「……ということにございます。これより、この二人に処遇を言い渡す処にございます」
中田大将は経緯を説明し終ると、はやてと治療を受けてる祐輔を見ながらそう言った(治療は、悠陽が命じた)
「八神中将は二階級降格。榊原大佐は、提督の任を解任し、銃殺刑に処そうかと……」
「その必要はありません」
中田大将が最後まで言う前に、悠陽が遮る形でそう言った
「殿下。お言葉ですが、その者達は自分の戦功欲しさに深海の大規模侵攻という、有りもしなかった戦いをでっち上げ、帝国海軍を混乱に陥れようとした大罪人。何かしらの処遇を決めなければ、付け上がります!」
中田大将がそう言うと、悠陽は
「いえ、大規模侵攻は確かに起きていました。月詠」
と祐輔の治療を終えて、戻ってきた真耶の名を呼んだ
「はっ」
呼ばれた真耶は、懐からUSBメモリースティックを取り出しながら、ある一人の仕官が座っている机に近寄り
「退け」
とその仕官に言った
「は、はい!」
言われた仕官は、まるで転がり落ちるようにその席から退いた
階級的には、その仕官の方が上の少佐である
しかしその仕官は、帝国海軍提督養成校を卒業したばかりの新人
それに対して、真耶は幾多の激戦を乗り越えてきた歴戦の近衛衛士
その身に纏う風格が、断然違うのだ
真耶は、そんな仕官を視界の端で見ながら
(これが、今の帝国海軍期待の新人か……嘆かわしい)
と落胆しつつ、USBメモリースティックをパソコンに接続
会議室に設けられているプロジェクターを起動させた
「今から見せるのは、数日前の初音島海域の衛星映像です」
と悠陽が言った
その直後、激しく砲火が交わされる激戦が映し出された
その映像に、言葉を失う会議室の面々
すると、一時映像が止まり
「皆さんから見て、右端に居るのが、この大規模侵攻の指揮を取っているだろう、姫級二体……それも、片方は二つ名……スカーヘッド」
悠陽がそう言うと、スカーヘッドのデータが表示された
「当初、それに対抗して戦闘を行っていたのは、初音島鎮守府の艦隊……総数36……それに対して、深海は150以上……これを大規模侵攻と言わずに、なんと言いますか」
語気は決して強くない
だが、悠陽のその身から溢れるオーラが、その場に居た殆どの将校達に反論を許さなかった
そこに
「しかし、この映像が事実として。何故榊原大佐は、救援信号を発信しなかったのですか」
と中田が問い掛けた
すると
「いやいや、救援信号は確かに発信されていましたよ」
と新たな声が聞こえた
そして、全員はその時になってようやく気付いた
悠陽達が入ってきたのとは別のドアが開いていて、そこにトレンチコートが特徴のスーツと帽子を被った男性が居た
「き、貴様は……!」
「鎧衣。遅かったですね」
「申し訳ありません、殿下。少々遅くなりました」
その男性の名前は、鎧衣左近
通称で帝都の怪人と呼ばれる、帝国情報省外務二課の課長を務める男性だった
「数日前、帝国軍技術研究厰にて、初音島鎮守府から発信された救援信号が受信されています」
鎧衣はそう言いながら、真耶に別のUSBメモリースティックを差し出した
受け取った真耶は、それを別のスロットに差し込んでからパソコンを操作した
そして映し出されたのは
《こちらは、初音島鎮守府。ただ今こちらは、姫級二体が率いる大規模侵攻を受けている。至急救援を請う》
という文面だった
「技術研究厰は、この大本営より初音島からは離れています……その技術研究厰で救援信号を受信していて、なぜ大本営で受信出来ていないのですか?」
悠陽のその問い掛けは、至って静かだった
しかし、中田大将を含めた将校達は返答することが出来なかった
すると、それまで黙っていた武が
「殿下の問い掛けに、答えろ!!」
と怒鳴り声を上げた
その直後だった
「このようなことに、殿下方にご足労させてしまい、申し訳ありません」
と新たな声が聞こえた
そして、開いていたドアから入ってきたのは、白い髪と髭が特徴の初老の男性
現帝国海軍司令長官、
歳は70を越えているが、背筋はしゃっきりしている
「防人長官……」
「話は、道中伺いました……此度は、我が部下達の下らぬ政争にお手を煩わせてしまいました……」
武仁はそう言うと、深々と頭を下げた
どうやら、大規模作戦からの帰還中に今回の仔細を聞いていたようだ
そして、改めて中田大将達を見回して
「答えよ、中田……此度の真偽……どういうことか……」
と静かに、しかし有無を言わさぬ口調で問い掛けた
それに中田大将が黙っていると、武仁は持っていた刀で床をドンッと叩いて
「答えよ、中田!!」
と老人とは思えぬ怒声を張り上げた
その怒声で、会議室の空気が震えた
中には、椅子から落ちている者すら居る
それを一瞥した武仁は
「貴様らが下らぬ保身や政争をしている間に、今なお最前線では艦娘や衛士、兵士達が命懸けで戦っている! 貴様らは彼等に、胸を張れるのか! 戦死した英霊達に、胸を張れるのかぁ!!」
と再び怒声を張り上げた
武仁は、深海大戦が勃発する以前より、海軍に身を置き続けていた
しかも、深海大戦が勃発した直後は、当時は数少なかった艦娘達と共に最前線にて指揮を取っていた現場叩き上げの男だった
そんな武仁からしたら、今大本営に居る者達は、安全な後方で偉そうにふんぞり返って、指揮を取り、自身の保身に励んでいる彼等など、見下すしかない者達だった
すると武仁は、悠陽の前で膝を突き
「此度の不始末……我が至らなさ故……如何様な処分も受ける所存です」
と言って、頭を下げた
すると悠陽は
「そなただけではありません……私にも、非はあります……我らの処遇は、陛下に委ねましょう……」
と静かに言った
そして、武仁に
「ただし、この者達の処遇は……防人長官に一任します」
と告げた
「はっ!」
それを聞いた武仁は立ち上がり、刀で床を二回叩いた
その直後、四つのドアから次々と憲兵達が雪崩れ込んできた
その憲兵の一人
国木田憲兵大佐に、武仁は
「分かっているな?」
と短く言った
それを聞いた国木田憲兵大佐は
「はっ」
と言葉少なく返答
そして
「連行せよ!」
と告げた
それを聞いて、雪崩れ込んできた憲兵達は将校達を次々と捕縛
会議室から連れ出した
そして、将校達が居なくなると悠陽は
「月詠、風守……二人を」
と言った
それを聞いた二人は、縛られていた祐輔とはやてを解放したのだった
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