※この作品はR-18です。

艦隊これくしょん・絆の旋律   作:京勇樹

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予想外の出会い

蛍を見た翌日、祐輔と明日奈は染み付いた習慣で何時も通りの時間に起きた

二度寝という手もあったが、そこを敢えて二人は何時も通りにすることにした

動きやすい服に着替えて、短めだがランニングをした

そして旅館に戻ると、汗を流した

それに対して、明日奈は

 

『朝から温泉っていうのも、悪くないね』

 

と微笑んだ

そして、大広間で朝食を食べていた

その時、女将がスススと近寄り

 

「お昼は、どうなさいますか?」

 

と問い掛けてきた

その問い掛けに、祐輔は

 

「僕達は出掛けるので、お昼は無しでお願いします」

 

と言った

それを聞いた女将は、頷いてから静かに離れていった

すると、明日奈が

 

「どこに行くの?」

 

と祐輔に問い掛けた

すると祐輔は、少し悩んでから

 

「簡単に言うと……工房……でしょうか」

 

と言った

そして朝食から約一時間後、二人は旅館から離れて山道を歩いていた

木々の間から陽の光が当たり、心地よい

耳を澄ませば、小鳥の鳴き声も聞こえてくる

 

「こんな山に、工房……?」

 

「着けば分かりますよ」

 

明日奈の疑問の声に、祐輔はそう返した

そして、暫くすると

 

「ここは……!」

 

「帝国で数少ない宝石の加工者達が住まう場所……通称、工房です」

 

明日奈が驚いていると、祐輔がそう説明した

その加工者達が住む《工房》周囲の山は、数多の鉱脈が集まっている場所だった

それを知った加工者達が集まり、出来たのが工房だった

最初は水晶や瑪瑙位のみだったが、諸外国との貿易が始まって他に宝石類があることを知った加工者達は、調査と採掘を繰り返した

それにより、その山々には良好な鉱脈が多数あることが発覚

そうして工房は、宝石加工と販売により生計を立てていくことになったのだ

 

「でも、よく無事に……」

 

「それは、ここが山の中に有るからだと言われています……深海悽艦は、人の集まる開けた町を中心に狙っています……それに対してここは、人は集まりますが、山間の木々に覆われた場所です。ですから、攻撃しにくいようです」

 

つまりは、天然の隠れ蓑

彼等が無闇に自然を破壊せずに、自然と共に生きてきたからに他ならない

 

「自然との共存……それが、ここを……」

 

「はい」

 

二人はそう会話しながら、蔦に覆われた石造りの門を潜った

すると

 

「おや……外からの客は、久しぶりだねぇ」

 

と声が聞こえた

見てみれば、一人の老婆が木で作ってある椅子に座っていた

 

「最後の客から、半年振りかね?」

 

「やはり、そうなんですね」

 

老婆の言葉を聞いて、祐輔はそう言った

元より、隠れ里たる工房だ

見つけることも知ることも、生半可にはいかない

 

「ん? お前さんは……12年位前に来た、ボウヤかい?」

 

祐輔の顔を見て、老婆はそう言った

すると祐輔は

 

「はい……ここを知った母に連れられて、来ました」

 

と言った

それを聞いた老婆は

 

「やはりね……あの時のボウヤが、こんなに大きくなるなんてね……時が経つのは、早いもんさ……」

 

と感慨深そうに言った

それを聞きながら、祐輔は

 

「入っても?」

 

と問い掛けた

すると老婆は

 

「ああ……構わないさ……取って食いやしない……」

 

と頷いた

それを聞いた二人が、中に入ると

 

「二人に、蒼き星の導きが在らんことを」

 

と老婆が言った

それを聞いた祐輔は

 

「ありがとうございます」

 

と言って、奥に進んだ

老婆が離れていくと、明日奈が

 

「今の言葉は……」

 

と気にしていた

すると、祐輔が

 

「今のは、工房特有の言葉です」

 

と言ってから、説明を始めた

それは、今から大分昔のことだ

工房が出来る少し前

ある一人の人物が、この地にある洞窟にて水晶が採掘出来ることを知った

その人物は、その水晶が良質なことを知り、そこに自身の工房を作ることにした

そこに同じ技術を有する人達が続々と集まり始め、出来たのが今の工房の始まりだった

そして、工房の代表を務める者はその地で一番の技量を有する者と決められた

その初代の代表が、最初に来た者

蒼星(そうせい)という名前だったらしい

そこから、代表に選ばれた者は蒼星の名を継ぐことが決まり、そこから産まれた言葉が《蒼き星の導きが在らんことを》

という言葉なのだ

 

「この地に来るのは、蒼星さんのお導き……という意味らしいんです」

 

「そうなんだ……」

 

意外なことを知っている祐輔に驚きながらも、明日奈は頷いた

そして、周囲の工房を見て

 

「結構、色んな人達が居るね……日本人だけじゃなく、欧州やアメリカの人達も居る……」

 

と呟いた

すると祐輔は

 

「風の噂を聞いて、興味を持った人が来るんだそうです」

 

と言った

そう言った祐輔達の横を、一台の台車を引いた女性が歩いていく

しかし、どう見ても台車に積んだ鉱石の量が余りにも多く、動きが遅い

それを見た二人は

 

「手伝いますよ」

 

「何処までですか?」

 

と問い掛けた

すると女性は

 

「すまない……あの建物まで頼む」

 

と奥の少し大きめの家を指差した

軍人として鍛えていた二人の手助けもあり、その目的地に早く到着

その女性の誘いもあり、二人は中に入ってお茶を貰うことにした

 

「先程は助かった……」

 

女性が頭を下げると、二人は

 

「困ってる人が居たら、助けるのは当たり前です」

 

「そうですよ」

 

と言った

それを聞いた女性は、頭を上げると

 

「どうやら、外から来たようだが……名前を聞いても?」

 

と二人に問い掛けた

 

「榊原祐輔です」

 

「その妻、榊原明日奈です」

 

二人がそう名乗ると、女性は

 

「随分と若い夫婦だ……」

 

と驚いていた

そして、気を取り直したらしく

 

「私の名前は、蒼星……第58代目蒼星だ」

 

と名乗ったのだった

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