二日後
「初めまして、榊原少将。私は第一新潟西鎮守府提督の沖田十蔵大佐です」
「初めまして、沖田提督。当鎮守府提督の榊原祐輔少将です」
祐輔の鎮守府に、五十鈴の提督
沖田十蔵が来訪した
「それでは、こちらに……」
そう言って祐輔は、その沖田提督の案内を始めた
そして通したのは、応接室
二人が入ると、既にそこには、大淀が居た
「大淀さん……例のものを……」
「はい、ただいま」
祐輔の言葉を聞くと、大淀は一時退室
数分後、一つの木箱を持ってきた
大淀は、その木箱をゆっくりと沖田提督の前に置いた
すると祐輔が
「そちらが、五十鈴さんの御遺骨です……」
と言った
それを聞いた沖田提督は、両目から涙を流しながら
「すまない……五十鈴……っ! 私が、選択を誤ったばかりに……っ!」
とその木箱を抱き締めた
そこに、祐輔が
「沖田提督、こちらを」
と一つのボイスレコーダーを、沖田提督の前に静かに置いた
「こ、これは……?」
「艤装のブラックボックス……その中から見つけた、五十鈴さんの御遺言です……お聞きください」
祐輔がそう言うと、沖田提督は震える手でそのボイスレコーダーを掴んだ
それを見た祐輔は、帽子を目深に被って
「では、僕は退室しますので……ごゆっくりと……」
と言って、応接室から退室した
そして、執務室に戻りながら
「そういえば……明日奈さんは、何処に行ったんだろ?」
と首を傾げた
その頃明日奈が居たのは、先日見つけた第五格納庫のドアの前だった
「入るには……カードキーか……」
そう言った明日奈の視線の先には、スラッシャーが備え付けられた壁
「軍人としては、NeedtoNowを遵守するべきなんだろうけど……」
明日奈はそう言うと、懐からIDカードを取り出して
(この先に、重要なことが隠されてる……そんな気がする……)
と思いながら、スラッシャーにIDカードを通した
数瞬後、赤く光っていたランプが緑に変わった
それを見た明日奈は、安堵すると共に、ドアノブに手を掛けた
そして、ゆっくりと開けた
最初は暗かったが、すぐに電気が点いた
そうして見えたのは、一機の戦術機だった
「この機体は……陽炎……? ううん、違う……一回り、大きい……」
と明日奈が呟いた
そこに
「Fー15SEJ……試02式、
と声が聞こえた
聞き覚えのある声に、明日奈は驚きながら声と聞こえた方向を見た
その先に居たのは
「り、リズ!?」
「やっほ、明日奈……やっぱり、来たわね……」
明日奈の親友にして、鎮守府の整備班班長を勤める里香だった
「なんで……」
「なんでって、この機体を整備してるのがアタシだからよ……それに、近い内に来そうだって思ったからよ」
里香はそう言うと、明日奈の隣に立った
すると明日奈は、件の機体
月虹を見ながら
「この機体……まさか、ステルス?」
と里香に問い掛けた
すると里香は、素直に感嘆した様子で
「お、よく分かったわね。その通りよ」
と肯定
そして
「一応の名目は、深海悽艦にステルスが通じるかどうかの検証……本音は、深海大戦が終結した後……つまりは、対人戦を想定して開発された機体よ」
と説明した
それを聞いた明日奈は、知を這うような声で
「まだ終わる目処すら、明確化されてないのに……その後の事を想定だなんて……」
と呟くように言った
明らかに、怒りが滲んでいる
すると、ハッとした様子で
「そんな機体がここにあるのに、祐輔君が運用してる処、見てない……」
と呟いた
そして、小さく
「対人戦を想定されて、開発された戦術機……性能は、第三世代に迫る2.5世代機……」
と考え始めた
その様子を、里香はジッと見ていた
そうして、数十秒後
「ねえ、リズ……もしかして、祐輔君……特務に関わってない?」
と里香に問い掛けた
それを聞いた里香は
「その根拠は?」
と明日奈に、問い返した
すると明日奈は
「特務には、少なくとも衛士が一人居ることは分かってる……それも、相当の腕の持ち主が……一人で、中隊規模の不知火を殲滅する技量の持ち主……この時点で、数は極僅か……それこそ、極東五指に入る程……けど、その内の三人はあり得ない……帝都の殿下守備の大隊隊長だから……」
と語りだした
そこまで聞いた里香は、無言で先を促した
「そしてもう一人は、帝国技研の連隊隊長……けど、彼もまたあり得ない……その連隊は、教導隊としての役割も担ってる……教導隊は、一拠点から簡単には離れられない……この時点で、該当者はほぼ一人だけ……」
明日奈はそこまで言って、月虹を見上げて
「この機体の正確な性能は分からないけど……腕次第で、2.5世代機でも第三世代に勝てる……しかも、対人戦を想定されて開発された、試作のステルス機……勝機は、十二分にある……極東第三位の祐輔君なら」
と確信した表情で告げた
そこまで聞いた里香は、パチパチと拍手しながら
「流石、少ない情報からよく推理したわね……」
と賞賛した
里香の言葉を聞いた明日奈は
「じゃあ、祐輔君は……特務に?」
と目を細めた
すると里香は
「そうね……特務部隊の一人よ……」
と認めた
それを聞いた明日奈は
「……なんで」
と呟いた
すると里香は
「言わなかったのは、機密が深く関わってるからよ……特務は、その存在自体が秘匿されてる……」
と言った
その直後
「それは分かってるわよ! ブラック鎮守府の提督の中には、簡単には裁けない奴が居る! 陸軍の高官と繋がってたり、軍人の名家だったり! そうじゃないわよ! なんで祐輔君が、特務に関わってるかってことよ!?」
と叫ぶように言った
「祐輔君は、かなり優しいわ! それこそ、軍人には不向きな位に! そんな祐輔君が軍人になった時点で、祐輔君の決意は分かるわ! けど……なんで、人を殺す任務が起きる特務に関わってるの!」
明日奈はそこまで言うと、荒く呼吸を繰り返した
すると里香は
「……それを知ったら、戻れなくなるわよ……」
と呟いた
それを聞いた明日奈は、鋭い視線を向けて
「私は、祐輔君の妻よ……覚悟はあるわ」
と告げた
それを聞いて、里香は深々と溜め息を吐いてから
「……今特務は、ある存在を追ってるのよ……」
と言った
「……ある存在?」
「そ……00部隊……通称、奈落部隊……」
里香が告げた番号を聞いて、明日奈は目を見開いて
「00部隊って……あの捨て駒部隊!? 噂じゃなかったの!?」
と驚いた
すると里香は、首を振って
「いえ、実在すると証明されたわ……祐輔が、唯一の生還者だもの……00部隊のね……」
と告げた
それを聞いた明日奈は、驚きながら
「もしかして……祐輔君の偽装の痕跡のある経歴は……」
「特務が用意した、表向き用の経歴よ……一度、軍籍が抹消されたからね」
明日奈の呟きに、里香はそう言った
「軍籍が抹消って……」
「横浜攻防戦で、戦死扱いにされたからね……まあ、死んでても可笑しくないけど……」
戦死扱いになれば、軍籍は一度抹消される
それを利用したのだろう
「つまり……その00部隊を見つけるために、ブラック鎮守府の提督を攻撃……してると?」
「ブラック鎮守府だけじゃないわよ……怪しい陸軍や企業も、攻撃の対象……戦術機や薬物なんて、陸軍や企業からしか入手出来ないからね」
里香の話を聞いて、明日奈は歯を食い縛った
(ここまで、腐敗してるなんて……!)
明日奈がそう思っていると、里香が
「……どうする?」
と問い掛けた
明日奈が視線を向けると、里香は
「祐輔、離れても文句は言わないわよ? 覚悟してる筈だし」
と言った
それを聞いて、明日奈は過去の祐輔の言葉を思い出した
『僕には、結婚する資格が有るわけが無い』
これは、00部隊や特務の事も含めていたのだ
露見すれば、明日奈に危機が訪れる可能性が高い
だから、そう言ったのだ
明日奈を、守るために
「リズ……今更よ……軍人になった以上、命の危険は承知……それに、祐輔君は放っておけないのよ……平気で無茶するし……無理もする……」
明日奈はそう言って、体を里香に向けて
「リズ……特務に、渡りを付けられる?」
と言ったのだった
どういう話を書いてほしいですか
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