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「……ナインテイルの誘導は、上手くいっているみたいですが……」
戦況マップを見ていた大淀は、何とか焦りそうなのを堪えていた。予想されるF666の発令まで、大した時間が無い。
それまでに、ナインテイルを無力化しないといけない。
「……問題は、準備が間に合うかどうかです」
と大淀が見たのは、最終調整に入った弾機だった。
今弾機は、1500mmOTH砲を撃つための最終調整段階に入っていた。
OTH砲は普通の装備と、あまりにもかけ離れた装備なために専用の調整をする必要があるのだ。
里香も優秀な技師ではあるが、万能ではないのだ。
だが、その時だった。
「つっ!? ナインテイルの侵攻速度が上がった!?」
『すまない! 突破された!!』
長門と武蔵がナインテイルの突破を許したらしく、ナインテイルの侵攻速度が一気に上がったようだ。
「いけない! なんとか足止めを!!」
『そうしたいが、水雷戦隊を突破してきた敵が!?』
『鬱陶しい!!』
長門と武蔵にナインテイルの足止めをしてもらおうとしたが、どうやら深海艦隊の流入速度が上がったらしく、出来ないらしい。
それに歯噛みしていると、崖上から高密度の砲撃の嵐がナインテイルに殺到した。
「海神隊!? 緊急展開して!?」
本来は、対空砲撃役の海神隊。恐らく、祐輔が事前に展開しておいたのか、濃密な弾幕をナインテイルに放っている。
しかし、ナインテイルの足は止まらない。僅かに速度は落ちたものの、徐々に近づいてくる。
やはり、戦艦級となると36mmと120mmでは大したダメージにはならないようだ。
「金剛さん、止められませんか!?」
『ダメ! 支援砲撃を止めたら、突破されるネ!!』
大淀の言葉に、水雷戦隊の後方支援をしていた金剛から、悔しそうな言葉が返された。
金剛としても、やはり止めたいようだ。
「第三防衛ライン……突破された……!!」
そんな時、とうとうナインテイルが第三防衛ラインを突破。そして、鎮守府裏手の砂浜にナインテイルは着陸した。
着陸するとナインテイルは、一度周囲を見回してから咆哮を上げた。
戦力の展開が、間に合わない。大淀がそう思っていると
『大淀さん! 祐輔さんが、強化外骨格で!!』
「……え?」
電の報告に大淀が固まった直後、ナインテイルに一機の外骨格が斧を振り下ろした。
その外骨格に記されている番号は、001。祐輔用の外骨格である。
「祐輔さん!?」
『大丈夫、もう動けるようになった……目は使ってない』
確かに、祐輔の声は普段となんら変わらない。
しかし、鎮守府の最高指揮官自らがナインテイルと刃を交えるというのは、如何なものか。
『戦力が足りないのに、寝てられないよ……それに、ナインテイルがここに来た時点で、当初の作戦は破綻してる……だったら、1500mmはあの敵艦隊の砲撃による撃滅に変更……ナインテイルは、陸戦戦力で撃滅を狙う!』
「つっ……それしか、ありませんが!?」
祐輔の指示に、大淀は納得するしかなかった。
当初の計画では、ナインテイルを第三演習海域に誘導して、1500mm砲で砲撃するという作戦だった。
しかし、ナインテイルは鎮守府裏手の砂浜に来てしまった。
こうなったら、1500mm砲によるナインテイルの撃滅は出来ない。だから、1500mmは侵攻してくる深海艦隊の撃滅に回すしか無いのだ。
しかし、問題点は今鎮守府に残っている陸戦戦力でナインテイルで倒せるかということ。
だが、仮にも最前線で試作武装も多数運用する鎮守府だ。
対戦艦用の武装もあるのだ。
『無理は承知してるけど、やらないとこっちがヤられる!!』
祐輔はそう言って、至近距離で80mm砲をナインテイルに撃った。
しかしナインテイルは、その砲撃を耐えた。だが、80mmを耐えることなど予想済み。
祐輔は、強化外骨格の跳躍ユニットを噴かして、ナインテイルの周囲を回った。
よく見れば、ナインテイルの尻尾を基点にして太いワイヤーが絡まっている。
ナインテイルはそのワイヤーを切ろうと、力を入れようとした。だが、その前に祐輔はナインテイルから離れて
『爆導索、起爆!!』
と音声入力で、絡ませたワイヤー。爆導索を起爆させた。
試製97式爆導索。1997年に起きた大侵攻に伴う陸戦の多発化の時期に開発された試作武装で、今祐輔がしたように、深海悽艦に巻き付けて使用する武装である。
確かに、巻き付けて起爆すれば、その威力は絶大で戦艦ですら倒すことが出来る。
しかし一部の艦以外は近づくのが困難で、今一効果は証明出来ていなかった。
それの運用も、回されていたのだ。
『どうだ……』
起爆した地点では、激しい土煙が舞っているので祐輔からはよく見えない。
だが、次の瞬間
『くあっ!?』
祐輔に、尻尾の一本が迫ってきた。
その一撃を祐輔は、後退することで回避した。その時、ようやく土煙が晴れて、ナインテイルの姿が見えた。
ナインテイルの姿はボロボロで、噛み付いてきた一本以外は大ダメージを負っている。
『ナインテイルに損傷確認……尻尾も、千切れ掛けてる……』
と祐輔が報告した直後。
『祐輔……なの……?』
と明日奈に似た声音が聞こえた。
『……まさか……』
『なんで……祐輔が……陸軍の、強化外骨格を……待って……私は……何を……?』
ナインテイル
否、榊原百合は、困惑した声を漏らした。
『姉さん……意識が……?』
『ここは、どこ……あぐっ!?』
百合は苦悶の声を漏らしながら、頭を抱えた。
気付けば、千切れ掛けていた尻尾がくっつき始めている。
『あの尻尾が、何かあるのか……!?』
『アアアアアァァァァァ!?』
祐輔が斧を構えた直後、ナインテイルは爆発的な加速で祐輔に迫ったのだった。
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