「……レーザー通信により、戦術データリンク確立。敵艦隊総数、現在80……当初の数から、7割は削れています」
「……流石は、初音島艦隊か……よくぞ、半分以上削った……」
乗り込んでいた夕張からの報告に、武仁は素直な感想を呟いた。
敵は手練れらしい姫級率いる精鋭艦隊。その動きは、連れてきた武仁の艦隊でも簡単に直撃を与えられないでいた。
「……最近は、前線に出る機会も減ったからな……」
最近の事を思い出して、武仁は自嘲気味に呟いた。
司令長官になってからは、以前よりも武仁艦隊が出撃する機会は激減している。
一応訓練は繰り返し行ってはいるが、やはり実戦から離れてしまったのは大きかったようだ。
「こちらの艦隊の状況は、どうなっておる」
「現在、三笠様率いる第一連合艦隊は戦艦悽姫率いる水上打撃艦隊と交戦中。全艦健在、戦闘継続に支障なし……長門率いる第二連合艦隊は、現在敵空母艦隊と交戦中……そちらも、戦闘継続に支障なし」
武仁からの問い掛けに、夕張は機材を調整しながら報告した。やはり試作機だからか、未だに未調整な部分が多数ある。
今回の戦闘から得たデータで、調整で進むだろう。
試製03式空中管制機、
参謀本部が技術研究厰と協同開発中の初の空中管制機だ。
未だに一部の機能が未熟だが、実戦データから必要なデータを取れるだろう。
「……さて……久方ぶりに、アレをやるぞ」
武仁はそう言いながら、ヘッドセットを装着。
そして、深呼吸してから
「武蔵、方位039、距離2000に全力砲撃。その三秒後に来る砲撃を左に回避。長門、方位012に一斉砲撃から8秒後、左舷の海面に機銃掃射。赤城達は方位066に艦載機発艦後、方位013、距離500の位置に移動」
と詳細な指示を出し始めた。
今武仁は、全員の通信を聞きつつ、モニターに表示されている戦況図を見て、先を予測。そこから最適解を導き出して、各艦娘に指示を出していたのだ。
「三笠……右に飛べ」
『おっと!? おのれ、タ級ごときが、ワシを攻撃するとはなぁ!!』
通信機から聞こえてきた声を聞いて、夕張は苦笑いを浮かべた。多分だが、武仁は三笠が目前戦闘に意識を向けすぎてタ級の存在を忘れたことに気付いて、指摘したのだろう。
そして件のタ級はと言うと、三笠の主砲を受けた後に長門の拳を受けて沈んだ。
『相も変わらぬ見事な予測だな、提督』
「……こちらは、鈍っていなくて幸いだったよ」
長門の賞賛に、武仁は安堵した様子で言葉を返した。
そこに
『こちら大淀、第一と第二初音島鎮守府の艦隊、再出撃します!』
と祐輔艦隊の大淀から報告が来て、モニターに編成が表示された。
来た時と多少編成内容は変わっているが、あらゆる戦況に対応出来るバランスが取れた編成になっている。
「……祐輔の教育の賜物か」
その編成を見た武仁は、思わずそう呟いた。
そして指揮を開始するが、ある時
『この指揮……祐輔とそっくりデース……』
と金剛の呟きが聞こえた。それを聞いた武仁は、思わず笑みを溢して
「これも、血の成せる技か……まあいい……指揮を続行する。優先撃沈目標、戦艦悽姫」
『了解!』
武仁の指示に、全艦隊から返答がされた。
そして武仁は、夕張に
「榊原少将との通信は、どうなっているか」
「……ダメです。通信、戦術データリンク共に一切繋がりません。それと、鎮守府敷地内に入ったと報告があった
夕張の報告を聞いた武仁は、最悪の可能性を考えた。
武仁の想定した最悪は、ナインテイルを撃破出来ず、戦死だ。
その一つ手前が、ナインテイルと相討ちになったという形である。
(頼む……生きていてくれ……)
と武仁が祈った時
『こちら、第一初音島鎮守府整備班班長の篠崎里香技術少佐です! 中破していた強化外骨格内から、榊原少将を保護しました! 繰り返します! 榊原少将を保護しました!』
と里香から、報告が入った。
「榊原少将の容態はどうか?」
『左眉間から出血を確認。更に、左足に強化外骨格の装甲の一部が刺さっていますが、命に別状は無さそうです! これより、救護班に引き渡します!』
里香からの詳細な報告を聞いて、武仁は深々と息を吐いた。
(あいつも……悪運が強いのかもしれん……)
武仁はそう思うと、もう1つの懸念事項を、里香に問い掛けることにした。
即ち、ナインテイルだ。
「それで、ナインテイルはどうなっている?」
『それなんですが……映像を回します』
里香のその言葉を聞いた夕張は、武仁の前のモニターに映像を表示させた。
そして武仁は、その映像を見て思わず
「これは……」
と呟いた。
中破した強化外骨格の傍らには、切断された尻尾があり、そのすぐ近くに意識を失った様子で倒れている若い女性が居る。
皮膚の色は深海悽艦を思わせる白だが、足が通常のレ級の蹄状から、人間とまったく同じ五指の足になっている。
『どうやら、意識を失っているだけかと思われます……指示を』
確かに里香では判断が難しいだろう。
条件は不明だが、時おり起こるドロップとも違う現象に、武仁も少なからず困惑していた。
だが、少し間を置いてから
「……確保しろ……尻尾は、その場で放置しろ……」
と指示を下した。
『了解、確保します』
里香からの返答を聞いた武仁は、一度そこで通信を切った。そして、胸元から一つの懐中時計を取り出すと、蓋を開いた。
ガラスはひび割れ、長針と短針はある時間を指して止まっている。
そして、蓋の裏側には一枚の写真が貼ってある。
幸せそうな、四人家族が写った一枚の写真が。
武仁は、その写真の表面を撫でながら
「すまない、
と呟いた。
今の武仁からは、何時もの気迫は一切感じられず、普段の彼しか知らない者が見ても、気付かないかもしれない程に様変わりしていた。
そして武仁は、懐中時計を懐に仕舞い込み
「各員、状況報告! 最後まで、気を抜くな!!」
と激を飛ばした。
どういう話を書いてほしいですか
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