「……つまり、僕を含めた第一小隊が……極光の試験をするんですか?」
「そう……祐輔君達に回すのは、ここにある先行試作機を含めた四機……」
祐輔の問い掛けに、さくらはそう答えながら、その鉄の巨人を見上げた
確かに、エレベーターで降りてきた時に、四機あることは確認していた
まさか、その四機全てが、第一初音島鎮守府
しかも、祐輔率いる第一小隊に配備されるとは予想していなかったのだ
「……驚く気持ちは分かるよ……けど、祐輔君しか相応しい衛士が思い当たらないんだ……極東五指に入る祐輔君しかね……」
さくらのその言葉に、祐輔は少し間を置いてから
「しかし、陸軍の最新鋭機を海軍の僕に回すというのは……確かに試験部隊ですが……以前は、僕が技研時から乗っていたからまだ良かったでしょうが……」
と言った
確かに、祐輔は技研時から弐型を操縦していて、試験を続行させるという名目で、そのまま鎮守府に持っていけた
しかし、今の祐輔は海軍であり、その海軍の祐輔が陸軍の最新鋭機たる極光の試験をいの一番に行うとなると、下手すれば余計な軋轢を生む要因になってしまうだろう
だが、さくらが首を振って
「今回のことは、巌谷君が提案して、すでに一部陸軍上層部で話し合ってあるよ」
と言った
「巌谷准将が?」
「うん。あ、巌谷君は今回の弐型制式採用で、階級が上がることが決まったよ。少将だって」
祐輔の言葉に、さくらはそう返答した
巌谷の階級が上がること自体は、祐輔も納得した
弐型の開発計画を提案したのが、巌谷だからだ
「手が早いな、巌谷さん……」
「まあ、優秀な人材を遊ばせる余裕は無いってことだね」
祐輔が呟くと、さくらはそう言って緑茶を飲んだ
それを聞いた祐輔は、少し黙考した
そして、
「わかりました……その任、確かに引き受けます」
と承諾することを伝えた
それを聞いたさくらは、満面の笑みを浮かべて
「良かった! おかげで、調整が無駄骨にならなくて済んだよ」
と言った
それを聞いた祐輔は
「つまり、今やっている調整は……僕のために?」
と少し驚いていた
「うん! いやぁ、夕呼ちゃんと話つけるの、中々苦労したよ。年々、交渉が上手くなるね」
さくらはそう言って、せんべいを一枚かじった
夕呼とは、帝国三大天才の一人の香月夕呼のことで、量子物理の天才だ
さくら、夕呼、束
この三人が居るから、日本の技術水準は年々高くなっていると言っても過言ではないだろう
特に、さくらは科学者でありながら、風見学園の学園長も勤めており、学生の育成にかなり熱心だ
以前そのことを、一人の記者が理由を訊ねたところ
『将来有望な子供達を育てることが、ひいては国の未来に繋がるとボクは考えてます。ですから、例えどんな子供だろうと一人ずつ大切に育てていきたいと思ってます』
と答えた
そしてその言葉の通り、さくらは風見学園に通っている生徒全員を大事に育てていて、その過半数が卒業後に優秀な役職に就いている
有言実行の良い例だろう
「まあ、まだ調整に手こずってるから、正式な引き渡しは暫く先になるけど……
その言葉を聞いた祐輔は、数秒程黙考してから
「……しかし、僕がこの機体を上手く扱えるか……」
と極光を見上げた
その言葉に、明日奈が
「祐輔君なら、大丈夫だよ」
と優しく言った
その後、明日奈にさくらと音姫、由夢の三人が色々と質問をして、明日奈は丁寧に答えた
その間祐輔は、さくらから渡された極光の仕様書を黙々と読んでいた
そして、暫くして
「では、そろそろ」
と祐輔が席を立った
それを聞いた明日奈は、手首の腕時計に視線を向けて
「あ、もうこんな時間なんだ」
と驚いた
来てから、軽く二時間は経っていた
「まだ行こうと思ってる所があるので、これで」
祐輔がそう言うと、さくらは
「うん! 今日は来てくれてありがとうね」
と言いながら、手を振った
どうやら音姫と由夢はまだ話すことがあるようで、まだ残るようだ
呼んだエレベーターに乗り、祐輔と明日奈の二人は90番格納庫から出て、天枷研究所を立った
そして、祐輔の運転で次の場所に向かった
初音島の名物公園たる、桜公園だ
初音島でも、最も桜が植わっている公園で、ある清掃業者は
『この公園があれば、俺達の仕事は無くならない』
と言うほどに、一年中桜の花びらが舞っている
「綺麗……」
「はい……引き取られて、初めてさくらさんに連れてきてもらった場所です……変わらないなぁ……」
明日奈がポツリと呟くと、祐輔はそう言って明日奈と手を繋いで歩きだした
幻想的なまでに舞う桜吹雪の中を、二人は静かに歩いていく
時々、遊びに来たらしい親子連れを微笑ましく見送り、祐輔は桜公園の中心地
噴水広場に来た
その噴水の水面にも桜の花びらが浮いていて、噴水と共に不規則に揺れる
その光景を見た明日奈は
「……ここが最前線だって、忘れそう……」
と呟いた
確かに、戦時下の防衛の最前線にしては、平和な光景だろう
気を抜けば、自分が軍人だということすら忘れそうになるほどに
「……この光景を守りたくて、僕は軍人になりました……軍人としては優しすぎると言われましたが……なんとか訓練を乗り越えて……地獄を生き延びて……今、此処に居ます……」
祐輔はそう言って、明日奈を椅子に座らせ、近くに停まっている一台の車に近づいた
その車は、屋台だ
桜公園名物、チョコバナナの屋台車
祐輔は、手早く日本購入
勿論だが、チョコは贅沢品なので、値段はそれなりにする
祐輔はピンク色の方を、明日奈に手渡し
「初音島でしか食べられない、桜風味のチョコバナナです」
と教えた
確かに、桜風味のチョコバナナなど、初音島にしかないだろう
「ありがとう、祐輔君」
「いえ」
明日奈が感謝の言葉を言うと、祐輔は短く返答してから明日奈の隣に座った
そして、二人は一緒にチョコバナナを食べ始めた
すると明日奈が
「ねえ、祐輔君……そっち一口頂戴」
と祐輔のチョコバナナを指差した
祐輔のは、至って普通のチョコバナナだ
「どうぞ」
「ありがとう」
祐輔が差し出すと、明日奈は一口食べた
そして、飲み込むと
「はい」
と代わりにと言うように、桜風味のチョコバナナを差し出した
それを見た祐輔は、少ししてから
「貰います」
と一言断ってから、一口食べた
そこから二人は、食べ終わるまで静かだった
ただ静かに、桜吹雪を見ながらチョコバナナを食べ続けたのだった
どういう話を書いてほしいですか
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戦闘多め
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