『……こえるか……聞こえたら、応答せよ! 初音島鎮守府!』
「こちら、第一初音島鎮守府の大淀です!」
突如聞こえた通信に、大淀はすがる気持ちで返答した。
切れないで、と。
『この距離で、ようやくか……』
その言葉を聞いた大淀は、レーダーを見た。
8時の方向、距離1500の位置に味方を示す青い
「いつの間に……」
『どうやら、激戦のようだな……ナインテイルはどうした?』
武仁の問い掛けに、大淀は
「迎撃ラインを突破され、敷地内に入られました。今は榊原少将が直接近接戦闘をやっている筈です」
と教えた。
『……ナインテイルと、近接戦闘だと?』
「はい……それしか、方法は無かったかと……」
『……戦況は分かるか?』
「該当区域には、カメラの類は有りません。少し前から、通信も途絶。詳細の把握は出来ていません」
大淀のその報告に、武仁は暫く黙った。
大淀としては、祐輔に生きていてほしいと思っている。
だが、いくら強化外骨格を纏っていると言っても人間が戦艦級に勝つ確率は1%以下とされている。
その理由の大半が、装甲の堅さだ。
『……仕方あるまい。暫くは、ワシが全体の指揮を執る。よいな?』
「はっ! 異論はありません!!」
武仁の言葉に、大淀は敬礼しながら答えた。
『ありがとう……さて、あのじゃじゃ馬からの報告では戦艦悽姫が居ると分かっている……ワシの武藏がそれを対処。ワシの長門はその補佐と思われるル級Fを撃沈させ、赤城、飛龍、翔鶴、瑞鶴は飛行隊発艦。敵空母艦隊と補給艦隊を殲滅せよ』
『了解!!』
武仁の指揮に従い、まず武仁艦隊が動いた。
その動きはまさに、最精鋭と呼ばれるだけはある。
『次に、初音島艦隊はそれぞれ残弾と燃料の量を報告……』
武仁のその言葉に、祐輔艦隊とアリア艦隊は次々と報告をした。
そして、武仁は
『第一第二初音島鎮守艦隊は、双方共に補給に後退。戦術機部隊はどうか?』
と初音島艦隊に後退するように告げ、続けて戦術機部隊を呼んだ。
『こちらアサルト2! 推進材と弾薬は平均6割有ります!』
代表してか、明日奈が報告した。
元々の上官だからか、接し方は心得ているのだ。
『……戦術機部隊は、そのまま機動攪乱戦法を続行。駆逐艦隊の空からの支援を行え』
『了解!』
少し間を置いてから、戦術機部隊に指示を下した。
少し間が空いたのは、データリンクで確認したからだろう。
『三笠、分かっているとは思うが……』
『ワシは暴れさせてもらうぞ! 三笠刀も手入れしてきたからな!!』
『……そうしろ』
武仁の力ない言葉に、大淀は内心で敬礼した。
三笠が、ロクに指示に従わないだろうことを察しながら。
場面は変わり、最前線
「そら、全主砲……斉射!!」
武仁艦隊の武藏改二は主砲の一斉砲撃と共に、その反動を利用したドリフトで戦艦悽姫の砲撃を回避。更に、海中から飛び出してきた駆逐イ級に対し
「鬱陶しい!!」
という掛け声と共に、拳を繰り出して大破させながら殴り飛ばした。
なおそのイ級は、たまたま吹き飛んだ先に居た三笠によって切り裂かれた。
武藏は殴り飛ばしたイ級を即座に忘れ去り、いまだに無傷に等しい戦艦悽姫を見ながら
「もっとだ……もっと楽しませろ!!」
と獰猛な笑みを浮かべた。
武仁艦隊の武藏改二、現在帝国海軍に所属している武藏の中では最古参の武藏であり、《羅刹武藏》と呼ばれる生粋の戦闘マニアだ。
その証拠に、直撃コースに飛んできた戦艦悽姫の砲弾を
「手緩い!!」
と明後日の方向に弾き飛ばした。そしてその砲弾は、今まさに艦載機を飛ばそうとした空母ヲ級の頭を吹き飛ばした。
「さあ……私を熱くしろぉ!!」
武藏は魂の咆哮を挙げながら、またもや一斉砲撃を敢行。その反動を利用して後退し、戦艦悽姫の砲撃を回避する。
幾多の戦場を潜り抜けた彼女だから、出来る戦闘技法だった。
搭載している主砲の癖を知りつくし、反動の強さすら利用する戦法。
攻防一体の戦法だ。
そんな武藏を、横合いから軽巡ツ級が狙うが
「余所見しとる場合かの!?」
と三笠が、刀でツ級の胴体を両断した。
三笠刀、それは記念艦となっていた戦艦三笠の一部を使って鍛え上げられた刀で、現状それを持つことを許されているのは三人だけ。
一人目は、もちろん本人たる三笠。二人目は、その提督たる武仁。そして三人目は、現政威大将軍たる煌武院悠陽だ。
正しく、帝国を象徴する刀と呼べるだろう。
三笠はその刀を縦横無尽に振り、次々と敵を両断。更には、後方に居た駆逐ロ級に対して主砲の20.3cm砲を見舞い撃沈せしめる。
始祖の二天は決して伊達ではなく、その戦果は全帝国海軍の中でも抜きん出ている。
戦艦悽姫がその二人に標的を絞ったのか、武藏と三笠に攻撃が集中し始める。
だが、忘れてはいけない。武仁艦隊はその二人だけではないのだ。
『第一航空隊、発艦!!』
赤城の声の直後、空を覆い尽くさんばかりの数の艦載機が戦域全体を次々と攻撃開始した。
戦闘機たる烈風改二は圧倒的機動であっという間に制空権を確保。そこを、海面ギリギリを這うように飛んでいた流星改が魚雷を分離しそのまま最高速で離脱。それに合わせるように、景雲改と彗星一二型が上空から急降下爆撃を敢行。
二隊が放った魚雷と爆弾は、一つも外れることなく全て命中。
深海艦隊を、その名前の通りに深海へと叩き落としていく。
たった一個連合艦隊なれど、推参したのは一騎当千の艦娘艦隊。
圧倒的戦果で以て、戦域支配を開始した。
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