※この作品はR-18です。

艦隊これくしょん・絆の旋律   作:京勇樹

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天枷研究所 2

エレベーターが到着すると、アイシアに促されて全員降りた

すると、明日奈が

 

「これも、不知火弐型……」

 

と横たわる鉄の巨人を見上げた

それに、祐輔が答えようとすると

 

「不知火弐型フェイズ3……これが、本当の弐型なんだよ」

 

とさくらの声が聞こえた

全員が視線を向けると、白衣に眼鏡を掛けたさくらが居た

すると、音姫と由夢が

 

「お久しぶりです、さくらさん」

 

「元気そうで、良かったです」

 

と言った

すると、さくらは

 

「にゃはは。ボクが、簡単に体調を崩すと思う?」

 

と笑った

確かに、音姫と由夢だけでなく、祐輔にもさくらが体調を崩すのは想像出来なかった

そしてさくらは、祐輔と明日奈の前に立つと

 

「祐輔君……大事なこと、あるよね?」

 

と首を傾げた

確かに、祐輔はさくらに告げるべきことがあり、それを言いに来たのだ

それを言わないというのは、本末転倒だ

すると祐輔は、深呼吸してから

 

「さくらさん……僕は、この人……明日奈さんと、結婚しました」

 

と明日奈の手を握った

すると、明日奈は

 

「改めまして……榊原明日奈です、芳野さくら博士」

 

と頭を下げた

そして、明日奈をジッと見たさくらは

 

「うん……君なら、祐輔君を任せられるね」

 

と言って、右手を差し出した

その意図に気付き、明日奈は握手に応じた

すると、さくらは慈しみ溢れる表情で

 

「祐輔君を、よろしくね? けっこう無茶する子だから」

 

と言った

それを聞いた明日奈は、微笑みを浮かべて

 

「お任せください」

 

と答えた

その光景を、祐輔は少し恥ずかしそうに見ながら、頬を掻いていた

その後、全員で休憩室に向かい

 

「はふぅ……極光の調整大変だよう……OSの換装が特に……」

 

とさくらは、緑茶を飲みながら愚痴を溢した

すると、祐輔が

 

「しかし……よくアメリカさんが、OKを出しましたね。試験を」

 

と休憩室の窓から、フェイズ3を見た

すると、さくらは

 

「文句なんて、言わせないよ。こっちは、強力なカードを得たからね」

 

と自信満々に言った

それを聞いた明日奈は、首を傾げながら

 

「あの、それってどういう……」

 

と問い掛けた

すると、さくらが

 

「この機体の開発に際して、幾らかアメリカの独占技術が使われたから、機体をアメリカが差し押さえしようとしたんだ」

 

と言った

それを聞いた音姫と由夢は目を見開き、明日奈は

 

「幾らなんでも、横暴です!」

 

と憤った

それを聞いたさくらは、同意するように頷き

 

「その通りだね……だからこっちは、偶然知った幾つかの情報でアメリカを黙らせたんだ」

 

と語った

いわゆる、外交だろう

その話を聞いた祐輔は、脳裏にトレンチコートを着た一人の男性を思い浮かべて

 

(あの人が、関わってるだろうなぁ)

 

と思っていた

そして、その予想は当たっていた

その人物は、帝国情報省外務二課課長の鎧衣左近である

彼率いる外務二課の担当は北米大陸なのだが、その中に彼は単身で潜入し、様々な情報を得てくる

その中で得た情報の幾つかを使い、アメリカを黙らせたのである

ふとその時、さくらが思い出したように

 

「そうだ、祐輔君。ついさっきなんだけどね」

 

と祐輔に声を掛けた

そして、祐輔が視線を向けると

 

「不知火弐型フェイズ2の制式採用、決まったよ」

 

とさくらが言った

それを聞いた祐輔は

 

「本当ですか!?」

 

と嬉しさと驚きが混じった声で、さくらに問い掛けた

するとさくらは

 

「本当だよ! ボクが、祐輔君に嘘を言ったこと、あったかい?」

 

と笑みを浮かべた

確かに、さくらは何だかんだで、祐輔や義之に嘘を言ったことはない

 

「ただまあ、一回はもう一機に決まり掛けたんだよ。軍上層部としては、深海大戦後のことを想定したみたいだけど……殿下の言葉で、弐型の方が制式採用されることに決まったんだ」

 

殿下

つまり、悠陽の言葉というのは

 

『今深海大戦が終わる目処すら無いのに、戦後のことを考えるなど愚の骨頂。総合性能は、我が帝国の不知火弐型の方が優っている。ならば、それを採用することこそ、前線で戦う衛士達の命を繋ぎ、ひいては、戦力の増加に繋がることは明白』

 

である

それを聞いた軍の官僚達は、意見を変えて不知火弐型の制式採用を議決した

 

「良かった……唯依や皆の苦労が報われる……」

 

祐輔がそう安堵していると、明日奈が

 

「祐輔君もだよ? 祐輔君の試験データは、間違いなく採用の一因だから」

 

と祐輔の頭を撫でた

すると、アイシアが

 

「それに合わせて、撃震の生産縮小が決定。徐々に引退することになったよ。そして、不知火の増産態勢と……陽炎の限定生産も決まったよ」

 

と言った

 

「陽炎を?」

 

「うん。そもそも、第一世代じゃあ第三世代には追い付けない……だから、撃震の生産縮小に沿う形で、一部生産ラインを陽炎に変更。不知火と弐型の配備までの間に合わせを兼ねて、増産・配備するんだよ」

 

祐輔が首を傾げると、さくらはそう教えた

そもそも、陽炎ことFー15Jは帝国にとってはデータ収集用機体にしか過ぎなかった

しかし、Fー15を始めとした一部第二世代の性能は、第三世代に迫る程だ

上手く運用すれば、大きな戦力になるのは間違いない

最も大きい理由は、現場衛士から陽炎の再生産が望まれていた

陸軍全体の陽炎の数は、最大で約二個連隊(216機)分のみだった

しかし、度重なる戦闘で数は減少

今や約150機を下回っている

陽炎を失った衛士が撃震に乗り換えると、戦死する確率が飛躍的に高まる

それは、機動性の違いが最たる理由だ

陽炎で出来たから、感覚的にその機動をやろうとして失敗

深海悽艦に撃破されるというデータが、確かに出ていた

 

「それに、Fー15の拡張性は高いからね。行き詰まってきてるFー4の改修より、遥かに楽だよ」

 

と言ったのは、アイシアである

天枷研究所は何度も撃震の改修をしてきており、もはや改修の案や方法が無くなってきていた

そして一番の理由は、やはり性能の高さだ

Fー15やFー16といった機体は、開発国のアメリカだけでなく、世界各国で改修を繰り返して運用されている

特に有名なのは、Fー15E、ストライク・イーグルだろう

ストライク・イーグルはアメリカ陸軍で主力機として運用されていて、目覚ましい戦果を上げている

それを考えると、やはり少数のみで運用するのは惜しい機体なのだ

 

「弐型の制式配備と生産開始は、来年……2004年。だから、弐型は試01式から04式の型番が与えられる……良かったね、祐輔君……約三年間の運用、お疲れ様」

 

「はい、ありがとうございます」

 

さくらの言葉を聞いて、祐輔は頭を下げた

すると、アイシアが

 

「それに合わせて、この装備の採用が決まったよ」

 

と一枚の書類が差し出された

それを受け取ると、祐輔は

 

「これは……欧州軍の支援突撃砲……」

 

と呟いた

欧州統合軍制式採用装備、Mkー72支援突撃砲

72mm砲弾を、一分間に最大で三百発撃てる装備である

総弾数は、3000発

ドラムマガジンを採用していて、二つ装着することで3000発という数の総弾数を可能としている

 

「……なるほど、多目的ミサイルランチャーが装着出来なくなるから、それの代わりですか」

 

「流石は祐輔君! 大当たり!」

 

祐輔の推察を聞いて、さくらは拍手した

どうやら、当たっていたようだ

不知火弐型だが、肩装甲の形状が不知火から大きく変わっており、それによって多目的ミサイルランチャーの発射基が肩に装着出来なくなったのだ

それが理由で、火力支援(ブラストガード)の最大火力の大幅減少が起き、それは無視出来なかった

そこで注目されたのが、既に欧州統合軍が制式採用し運用されていたMkー72だった

欧州統合軍が既に制式運用しているので、試験も短期で済むのが大きな理由だ

 

「そして祐輔君……正式通達はまだだけど……この極光……試03式の試験運用……それを、第一初音島鎮守府の第一戦術機小隊に任せたいんだ」

 

さくらのその発言に、祐輔と明日奈は目を見開いたのだった

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