『HQより各員に通達! ナインテイル撃沈作戦を行います!』
「あの異形を……?」
大淀の通信を聞いた唯依は、疑問の声を漏らした。
ナインテイルははっきり言って、唯依が知る深海種の中でも異彩を放つ存在感だった。
名前の由来となっている、最多の9本の尻尾。そして、鬼気迫る表情。何よりも、明日奈と瓜二つの顔。
「……だが、やるしかないか……」
唯依がそう呟いた直後に、戦術データリンクを使って作戦内容が通達された。
ある場所にナインテイルを誘導し、そこに大口径砲による砲撃を加える。
単純化すれば、それだった。
しかし、その場所が問題だった。
「……正気か!? 鎮守府の敷地内だと!?」
端ではあるが、間違いなく敷地内だった。
そこに、ナインテイルを誘導し、撃沈する。
「しかし、命令ならば……やるしかないか!?」
唯依は軍人として、祐輔の命令に従うと決めた。
しかし失敗すれば、大惨事になるだろう。
「そもそも、大本営は何をしている……!」
そして唯依は、大本営の艦隊の到着の遅さに苛ついた。
既に、連絡してから数時間が経つ。空挺降下をすれば、既に到着出来る時間が経過していた。
その頃、地下司令部
「待ってください……F666!?」
『そうだ……我々大本営参謀本部は、ナインテイルを含めた全深海艦隊撃滅を決定した』
「それならば、本土の戦力を投入していただければ、撃滅は可能です!!」
大本営参謀本部が通達してきた内容に、大淀が必死になって反論していた。
なにせ、まだ戦線は保っているからだ。
『何を言う……こちらの観測によれば、既にそちらの戦力は半壊している……戦力を送ろうが、最早間に合わんのは明白だ』
「待ってください! こちらの戦力で、まだ誰も離脱はしていません! 何かの間違いです!!」
大淀はそう反論するが、画面向こうの参謀長は鼻で笑い
『とにかく、既に決定されたことだ……既に、そのための発射態勢も開始している……ではな』
「待ってください!!」
大淀が引き留めるが、無情に通信は切られた。
そして大淀は、ギリリと歯を鳴らして
「F666……すぐに、祐輔さんに伝えなければ!」
と言って、司令部から走り出した。
最悪の事態を、回避するために。
「大淀、今何て言った!?」
『ですから、F666が発令されました! 戦術データリンクを介して、発動までの予測時間を表示します!!』
里香が問い掛けると、大淀がそう言って、視界に時間が表示された。
「ふっざけんなっての……!? 後二時間も無いじゃない!」
その時間を見て、里香は悪態を吐いた。
そして
「あれの発動には、確か……レーザー測距が必要だったわね……だったら、ある一定距離以内に接近する必要があるわ……」
と思い出した。
そのために、パソコンのキーボードを叩いた。画面に表示させたのは、レーダーサイトの画面。
「……見つけた! IFFに反応しない機体!!」
里香が見ていたのは、対空レーダー。それに、策敵範囲内に敵の赤でもなく、味方を示す青でもない色。黄色が一つだけ表示されていた。
「私の権限で、VLS起動……ターゲット、ロック……発射!!」
里香がエンターキーを押してから、約一分後、その黄色の光点は消えた。しかし、里香は
「まだ安心出来ない! 急いで、ナインテイルと深海艦隊を撃滅しないといけない! でないと……
この初音島に……気化爆弾が投下される!!!」
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