祐輔と明日奈が、蒼星に出会った頃
第一初音島鎮守府、戦術機ハンガー
本来ならば昼休みの時間で、誰も居ない筈だった
しかし、ある一機の戦術機の陰から一人の整備員が姿を見せた
その整備員は、静かにその機体から離れてハンガーから出ようとした
しかし
「あんた、こんな時間に何してるの?」
と声が掛けられて、体をビクリと震わせた
声を掛けたのは、整備班班長となった理佳だった
「篠崎班長。いえね、工具を忘れてたことに気づきまして、探してました」
その整備員は振り替えると、そう答えた
それを聞いた理佳は
「そう。まあ、整備員にとって工具は大事よね」
と納得したように頷いた
それを聞いた整備員は
「はい。あ、工具は見つけたので、自分は食堂に」
と言って、理佳に背を向けた
すると理佳は
「けどあんたさ、あの機体……祐輔機担当の班じゃないわよね?」
と言った
その直後、その整備員は一気に走り出した
すると理佳は
「神代少尉!!」
と声を張り上げた
「止まれ!! その場で両膝を突いて、両手を頭の後ろに組め!!」
理佳が呼んだ直後、小銃を構えた裕也が現れた
裕也の姿を見ると、整備員は懐から拳銃を取り出した
その瞬間、一発の銃声が響き渡り
「ぐっ!?」
その整備員が持っていた拳銃が、手から弾き飛ばされた
どうやら、裕也が銃撃し弾き飛ばしたらしい
本来ならば火気厳禁だが、緊急事態故に理佳も許可した
拳銃が弾き飛ばされた整備員は、それでも諦めずにナイフを抜いた
しかし、裕也はすぐに小銃を背中に回すと、整備員が突き出したナイフを回避
手首辺りを左手で掴み、右掌を容赦なく肘に叩き込んだ
その直後、嫌な音が鳴った
「があぁぁぁぁぁぁぁ!?」
肘から逆方向に腕が曲がった整備員は、その場で踞った
そこに、理佳が歩み寄り
「えげつない技を使うわね……」
と裕也を見た
すると裕也は、整備員の後頭部に小銃を突き着けて
「反抗の意思を無くすためです」
と答えた
そして理佳は
「さて……伍長、あんた本当の所属は何処? 前は陸軍の貼付基地って聞いてたけど、あんたの経歴に不自然な点があることは、分かってるのよ」
と整備員に問い掛けた
その問い掛けに、整備員は歯をギりっと鳴らした
その数瞬後、その整備員は前のめりに倒れた
それを見た裕也は
「しまった! 奥歯に毒を仕込んでいたのか!?」
とその整備員の襟首を掴んで、上半身を持ち上げた
見れば、整備員の口からは白い泡が出ている
そして、独特のアーモンド臭
「青酸カリか……」
「やられたわね……」
二人はそう言うと、妖精を呼んで拳銃とナイフを回収
整備員の遺体は、裕也が死体袋に入れて運んだ
その後二人は、調べてから執務室に向かった
「……そうか。自害されたか……」
二人からの報告を聞いて、唯依は眉を潜めた
すると裕也は
「拳銃自体は、帝国軍で採用されている物でした。ただ、登録番号は偽造。本来の登録番号は、現在調べています」
と報告した
そして理佳は
「奴さんが祐輔の機体に仕掛けたのは、妖精達と解除したわ。爆弾とウィルスだったわ。今、出どころを調べてるところ」
と報告した
それを聞いた唯依は
「……祐輔の暗殺が目的か……」
と呟いた
それを聞いて、理佳が
「今、他に怪しい奴が居ないか調べてるところよ。大淀さんが」
と報告
それに追随するように
「犯人の部屋も、調べています。とはいえ、何か出てくる可能性は低いでしょうが」
と言った
それを聞いて、唯依は
「技術大尉、祐輔機は念入りに調べてくれ。暫くの間、機体整備を妖精のみにしても構わない」
と言った
それを聞いた理佳が頷くと、裕也に
「暫くの間、鎮守府全体の警戒を頼む。不審物が有ったら、最優先に確認を」
と指示を出した
それを聞いた二人は、それぞれ返答した後に退室
二人を見送った唯依は、小さく
「……誰かは分からんが、させんよ……」
と呟いた
場所は変わり、大本営
その長官執務室
「……これは、本当か?」
「は……間違いありません」
武仁は部下が持ってきた書類を見ると、思わず問い掛けてしまった
それは、以前に初音島に潜入してきたRLFが使用していたラング一式
それらの出どころを調べた結果だった
「……何者かが、大本営のサーバーをハッキングし、それらを廃棄扱いにし、RLFが用意していたペーパーカンパニーたる業者に渡した……」
「は……自分達としても、信じられませんでした……まさか、大本営のサーバーが、ハッキングを受けるとは」
武仁の言葉を聞いて、その部下はそう言った
そうして武仁は
「それで、ハッキングをした輩は特定出来たのか?」
と部下に問い掛けた
すると、部下は
「いえ、相手は幾つもの海外サーバーを経由していて、特定は……」
と首を振った
それを聞いて、武仁は
「……早急に対策を構築するように、技術研究廂の茅場大佐と連絡を取り、会議しろ」
と指示を出した
そして、部下が退室すると
「……ふざけたことをしてくれた……」
と低い声を漏らしたのだった
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