偽装軍法裁判から、約半月後
祐輔は激務に追われていた
その理由が、着任した人材の書類処理だった
帰ってきてから数日後から、整備員を中心に大規模に着任し始めたのだ
それに合わせて、敷地内に下士官用の寮を作ることにした
その建設に使う資材、人員管理
それらの書類が、祐輔に来ていた
勿論だが、事務課の人員も来ている
そちらは、大淀が中心になって教育中である
そんなある日、事務課に書類を持っていた明日奈が執務室に戻り
「祐輔君、海鳴鎮守府から連絡が……」
と祐輔に連絡事項を教えようとした
だが祐輔が、椅子に座った状態で寝ていることに気付いた
しかも手には、万年筆を持っている
どうやら、執務中に寝てしまったらしい
「珍しいけど……仕方ないよね……最近、凄い忙しかったし……」
明日奈はそう言いながら、祐輔を起こそうと近寄った
その時、机の上にある物が有ることに気付いた
「これ……ドックタグ?」
それは、10や20では足りない大量のドックタグだった
「凄い数……」
手に持つと、その数で重かった
それらを見るだけで、祐輔がどれだけ死に立ち会ったのか分かる
ふとその時、不思議なドックタグを見つけた
普通ドックタグには、その人物の名前と所属番号、軍籍登録番号が刻まれている
しかしそのドックタグには名前は刻まれておらず、番号のみが刻まれていた
しかも、最初に00と刻まれたドックタグ
普通は、16桁の英数字がランダムで刻まれている
最初が同じというのは、本来は無い
「なに……このドックタグ……」
と明日奈が不思議そうにしていると
「あ……」
と祐輔の声が聞こえた
そうに慌てながらも、明日奈はドックタグを机の上に置いて
「起きた?」
と努めて、優しく声を掛けた
すると祐輔は、軽く頭を振って
「すいません……軽くねてしまったようですね……」
と謝罪した
すると明日奈は、コーヒー擬きをカップに注ぎながら
「仕方ないよ。最近は、凄い忙しかったしね」
と言って、カップを机に置いた
そのカップを持ち、祐輔は一口飲んでから
「明日奈さん、何か連絡事項が?」
と明日奈に問い掛けた
すると明日奈は
「うん。海鳴鎮守府から、この二人が移籍だって」
と書類が納められたファイルを、机の上に置いた
その中から祐輔は、書類を取りだし
「あらま……神代少尉だ」
と驚いた
それを聞いた明日奈が
「神代裕也少尉?」
とかつて同船して護衛してきた裕也を、思い出した
すると祐輔が
「うん……陸戦部隊の指揮官として着任するみたいだね……ん、この子は……」
ともう一枚の書類を見た
その時、祐輔の隣の机
明日奈の机の上にあった電話が鳴った
それを明日奈が掴み
「はい、初音島第一鎮守府です」
と言った
そして、少しすると
「祐輔君、その二人が来たって」
と言った
どうやら、もう来たらしい
「わかりました。来させてください」
祐輔がそう言うと、明日奈は受話器を耳に当てて
「通してください」
と言った
そして数分後、ドアがノックされた
「どうぞ!」
明日奈が入室を促すと、ドアが開いて
「失礼します」
と二人入ってきた
一人は、明日奈が以前護衛された裕也
もう一人が、オレンジ色の髪が特徴の少女だった
すると、裕也と少女が敬礼して
「本日付けで着任します、神代裕也少尉です」
「同じく、ティアナ・ランスター准尉です」
と名乗った
ティアナが名乗った時、祐輔は僅かに明日奈の目元が剣呑になったことに気付いた
だが、祐輔は
「久し振りだね、神代少尉。約一年振りかな?」
と裕也に問い掛けた
すると裕也は
「はっ……昨年の潜水艦隊対応戦の時以来です」
と答えた
そして、ティアナに眼を向けて
「ティアナ・ランスター准尉だったね。君の着任も歓迎します」
と言った
すると、ティアナは
「は、ありがとうございます」
と言って、頭を下げた
すると、祐輔は
「もしかして、君は……国連軍第五軌道降下兵団第三中隊隊長だった、ティーダ・ランスター大尉の……妹さん?」
と問い掛けた
すると、ティアナが驚いた様子で
「兄を……知ってるんですか?」
と祐輔に問い掛けた
すると、祐輔は
「うん……あの横浜で、一緒に戦った戦友だよ」
と懐かしむように言った
すると、ティアナが
「しかし、少将は19歳と……」
と言った
「よせ、ティアナ」
裕也が制止するが、祐輔は
「構わないよ……僕は、志願兵でね……もう六年になるね……1997年から、衛士になってたよ」
と言った
そして、先程明日奈が見ていたドックタグを懷から取り出して
「あの横浜……
と懐かしむように語りだした
「ティーダ大尉に会ったのは、姫級に接近してた時だったな……僕の部隊は、半壊……その救援に来てくれたのが、ティーダ大尉の部隊だった……確かに、戦力は大分消耗してた……けど、勝てる範囲だった……そこに、アメリカ軍が核を落とした……よく生きてたと思うよ……あんな爆心地近くでね……」
祐輔はそう言うと、そのドックタグの束を仕舞い
「ティアナ准尉……君、日本国籍を得たんだね? 国連軍からじゃなく、帝国海軍所属……アメリカ人なのに、訓練大変だったろうに」
とティアナに視線を向けた
今の帝国内は、アメリカ人に対する憎しみが非常に高い
訓練中は、イジメ等が起きていたことが伺える
しかし、彼女はそれを乗り越えて正規兵になった
確実に、支えた存在が居るだろう
すると祐輔は、取り出したドックタグの束を少し弄り
「あった……」
と言って、一つを取り外した
そして
「ティアナちゃん」
と言って、それを投げ渡した
それをティアナは、難なくキャッチ
そして見た
それは、熱で歪み読み難かったが確かに《ティーダ・ランスター》と刻まれていた
「これは……!」
「僕が回収し持ってたドックタグ……遅くなったけど、返すね」
ティアナが眼を見開くと、祐輔は優しくそう言った
それを聞いたティアナは、両手でドックタグを握り締めたのだった
そして、裕也達が居なくなって数分後
「祐輔君……あの作戦にも、参加してたんだ……」
と明日奈が、祐輔に問い掛けた
すると、祐輔は
「はい……本当に、我ながらよく生きてたと思いますよ……」
と呟いた
1999年八月某日に行われた、対深海悽艦大規模作戦
帝国軍、大東亜連合軍、国連軍、アメリカ軍の四軍が合同で展開した作戦だった
艦娘だけで、優に三千を越し投入された戦術機は優に600強
それだけの戦力が投入され、姫級の討伐が目指された
しかし、姫級の展開した深海艦隊の数に押されて、アメリカ軍以外の三軍は戦力を大幅に損耗
そこまでなら、まだアメリカ軍が戦力を投入すれば勝てると思われていた
その時通達されたのが、二発の新型爆弾
核爆弾の投下だった
それは、事前通告無しの投下だった
アメリカ軍の独断専行に、三軍は批難しながらも全軍に通達
だが、残存戦力の内約二割が核に巻き込まれて消えた
これに関して、アメリカ軍から未だに謝罪はされていない
特に被害が大きかったのが、帝国軍だった
展開した帝国陸・海・近衛軍は、大打撃を受けた
その後は、暫く戦力の建て直しを余儀なくされた程だ
その時、明日奈はようやく海軍上級士官学校に入学したばかりだった
「もう、何回目の全滅だったか……帝国陸軍第一遊撃機甲師団……陸軍第一方面軍第八機甲大隊第三中隊第八小隊……第六方面軍第九大隊第二中隊第四小隊……途中からは、覚えるのが億劫になる位でしたね……」
祐輔がそう言うと、明日奈が
「あの作戦……士官学校でも紛糾していたのを、覚えてる……」
と言った
やはり、記憶に新しいようだ
「アメリカ人のティアナちゃんでも許せなかったんです、明日奈さん……僕達が、許せるわけがないんです……」
祐輔の言葉を聞いて、明日奈は無言で頷いた
そして、祐輔と明日奈は執務を再開させたのだった
どういう話を書いてほしいですか
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