『アサルト1、帰還します!』
「被弾してるから、バランスを失う可能性がある! 非常班、待機!!」
里香がそう声を張り上げると、赤いヘルメットを被った数名の班が少し離れた場所にて準備を始めた。
その数秒後、跳躍ユニットの轟音と共に祐輔機が着陸した。
バランスを失うことなく着陸したのを見て、里香は
「機体を収容!」
とガントリー操作妖精に命令した。
それを受けたガントリークレーン操作妖精は、ガントリークレーンを操り、祐輔機を収容開始した。
その間に、里香は
「……損傷らしい損傷は、コクピットブロック位ね……手は無事……」
と祐輔機の損傷を確認した。
武装を失うのは、戦闘では仕方ないことである。それを除けば、被弾したのに奇跡的損傷に済んでいる。
そうこうしている間に、祐輔機の固定が完了。コクピットハッチが開き
「リズさん……修理を……」
ヨロヨロと、祐輔が出てきた。
そんな祐輔に、里香は駆け寄り
「あんたは、まず休みなさい! 衛生兵!!」
祐輔に肩を貸しながら、衛生兵を呼んだ。
呼ばれた衛生兵は、祐輔をゆっくりとストレッチャーに寝かせると、左目にアイパッチを装着した。
よく見れば、そのアイパッチにはコードが繋がっている。
そのアイパッチは実は、コードでバッテリーと繋がっていて、微弱な特定周波数の電波を出すことによりアナリティカルシステムを停止させるのである。
普段ならば、祐輔の音声入力か脳波操作で機能停止させることが出来るのだが、余計な負担を掛けさせないためだろう。
すると、祐輔が
「リズさん……アレを……用意してください……」
と呟いた。
それを聞いた里香は、一瞬いぶかしんで
「アレって……まさか……」
と、ある武装を思い出した。
技術研究厰戦術機部門第三班、通称キワモノ三班が作った常識はずれの兵器。
「試98式……1500mm
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「はあ……深海共め、数が多すぎだっての……」
と愚痴を溢したのは、補給に戻った弾だった。
休憩室には他に、直哉と一夏の姿もある。しかし、直哉は端末で戦況の確認、一夏は頭にタオルを乗せて、何やらぶつぶつと呟いている。
そんな時、休憩室のインターホンが鳴り
「はい、神崎です」
と直哉が出た。少しすると
「弾、お呼びだ」
と直哉が呼んだ。
呼ばれた弾は、不思議そうに首を傾げた。
それから、数分後
「……え、なにこれ……」
それを見た弾は、呆然とした。
なにせ、弾の目の前にあるのは、戦術機に匹敵する長さを誇る巨大砲だったからだ。
「試製98式1500mmOTH砲……キワモノ三班が作った、イカれ兵器です」
弾にそう説明したのは、弾の恋人にして最近転属してきて里香の補佐役になった整備士の
「せ、1500mm!?」
予想外過ぎる大口径に、弾は驚愕した。
1500mm、つまりは150cmという余りにもデタラメなサイズだったからだ。
それならば、巨大さにも納得がいく。
「はい……最大射程は優に50kmを超え、更に衛星と戦術データリンクを繋ぐことにより二回まで砲弾内の炸薬で軌道修正することが出来ます……」
「50kmって……」
砲弾のサイズだけでなく、射程までデタラメだった。
虚がキワモノ三班と呼んだ理由に、弾も納得した。
確かに、余りにもキワモノな代物だ。
「まさか……俺が?」
「はい……提督のご使命です」
弾の問い掛けに、虚はそう答えた。
すると、弾は
「しかし、祐輔さんがやった方がでいいのでは……」
「その提督は、戦線に暫く復帰出来ません……ですから、弾君を指名したんです」
虚のその言葉に、弾は目を見開いた。
祐輔が暫く復帰出来ず。鎮守府だけでなく帝国軍でも有数の衛士たる祐輔が、戦線復帰出来ない事態になったというのが、予想していなかったようだ。
「……指示内容は?」
という弾の言葉に、虚は静かに
「試98式で、ナインテイルを砲撃します」
と告げた。
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