「祐輔君、上がったよ」
と言ったのは、夕食後に大浴場から戻ってきた明日奈だった
すると、窓枠に腰掛けていた祐輔が振り向き
「はい、おかえりなさい。明日奈さん」
と出迎えた
すると、明日奈は
「外見てたの?」
と髪を拭きながら、祐輔に問い掛けた
すると祐輔は
「はい……昔、あの滝で父さんが飛び込みしてたのを思い出しまして……」
と言いながら、窓から見える滝を見た
すると、それを聞いた明日奈が
「凄いお父さんだったんだね……」
と言った
すると祐輔は、苦笑しながら
「色々と豪快でした……網の中に鮫が居たら、飛び込んで銛で突いたりとか」
と語った
確かに、かなり豪快だろう
「御近所の人曰く、僕は見た目は父さん。性格は母さんだそうです」
「そうなんだ……」
明日奈はそう言うと、近くの椅子に座った
その後、しばらくの間静かな時が続いた
すると、不意に
「ねえ、祐輔君……」
と明日奈が、祐輔を呼んだ
呼ばれた祐輔は、視線を明日奈に向けた
すると明日奈は
「どうして、軍人になったの?」
と問い掛けた
「こう言ったらなんだけど……祐輔君は……」
「軍人に向いてない……教官にも、よく言われました」
明日奈の言葉を引き継ぐように、祐輔はそう言った
明日奈が視線を向けると、祐輔は思い出すように
「『貴様の性格は、優しすぎる』……教官には、よくそう言われて、軍人に向いてないと指摘されてました……」
と語って、夜空を見上げた
「実際、訓練で脱落しそうになる仲間を見捨てられなくて、所謂損な役回りが多かったですね……」
そう言うと祐輔は、ははと短く笑った
そして
「僕が軍人になった理由は……もう、僕みたいな戦災孤児を増やしたくないからです」
と言った
「今から約10年前に、僕の故郷は深海悽艦によって滅びました……」
当時は、今程鎮守府も多くなく、鎮守府同士の直接の繋がりも無かった
数は時間を掛けて増やすしかないが、繋がりに関しては即座に動いた
それまでは、何かしら緊急事態
例えば以前の襲撃のような事態は、一度大本営に連絡し、そこから大本営が最適か鎮守府や泊地、警備府に連絡が行き、応援が向かう
という形になっていた
しかしそれは、各方面統括将官が判断を誤ったりした場合に間に合わなくなることが多々あり、問題視されていた
そして大規模侵攻による被害が出て、当時の軍上層部は大規模な人事刷新が起きた
そうして長官になった武仁が最初に行ったのが、鎮守府同士の連絡網の構築だった
なおその時の武仁だが、本来は退役を控えた予備役として資源輸送隊の取りまとめ役だった
そんな武仁の下に、当時の政威大将軍
『今の海軍には、貴方のような勇猛果敢な知将が必要です。今一度、国民のために長官になっていただきたい』
と
それを、武仁は受諾した
流石に断れないのもあったが、大きな理由として、やはり前線に居る方が性に合っていたようだ
そして武仁は、万雷の拍手と共に迎えられた
閑話休題
「そんな思いをするのは、僕達の代で終わらせたいんです……だから僕は、軍に入ったんです……」
つまりは、不特定多数の誰かのため
それを聞いた明日奈は、祐輔の危うさを再認識した
利用されるだけされて、最後は悲惨な死
そうさせないためには
「ねえ、祐輔君」
「明日奈さん?」
明日奈は、祐輔に抱き付いた
それを不思議に思い、顔を明日奈に向けた
すると、明日奈は
「確かにその思いも大事だけど、一番大事なのは……身近な人と生きることだよ」
と囁くように言った
それを聞いた祐輔は、軽く目を見開いて
「そう、ですね……ありがとうございます、明日奈さん」
と言いながら、明日奈の手を握った
それから少しの間、二人は外を見ていた
すると、祐輔が不意に
「明日奈さん……外に行きませんか?」
と提案した
それを聞いた明日奈は
「外に?」
と首を傾げた
すると祐輔は
「はい……思い出したことがありまして」
と指を一本立てた
それを聞いた明日奈は、首を傾げながらも祐輔の後に続いた
そして、外に出てしばらく歩くと、川沿いに出た
「静かにしててくださいね……」
と祐輔は小声で忠告した
それから数分後、明日奈はその光景を見た
「これって……」
「ここの名所の一つ……ホタルです」
二人の周囲を、幾つもの光
ホタルが飛んでいた
「まだ生きてくれてて、良かったです」
周囲を飛んでいるホタルを見て、祐輔はそう言った
ホタルの幼虫は、水質が良くないと育たない
戦闘の余波で水質が悪化している可能性が高かったが、どうやら維持していたようだ
「綺麗……」
「はい、本当に……」
二人はそう会話しながら、指を絡めた
そしてしばらくの間、飛び交うホタルを見続けたのだった
どういう話を書いてほしいですか
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