「さて、シミュレーターとはいえ新しいOSだが……大丈夫か?」
と問い掛けた直哉の先では、明久と結華の二人が強化装備を身に纏った状態でベンチでグッタリしていた
すると明久が
「この感覚……訓練生時代を思い出します……」
と言った
それを聞いて、直哉は頷いて
「まあ、このOSに関わった殆どが経験するだろうことだな」
と言った
すると、結華が
「ですが、このOSは画期的です。キャンセルに先行入力。そしてコンボ……そして何より、今までのOSより早い反応……慣れれば、これ程有用なものはありません」
と言った
その言葉に、直哉は頷いてから
「ああ。既存のOSになれたベテラン程慣れるのは大変だろうな」
と言った
その時だった
「どうも、青葉です! 一言お願いします!」
と一人の艦娘が現れた
桃色の髪にキュロットを履いた艦娘
重巡洋艦娘の青葉だった
通称、突撃取材の青葉
または、パパラッチ青葉
直哉は青葉を見ると、端末を取り出して
「あ、衣笠ちゃん? パパラッチ捕まえに来て」
と青葉の妹艦
衣笠に電話を掛けた
すると、青葉が
「流石に、失礼過ぎませんかね!?」
と声を上げた
すると直哉は、苦い表情で
「よし、胸に手を当てて過去にやったことを思い出せ」
と青葉に言った
はっきり言って、青葉の新聞はエグい
直哉と吹雪の関係は今や、鎮守府の全員(新任の二人以外)は知っている
それを暴露したのが、青葉の新聞だった
しかも、二人が過去に同じ孤児院に居たことすら知られてしまった
その後青葉は、吹雪に一日耐久サバイバル訓練(八つ当たり)に処されたが
すると、ドアが開いて
「バカ姉はここ!?」
と銀髪に緑目の重巡洋艦娘が現れた
青葉型二番艦、衣笠である
「げ、衣笠」
「まったく……青葉は、迷惑掛けないの。まだ訓練中みたいじゃない」
衣笠はそう言うと、明久達に近寄り
「ごめんね、青葉が五月蝿くて」
と謝罪した
すると、明久は手を振って
「いえ、訓練生時代を思い出せて楽しかったですよ」
と言った
すると、続けて結華が
「今は訓練中なんで無理ですが、後でならいいですよ」
と言った
それを聞いた青葉が
「約束ですよ?」
と言って、シミュレータールームから衣笠と一緒に去った
それを見送ると、直哉は
「それじゃあ、二回目始めるぞ」
と言った
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「今日の報告書です」
と直哉は言いながら、執務室の祐輔の机に書類を置いた
それを受け取った祐輔は、軽く見ると
「直哉君から見て、二人はどうかな?」
と直哉に問い掛けた
すると直哉は
「かなり新OSに対する適性は高いと思います。半日足らずですが、既にキャンセルと先行入力を使いこなしてました」
と言った
それを聞いて、祐輔は頷いて
「うん、ありがとう。今日はもう、吹雪ちゃんと休んでいいよ。ただ、何時も通りに近緊急出撃はあるかもしれないけど」
と言った
すると、吹雪が
「ですが、まだそんなに書類が」
と机の上に積まれてる書類に視線を向けた
祐輔の机の上には、高さが1mに達する書類の山があった
しかも、一つではなく全部で四つも
「まあ、これくらいなら0時位には終わるよ」
祐輔は書類の山を見て、そう言った
そして、深々と溜め息を吐いて
「やっぱり、人手不足が目立つね……初音島鎮守府は」
と言った
すると、吹雪が同意するように
「そうですね……特に、祐輔さんの副官さんが居ないのが深刻です……執務も出撃も」
と言った
今の初音島鎮守府には、祐輔の副官に当たる人物は居ない
秘書艦は多数居るが、彼女達も暇ではない
祐輔の輔佐をしつつ、出撃や新しい艦娘の建造
装備の開発もしなければいけない
更に祐輔は、出撃も単機出撃がザラである
本来戦術機の出撃は、
一応の編成では、祐輔は義之と組んでいることになっている
しかし、二人には隔絶的な腕の差があった
しかも少し前に、義之は負傷
今現在は、療養中の身だ
更に言えば、祐輔は近い内に義之を直哉の隊に編成するつもりである
それについては、直哉も了承済みで、後は通達するのみである
「一応、大本営には人材を送ってもらうようには打診してるけどね……僕、一部の人には嫌われてるからねぇ」
「相変わらずの血筋主義者、ですか」
祐輔の話を聞いて、直哉は溜め息混じりにそう言った
大本営というのは、帝国海軍の総司令部である
通称は赤レンガとも呼ばれていて、そこに詰めているのは所謂エリートばかりだ
だがその殆どが、古くから海軍に在籍している軍人か海軍仕官学校を優秀な成績で卒業したもの
もしくは、昔から海軍に優秀な軍人を多数輩出している家柄出身だった
故に、血筋主義とも呼べる派閥が出来上がっていた
そう言った者達にとって、ここ数年前から数多く採用されている民間から適性により選ばれた提督や、祐輔のように陸軍から転属になった提督は見下す対象だった
しかも、祐輔が担っているのは防衛最前線の鎮守府で階級はその年齢からしたら高い大佐
更に言えば、功績もあった
それが、血筋主義者達には面白くなかった
だから祐輔が度々している人材派遣の打診が、握り潰されているのだ
今は一部業務や作業を一部の艦娘達が代行することで回しているが、それも何時崩壊するか分からないのが現状だった
そんな初音島鎮守府としては、一刻も早く人材が欲しい
処だった
「今回の新任衞士だって、一年近く打診し続けて、ようやくだからね……」
祐輔がそう言うと、直哉が
「自分達は、まだ休息が取れてます。しかし、祐輔さんは0時まで執務し、四時半には起きてるじゃないですか。疲労が貯まっているはずですよ」
と言った
「まあ、僕も衞士の端くれだからね。体力は自信があるよ」
祐輔はそう言いながら、書類を捌いている
だが、減る気配が微塵もない
書類の量が多すぎるのだ
試験データや遠征艦隊の詳細報告
消費した資材の報告書
中には、艦娘からの陳述書や要望書
大本営からの任務書
などである
艦娘も中々に過酷な仕事で、死ぬこともある(今現在、祐輔艦隊は轟沈者無し)
だが、この鎮守府では提督が一番疲れる仕事と言っても過言ではない
「まあ、最低三時間寝れば行ける」
「もっと寝てください」
祐輔の言葉に、吹雪は思わず突っ込みを入れていた
その後、吹雪と直哉は祐輔の書類整理を手伝い、終わったのは夜10時少し前だった
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