを気にせずに中田大将を見て

 

「帝国海軍、中田大将」

 

とその名を呼んだ

すると中田は、椅子から立ち上がり

 

「は、なんでありましょうか」

 

と不動の姿勢を取った

すると、悠陽は中田大将を見つめて

 

「此度の査問……というよりも、最早軍法裁判ですが……私は、此度のことは知らされていないのですが?」

 

と問い掛けた

実は、査問や軍法裁判をする場合、そのことを事前と事後に政威大将軍に知らせることが義務付けられている

どうやら、中田大将は知らせていなかったらしい

 

「殿下にお知らせするまでもないと判断し、お知らせしませんでした」

 

悠陽からの問い掛けに、中田大将はそう答えた

すると、悠陽は

 

「しかし、知らせることが義務とされています……それを遵守するのが、大将という立場では?」

 

と問い掛けた

その問い掛けに、中田大将は暫く間を置いてから

 

「その通りにございます」

 

と頭を下げた

それを聞いた悠陽は、凛とした雰囲気で

 

「では以降は、二度と此度のようなこと無きように」

 

と告げた

それを聞いた中田は

 

「はっ……承りました」

 

と深々と頭を下げたのだった

そして悠陽は、頭を上げた中田大将を見て

 

「それで、此度の軍法裁判の詳細を」

 

と問い掛けたのだった

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