「今日は、お世話になりました……」
「大したことも出来ず、申し訳ありませんでした……」
その会話を最後に、沖田は自身が乗ってきた船に乗船
祐輔はそれを見送ると、執務に戻った
執務室に戻ると、明日奈が何やら真剣な表情で執務をしている
(何かあったかな?)
祐輔はそう思いながらも、執務に集中した
結局その日は、何事もなく執務は終了
部屋に戻った
そして祐輔は、様変わりした部屋に驚いた
「見た目変わらずに、中が広くなってる……」
どうやら、大工妖精の仕事のようだ
物置小屋の見た目は変わらず、中が倍近くに広くなっていた
しかもいつの間にか、明日奈の家具までも搬入されている
まあ、夫婦になったのに家具が仕官寮にあること事態が変だったのかもしれないが
更には、ベッドもダブルサイズに変更されていた
「妖精さん、張り切ったなぁ……」
祐輔はそう言いながら、手紙入れから何通かの手紙を出した
それを一通ずつ確認していくなか、祐輔は一通の黒い封筒に気づいた
それを開封して、中から一枚の便箋を取り出した
それを一読した祐輔は、家から出た
そして、ヘッドセットを装着すると
「リズさん、聞こえますか」
と里香を呼んだ
すると
『はいよー、呼んだ?』
と軽い調子で、里香から返事が来た
「今から、出撃します。02式を用意してください」
『……今から?』
祐輔の言葉を聞いて、里香は少し驚いた様子で問い掛けてきた
驚いているのは、時間だろう
今の時間は、夜の10時を少し過ぎたところである
「今からです。相当急いだようですね。鼠さんが直接持ってきたようです」
それは、手紙に残された温もりからの判断だった
投函されて、それほど時間は経っていないことが分かった
『明日奈には、どう言う訳?』
「……本土から、緊急の呼び出しとしましょう……帰りは間違いなく、明日になります」
祐輔はそう言いながら、エレベーターに乗り、地下に向かった
「……行き先は、本土の新木場……第三警備府と近くの陸軍基地です」
『ちょっと待ちなさい……その二つを、祐輔一人にやらせる訳!?』
祐輔の行き先を聞いて、里香は驚きの声を上げた
確かに、二つの基地を攻撃するのに一人は厳しいだろう
すると、祐輔は
「影が動くようです……他に、剣と銃も」
と教えた
それを聞いた里香は、唸りながら
『どっちにしろ、かなり厳しいじゃないのよ……』
と言った
そして、少しすると
『装備は?』
と聞いてきた
その声音からは、納得しきれていないのが伺える
「今回は、長時間戦闘が予想出来ます。
『分かったわ……』
それを最後に、祐輔はヘッドセットを外してロッカーに投げ入れた
そして、手早く01式試製強化装備を装着
第五格納庫に向かった
入ると、里香が
「用意出来てるわ……いってらっしゃい……」
と肩越しに、機体を指し示した
それを聞いた祐輔は
「はい、ありがとうございます」
と言って、機体に搭乗した
すると月虹は、巨大なアームである箱に入れられた
それは、大気圏突入用の再突入装甲殻を流用して作られた海中移動用装備
黒穴はスラスターの代わりに、ハイドロジェットを採用しており、海中を70ノットを越える速度で移動出来る装備である
再突入装甲殻とは違い、観音開き式になっているので、帰りにも利用出来るようになっている
それを使い、目的地たる新木場付近まで潜航
指定海域に到着すると海面に出て、扉が開くのだ
「……出撃する」
鎮守府を出て暫くして、祐輔は一人呟いた
そうして、目的の新木場第三警備府目掛けて侵攻開始した
同時刻、目的の新木場第三警備府
その提督私室では
「ククク……今日の取り引きで、もうすぐ二億だ……これで、ようやく……!」
と肥え太った男が、金庫の中を確認していた
この提督は解体した艦娘を、違法に娼婦として業者に買い取らせていた
日付が変わる頃に、その違法業者が引き取りに来る
それを、特務は察知したのである
更に言えば、その金を付近の陸軍の基地司令に賄賂として送っており、時おり望まれた艦娘をその陸軍基地に送っていたのだ
「笑いが止まらんとは、このことだな!」
とその提督は言って、札束を自分の目前に掲げた
その時だった
突如、警備府全体が揺れた
「な、なんだ!?」
提督がそう言った直後、甲高い警報音が鳴り響いた
それを聞いた提督は、転びそうになりながらも受話器を取り
「な、何事か!?」
と声を張り上げた
すると、レーダー室の下士官から
『て、敵襲です! 所属不明の戦術機が!?』
と悲鳴混じりに報告
その直後、その通話が途切れると同時に爆発音が響いた
それが意味するのは、レーダー室が吹き飛んだのだ
それを察した提督は、その受話器を放り出して、引き出しを開けて、中の赤い電話の受話器を掴み
「聞こえるか!? 第三警備府の諸岡だ! 所属不明の戦術機に襲撃されている! 大至急戦術機部隊を送ってくれ!!」
と怒鳴るように言った
その直後、ドアが開き
「なんだ!?」
と提督が振り向いた直後、一発の銃声が轟いた
それが、その提督の聞いた最後の音だった
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