「……ふふ」
翌日、朝4時頃
明日奈は、裸身にタオルケットを巻き付けた状態で祐輔を見ていた
昨夜、明日奈は祐輔と身体を重ねた
初めてだったから、今も多少違和感を感じている
しかしそれ以上に、幸福感を感じていた
今明日奈は、間違いなく女として充足している
「……うん、やっぱり正解だった」
明日奈はそう言って、眠っている祐輔の髪をサラリと撫でた
執務中や出撃している祐輔は、年不相応な感覚がある
大人を感じさせる微笑みか、長年生き残ってきた軍人としての凄みを感じている
しかし今は、年相応の幼さを感じる
祐輔もその裸身にタオルケットを巻き付けて、身体を少し丸くして眠っている
その姿が愛しくて、明日奈は祐輔の髪をサラサラと撫でた
軍人としては、直ぐに起きないといけないかもしれない
だが、常に緊張感を持つ必要は無いと明日奈は思っている
流石に、一日中緊張していたら、疲れ果ててしまう
「ん……そろそろかな……」
明日奈は、部屋に備え付けられている時計を見て、そう言った
すると、祐輔の瞼が震えてから開いた
そして祐輔は、明日奈を視認すると
「おはようございます、明日奈さん……」
と微笑んだ
それを聞いた明日奈は
「うん。おはよう、祐輔君……」
と挨拶し、唇を重ねた
それから十数分後、二人は着なれたジャージに着替えて外に居た
これから、日課のランニングだ
二人が準備運動をしていると、唯依が現れて
「二人とも、おはよう」
と挨拶してきた
唯依に気づいた二人は、準備運動しながら挨拶
その後、軽く準備運動を終えた唯依と共にランニングを開始
こうして、騒がしい一日が始まった
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「だからよ! 派遣する艦娘の数を増やせつってんだよ
!! 頭悪い奴だな、ああ!?」
と啖呵を切っているのは、ガタイの良い若い男だった
その男は、初音島漁協組合から代表の名代で来たという男だった
男の言葉に、祐輔は
「ですから、数を増やせと言われても、具体的な数を言ってもらわないと……」
と苦笑を浮かべた
なおこの男、いきなり押し掛けてきた
確かに、元々漁協組合の代表との会談する予定はあった
しかしこの男は、その予定時間の一時間近く前にいきなり押し掛けて、受け付けの台を叩きながら
『ここの提督に会わせろ!』
と怒鳴り込んできた
一応漁協組合代表の名代と言ったから、それに応じた
しかし、祐輔の顔を見ていきなり
『あ? こんなガキが提督やってるのかよ?』
と悪態を吐いた
確かに、年齢的には男の方が上だろう
しかし、見た目で判断されたようだ
そして、会談が始まると先のように怒鳴るように
『そっちの艦娘の数を増やせ!』
と言ってきた
余りにも、礼儀がなってないにも程がある
「数は増やしても、金は増やすんじゃねえぞ。でないと、こっちは商売が出来やしねぇ」
男はそう言いながら、祐輔を睨んでいる
男が発してる威圧感を、祐輔は容易く受け流している
なお背後からは、凄まじい怒気が滲んできている
その主は、念のために護衛として就いた霧島である
怒らせたら危険な艦娘の一人に挙げられる
祐輔は、その霧島の怒気に
(頼むから、
と内心で心配していた
「てめぇら軍は、こっちの足下見てきやがるのは知ってるんだよ! 汚ぇことしやがって……そんなことしてる暇あるなら、もっとあの化け物共をどうにかしやがれ! この役立たずが!!」
と男が言った直後、霧島の怒気が一気に跳ね上がった
それに気付いた祐輔は、霧島を抑えようと口を開きかけた
その時ドアが突然開き、初老の男性が入ってきて
「このバカが!!」
と拳を、男の頭に振り下ろした
その威力は、響いた音と机に顔面を打ち付けた男の姿が物語っている
殴られた男は、狼狽えた様子で振り向き
「お、親父!?」
と驚いていた
その男性こそが、漁協組合代表である
確かに、少し面影がある
「何時まで経ってもお前の船が出ないから、もしやと思えば……!」
男性はそう言うと、男の襟首を掴んで持ち上げた
それを見た祐輔は
「ま、まあまあ。落ち着いてください」
と宥めた
すると代表は
「提督殿、今回は私のバカ息子が迷惑を掛けました」
と言って、深々と頭を下げた
すると、床に突き倒された男が
「親父! こんな野郎に頭を下げる必要なんざ!」
と言った
だが、そんな男の頭を再び代表は殴り
「お前はまだ、この鎮守府がどういう立ち位置か分からんのか!!」
と怒鳴った
「ここは、帝国の防衛の要衝だ! つまりは、最前線だ! その最前線で、深海悽艦と戦いながら私達のために主力たる艦娘達を派遣してくださってる! それだけで充分にありがたいのに、こちらの提督は規模が小さい私達のために料金を割り引いてくださってる! 他の鎮守府がある港では、私達の倍近く払っている組合すらある! それをお前はっ!!」
代表はそう言って、拳を振り上げた
すると、その腕を祐輔は掴み
「落ち着いてください。僕は気にしてませんから」
と宥めた
すると代表は、再び頭を下げて
「本当に、今回は私のバカ息子がご迷惑をお掛けしました。今回予定していた会談は中止を……」
と言ってきた
それを祐輔は
「いえ、その必要はありませんよ。今回の会談、そちらの男性が言っていた事も関係しているんです」
と言って、霧島を見た
すると霧島は、脇に抱えていたファイルを代表に差し出して
「実は、一部艦娘達からこのような陳情書が」
と言った
ファイルを受け取った代表は、拝見しますと言ってから書類を読み始めた
そして祐輔に顔を向けて
「つまり……漁港に、常に連合艦隊規模の艦娘が常駐する……ということですか?」
と首を傾げた
「はい。流石に、定期的に編成は変えさせてもらいます。しかしそれ以外は、基本的に近いうちに建設予定の詰め所に待機となります。一応、こちらが予定建設期間とそちらが支払う予定の派遣費用となります」
祐輔はそう言って、代表に二枚の書類を手渡した
代表は、その書類を一読すると
「わかりました。これに関しましては、組合に戻り次第他の者達と話させてもらいます……しかし」
と言葉を濁した
すると祐輔は
「どうしました?」
と首を傾げた
すると代表が
「こちらの書類には、建設費用が書かれていません。こちらも幾らかは……」
と言った
それを聞いた祐輔は
「いえ、今回のことはこちらの独断です。ですから、費用は全てこちらが持ちます」
と言った
それに納得いかないのか、代表は
「それでは、申し訳ないです。せめて、一割だけでも」
と食い下がってきた
それに対して、祐輔は
「こちらは何時も、そちらから海産物を融通してもらっています。今回は、それのお礼も兼ねています」
と言った
だが、それでも納得いかないらしく、代表は苦い表情を浮かべていた
すると祐輔は、指を立てて
「なれば、島民の皆さんにより美味しい海産物を回せるように頑張ってください。それでどうですか?」
と言った
それを聞いて、代表は少ししてから
「……わかりました。そちらのご厚意に、甘えさせてもらいます。そして、より良い海産物を捕るよう尽力します」
と言って、祐輔と握手したのだった
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