※この作品はR-18です。

艦隊これくしょん・絆の旋律   作:京勇樹

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婚約の話

「この際だから、はっきり言わせてもらうわ。母さん……」

 

と言ったのは、真剣な表情の明日奈だった

そして、京子が何か言う前に

 

「私は、須郷中佐と結婚したくはありません」

 

と言った

 

「明日奈!!」

 

京子はそう言った明日奈に、非難がましい視線を向けた

だが、明日奈は気にせず

 

「母さんは須郷中佐の学歴で選んだみたいだけど、人格が悪すぎる。人を見下す人を、好きにはなれないの」

 

と言った

それを、横で聞いていた祐輔は

 

(須郷中佐って、帝国軍技術研究厰電子部門第三班班長の須郷信之技術中佐?)

 

と古巣に居た人物を思い出した

須郷信之中佐

20代後半の男性で、技術中佐という破格の階級に就いた技術者だ

その技術力は、電子系に優れており、祐輔の左目にある物も含めて、軍に多数の貢献をしている

ならば、なせ中佐という階級で班長止まりなのか

本来、中佐という階級ならば一部門の最高責任者でもおかしくはない

だが、そうなっていないのは、人格に難アリと判断されたからだ

それは、祐輔の左目にある物

アナティリカル・システム

それの試験に、祐輔を含めて10人が参加

適合したのは、祐輔を含めてたった二人

残りの八名は、植物人間状態になってしまったのだ

しかも、その内の六名は貴重な衞士だった

その結果に、立ち会った将官達はざわめいた

しかし、当の須郷は

 

『まあ、予想通りか』

 

と平然と言ってのけたのである

それを聞いた、一部将官が須郷に詰め寄り

 

『このような結果になるのを、予想していたのか』

 

と問い掛けた

それに対して、須郷は平然と

 

『当たり前です。私は科学者ですよ? ある程度予想しなければ、科学者などしていません』

 

と言ってのけて、更にある実験をしようとしたのだ

それが、高負荷実験

それを適合した二人にやらせようとした

だがそれを、巌谷准将が中止させたのだ

その理由として挙げたのは

 

『平然と犠牲を強要させる実験を、続行させる訳にはいかない』

 

だった

更に言えば

 

『此度の試験で植物人間となったのは、何者にも代え難い貴重な人材だった……衞士だけでなく、整備士と通信士……彼等を育成するのに、莫大な血税を支払った。即ち、国民に負担を強いている。故に、これ以上犠牲を出させる訳にはいかない』

 

と言った

そして、須郷に

 

『君を中佐には据えるが、案にあった次代電子部門責任者選定から外す』

 

と告げた

それを聞いた須郷は

 

『何故ですか!?』

 

と巌谷に問い掛けた

それに対して、巌谷は

 

『分からない者に、説明する義理は無い』

 

と突っぱねた

その後、電子部門責任者には茅場昌彦技術大佐が就任

その補佐官には、桐ヶ谷和人技術少佐が選ばれたのだ

 

「明日奈! 私は、貴女のために!」

 

「私のためと言うなら! 婚約を破棄して! 学歴が良くても、私は須郷中佐と結婚するのは嫌なの!」

 

横で交わされる会話を聞きながら、祐輔は

 

(なんで明日奈さんは、僕に居るように言ったんだろ?)

 

と内心で首を傾げていた

祐輔からしたら、自分が居てもさして意味が無いように思えたからだ

そう思いながら、口論してる二人を傍目にお茶を口に運んだ

その直後

 

「私は、こちらの榊原少将と結婚させてもらいます!!」

 

と明日奈が、衝撃的なことを言った

この時、お茶を吹き出さなかった祐輔は賞賛に値するだろう

しかし、気管に入ったらしく、むせている

そんな祐輔を一瞥し、京子は

 

「彼のことは調べさせてもらったわ……結論を言うなら、彼は明日奈に相応しくないわ。確かに、彼の戦果は凄まじいのでしょう。帝国軍にしては珍しい二つ名とパーソナルカラーがそれを証明しています。でも、学歴は最低。最終学歴は、小学校卒業……その後は、軍に在籍……そんな男と結婚したって、明日奈は幸せにはなれないわ」

 

と言った

それを聞いた祐輔は、内心で

 

(確かに、最後は小学校卒業だなぁ……)

 

と思った

だが、京子の言葉に明日奈は

 

「学歴がなんだって言うのよ! 確かに、彼の最終学歴は小学校卒業かもしれないわ! けれど、彼は自分に出来ることを頑張っているわ! 鎮守府の運営、戦術機運用と試験データ収集! それらは、帝国に絶大な効果を上げるのは間違いないわ!」

 

と告げた

しかし、京子は

 

「学歴は大事よ。学歴が無ければ、通用しないことが多々あるわ」

 

と言った

それを聞いた明日奈は

 

「多々あるってだけでしょ!? 軍では、何よりも功績が評価されるわ!」

 

と反論

そして、京子を見て

 

「須郷中佐との婚約を破棄しないなら……私は、結城家との縁を切ります!」

 

と言った

 

「明日奈!?」

 

明日奈の言葉を聞いて、京子は驚愕した

しかし、明日奈は

 

「私は本気です」

 

と言って、一枚の紙を掲げた

それは、離縁状

つまり、明日奈は本気だと証明していた

そこに

 

「そこまでにしなさい、京子」

 

と一人の男性が入ってきた

 

「アナタ!?」

 

「お父さん!?」

 

その人物は、明日奈の父親にして京子の夫

結城彰三(ゆうきしょうぞう)だった

その人物を見て、祐輔が

 

「あ、もう約束の時間でしたか。すいません」

 

と頭を下げた

すると、彰三は

 

「いや、こちらが早く着きすぎただけだ……そうしたら、まさか京子が居るとはな」

 

と言って、京子の隣に腰を下ろした

そして、祐輔に視線を向けて

 

「……どうやら、京子が迷惑を掛けてしまったようだね」

 

と頭を下げた

 

「アナタ!?」

 

「京子……話は聞かせてもらった……無謀なことをしたものだ……」

 

京子が視線を向けると、彰三はそう言った

どうやら、京子がしたことを誰かから聞いたようだ

 

「まあ、御無事で何よりでしたよ。ただまあ、此度のことは正式に抗議文を送らせてもらいますが」

 

祐輔の言葉に、彰三は無言で頷いた

そして、明日奈を見て

 

「明日奈……浩一郎からも聞いたが、そんなに須郷君との結婚は嫌か?」

 

と問い掛けた

すると、明日奈は

 

「嫌です」

 

と断言した

それを聞いた彰三は、しばらく目を瞑り

 

「……分かった」

 

と頷いた

そして、明日奈を見て

 

「須郷君との婚約は、破棄する」

 

と言った

 

「お父さん!」

 

「アナタ!?」

 

明日奈は嬉しそうに声を上げ、京子は驚いた表情で彰三を見た

すると、彰三は

 

「明日奈が本気で嫌がっているんだ……だったら、本人の意思を尊重をするべきだろう……結城宗家には、私から話を通しておく」

 

と言った

そして、祐輔に視線を向けた

 

「相手は、そちらの榊原提督か」

 

と言った

すると、祐輔は

 

「僕も初めて聞きましたが、明日奈さんのような美人さんをお嫁さんに出来るというのは、非常に光栄ですよ」

 

と頭を掻きながら言った

更に続けて

 

「ただまあ、僕で役が十分に勤まるかが不安ですが、自分に出来ることは全てやるつもりです」

 

と言った

それを聞いた彰三は、しばらくじっと祐輔の目を見た

そして、頷き

 

「君ならば、大丈夫そうだ」

 

と言った

そして、少し間を置いて

 

「しかし……それを使っていて、大丈夫かね? 相当な負担の筈だよ?」

 

と祐輔に問い掛けた

その問い掛けの意味が分からず、明日奈と京子は首を傾げた

すると、祐輔は

 

「……よく気付きましたね?」

 

と驚いていた

すると、彰三は

 

「それの開発に、我が社も多少関わったからね……アナリティカル・システム……試験で八人を植物人間状態にした、ある意味で失敗作……」

 

と言った

それを聞いた明日奈は、驚いた表情で祐輔を見た

それに対して、祐輔は

 

「僕も彼も、片目を失っていましたからね。候補に挙がりました……」

 

と言った

そして、閉じた左瞼を撫でて

 

「ただ、須郷中佐の秘密主義には、困ったものです……おかげで、大事な部下が……仲間が……」

 

と声を震わせた

それを聞いた彰三は

 

「もしや君は、技術研究厰の……」

 

と問い掛けた

すると、明日奈が

 

「彼は、提督になる前は陸軍、帝国軍技術研究厰第一戦術機甲師団第一連隊第一大隊第三中隊の隊長だったの」

 

と教えた

本来は機密事項だが、明日奈は彰三ならば大丈夫だと判断したのだ

彼は、結城家が創設した複合企業、レクト社の現社長なのである

しかもレクトは、軍需産業にも参画している

機密のことは、理解していた

明日奈が言った所属を聞いて、彰三は目を細めて

 

「そのことは、済まなかった……優秀な衞士や軍人を、八人も植物人間状態にしてしまった」

 

と頭を下げた

どうやら、会社が開発に携わったから謝罪したようだ

すると祐輔は、首を振って

 

「責任ならば、須郷中佐が取りました……それに、彼等の志は、他の者達が継ぎました……大丈夫です」

 

と言った

だが彰三は、祐輔の目に悲しい光があることに気付いていた

 

(部下か、同僚が犠牲になったか……)

 

彰三はそう思った後、京子を見て

 

「京子、お前は別の部屋に居なさい。私は、彼と話が有るからね」

 

と言った

それを聞いた祐輔は

 

「では、こちらの者に別室に案内させましょう」

 

と言った

 

「大淀さん!」

 

祐輔が呼ぶと、執務室から大淀が入ってきて

 

「お呼びですか、提督」

 

と言ってきた

すると、祐輔は

 

「誰かに、京子さんを来賓室まで案内をさせてください。それと、彰三氏用に新しいお茶を」

 

と言った

それを聞いた大淀は

 

「早急に手配します」

 

と言って、退室したのだった

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