初音島鎮守府が大増員され始めて、約二週間後
祐輔艦隊の執務室の電話が、鳴り響いた
祐輔は受話器を取ると、耳に当てて
「はい、第一初音島鎮守府です」
と言った
そして、少しすると
「おや、はやてさん。どうしました?」
と言った
だが、少しすると祐輔の表情が険しくなり
「はい、わかりました!」
と言って、受話器を戻した
そして、僅かに腰を上げると
「ホット! スクランブル!!」
と言いながら、背後の壁にあった赤いボタンを強く叩いた
その直後、鎮守府全体に警報が鳴り響いた
それにより、ドタドタと足音がする
その間に祐輔は、再び受話器を取り
「緊急警報発令!! 金剛を旗艦として、高速艦隊編成! 出港後は、海鳴方面に向かい、民間船の保護に向かえ!! 戦術機は、ホワイトファング中隊とトライアド小隊、緊急出撃! 民間船の保護を最優先! 敵に空母が居る場合は、その艦載機の撃墜!」
と言った
すると、執務室に居た吹雪は一目散に執務室から飛び出した
どうやら、出撃するつもりらしい
すると、明日奈
「祐輔君!?」
と祐輔の名前を呼んだ
すると祐輔は
「どこの誰かは分かりませんが、一隻の民間船が護衛も付けずに海鳴港を出港! 深海艦隊の襲撃を受けている模様です! 僕達も行きます!」
と言った
それを聞いた明日奈は頷き、走り出した祐輔の後に続いた
場所は変わり、海上
そこでは、一隻のクルーザーが高速で海を走っていた
その時、そのクルーザーの真後ろで水柱が何本か出来た
その船内
「だから、護衛を着けようって言ったんだ!?」
と喚いたのは、操舵輪を握る一人の男性だった
その男性の後方では、一人の女性がマストにしがみついていた
その女性は
「近海は制海権を得ているんじゃ、なかったの!?」
と男性に問い掛けた
すると男性は
「そりゃ、人間相手だったら近づけないって意味だ! だけどな、相手は深海って化け物だぞ!? 意味が全く違う!!」
と怒鳴った
その時、一本の水柱が間近で上がり、クルーザーは大きく揺れた
「死んだら、あんたのせいだぞ!? 化けて出てやるからな!?」
男性はそう怒鳴りながら、必死に操舵し続けた
そこに
『こちら、第一初音島鎮守府所属、トライアド小隊! そこの民間船、そのまま進め!!』
と通信機から、声が聞こえた
それを聞いた男性は
「よっしゃあ! 騎兵隊の到着だぁ!!」
と声を上げた
その時、女性が
「初音島鎮守府……」
と呟いたが、真上をフライパスした戦術機の跳躍ユニットの轟音に掻き消された
それから十数分後、深海艦隊は全滅
祐輔艦隊と戦術機部隊は、無事に帰投した
そして祐輔と明日奈は、そのクルーザーに乗っていた人達から話しを聞くことにした
そして、操舵していた男性から話しを聞き終わり
「要するに、女性が護衛を着けずに出港することを決めたみたいですね……」
「だね……今回は、その女性に責任があるかなぁ」
祐輔の話を聞いて、明日奈はそう結論付けた
その時、ドアがノックされて
『失礼します。もうお一人をお連れしました』
と大淀の声が聞こえた
それを聞いた祐輔は
「どうぞ」
と促した
すると、ドアが開き
「どうぞ、お入りください」
と大淀が廊下の方に声を掛けた
すると、一人の女性が入ってきた
祐輔から見たその女性の第一印象は、理知的な女性だった
そんな女性がなぜ、今回の無謀なことをしたのか
それを聞こうと、口を開き掛けた
その時、隣に立っていた明日奈がその女性に歩み寄り、祐輔が制止する暇もなく右手を振り上げて、思いきり叩いた
「ぶっ!?」
普段から冷静な明日奈らしくない行動に、祐輔は思わず吹き出した
すると明日奈は
「何やったのか、分かってるの!? 母さん!!」
と怒鳴った
なんとその女性は、明日奈の母親
肉親だからこそ、明日奈は激情に駆られたようだ
そして京子は、まさか叩かれるとは思ってなかったらしい
呆然としていた
それをいいことに、明日奈は京子の襟首を掴み
「母さんの身勝手な行動で、どれだけの人達に迷惑掛けたのか、分かってる!? あの操舵をしてくれた男性や、出撃した祐輔君達、艦隊の子達は死ぬかもしれなかったんだよ!? それを分かってる!?」
と捲し立てながら、京子の体を思い切り揺らした
そこで、祐輔は我に返り
「明日奈さん、明日奈さん、落ち着いてください!」
と明日奈を背後から、羽交い締めにして引き離した
すると明日奈は
「離して、祐輔君! 今日という今日は、この頭でっかちに分からせるの!!」
と言いながら、暴れ続けた
それを祐輔は、渾身の力で引き離しながら
「大淀さん! その人に処置をしてあげてください! それと、お茶も!」
と大淀に指示を出しながら、明日奈を今居る応接室の隣
執務室まで引っ張っていった
そしてドアが閉まると、大淀は祐輔の指示通りに対応を開始したのだった
そして、数十分後
「お待たせしました」
と疲れた様子の祐輔が、明日奈を連れて戻った
そして、氷嚢を頬に当てている京子の前に座り
「先は、自分の部下が失礼しました」
と謝った
明日奈が京子を叩いたのは事実で、明日奈は祐輔の部下である
ならば、謝罪するのは道理だと祐輔は思ったのだ
すると、京子も軽く頭を下げた
そして祐輔は、ズレていた帽子を直し
「それでは今回、何故あのようなことをしたのか、お話し願います」
と言った
すると京子は
「明日奈に、軍を辞めさせるために来ました」
と言った
その直後、祐輔が座っている椅子の隣に立っていた明日奈が、体を僅かに前に倒した
その瞬間、祐輔が片手を上げて制止
それを見た明日奈は、歯をギリと鳴らしてから、ゆっくりと姿勢を直した
それを視界の端で確認し、祐輔は
「申し訳ありませんが、こちらとしては承諾出来ません。彼女は非常に優秀な軍人であり、何よりも、自分の大事な副官です」
と毅然とした態度で告げた
そして同時に、六年という年月によって鍛えられた圧が、祐輔から放たれた
実は、祐輔も怒っているのだ
「さて、話を戻します……今回の無謀な出港は、彼女を連れ戻しにきた……ということになります。間違いないですね?」
祐輔の問い掛けに、京子は頷いた
すると祐輔は
「なぜ、護衛を着けずに出港されたんですか?」
と問い掛けた
すると、京子は
「制海権を、獲得してると聞いたからよ」
と言った
それを聞いて、祐輔は
「確かに、制海権は獲得しています。ですが、今大戦では前大戦と意味が全く違います……ご存知で?」
と問い掛けた
すると京子は、短く
「いえ、知らなかったわ……」
と言った
すると祐輔は
「でしょうね……でなければ、無許可出港などしない筈ですから……」
と言った
深海悽艦との戦争が始まってから、あらゆる民間船は必ず近くの鎮守府に出港する旨を申請し、許諾を得ないといけなくなった
その理由は、明白
深海悽艦が、どこに現れるか分からないからだ
深海悽艦は、名前の通りに海中から姿を現す
つまり、今の地球の全海は深海悽艦の縄張り
その中に、民間船だけで出港させることなど、出来る訳がないのだ
だから、漁業船や物資を運ぶ府は、必ず鎮守府に連絡し、許可を得ると同時に護衛戦力を着けるのだ
初音島鎮守府も、漁業組合やタンカー船等が出港する時は、必ず艦娘を派遣させる
「ですが、知らなかったでは済まないんですよ、結城京子さん……貴女の迂闊な行動で、貴女だけではない。操舵士の男性の命を危険に曝したんですよ」
祐輔はそう言って、左手の人指し指で、机をトンと叩いた
「たまたま海鳴鎮守府の八神中将が、偵察機を飛ばし、見つからなかったら、船は確実に沈んでいた」
そう言って、また机をトンと叩く
少しずつだが、祐輔の語気に力が籠っていく
「先程、整備員から船のダメージ状況が記された書類が渡されましたが……はっきり言って、廃船です。エンジンは無理をさせたために、焼き付いてました。船底も、ひび割れによる浸水……運が良かったとしか、言えないんですよ」
偵察機が二人が乗っていた船を、見つけたから
はやてが直ぐに、祐輔に報せたから
祐輔が迅速に、緊急警報を鳴らして出撃させたから
そして何より、初音島が最前線で、緊急出撃に慣れていたから
これらが、重なったからに過ぎないのだ
そしてもはや、京子は発言する気力すら無かった
今になり、自分が無謀なことをしたと理解し、冷や汗が流れていた
「今回のことは正式に、結城家に抗議文を出させてもらいます……」
祐輔がそう言うと、京子は頷き
「今回のことは、私の無知が招いたこと……受け入れます」
と返した
それを聞いて、祐輔は立ち上がり
「では、後はお二人で話してください。どうやら、大事な話のようですし」
と言った
しかし、明日奈が
「提督も同席してください」
と言った
それを聞いて、祐輔は
「しかしですね……」
と躊躇いを見せた
しかし、明日奈は
「大丈夫です。同席を」
と繰り返した
それを聞いて、祐輔は
「わかりました」
と言って、着席した
そして、大淀に
「大淀さん、僕と中佐の分のお茶を。その後は、吹雪ちゃん達と一緒に書類をお願いします」
と言った
それを聞いた大淀は
「わかりました」
と一礼しながら、退室
数分後、二人分のお茶を持ってくると、応接室から執務室に向かったのだった
どういう話を書いてほしいですか
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