※この作品はR-18です。

艦隊これくしょん・絆の旋律   作:京勇樹

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予想以上に長くなった
最近の俺にしては珍しい、5千字オーバー


来たのは

「はぁ……」

 

と溜め息を吐いたのは、船室に居た一人の女性仕官だった

腰辺りまで伸ばした栗色の髪に、榛色の瞳

そして、人目を引く美貌とスタイルの女性仕官だった

彼女の名前は、結城明日奈(ゆうきあすな)

今日、初音島鎮守府に着任する女性だった

彼女が溜め息を吐くと、海鳴鎮守府から護衛として就いてきた男性仕官

神代裕也が

 

「どうしました、結城少佐?」

 

と問い掛けた

すると明日奈は

 

「ああ、いえ。少し疲れただけですから。気になさらず、神代少尉」

 

と言った

すると、裕也は

 

「結城少佐は、京都から直行してきましたからね。仕方ないかと」

 

と言った

明日奈は初音島に行く前に、一度実家がある京都に行っていた

彼女の家の結城家は、古くから続く名家である

そんな結城家は、近衛に名を連ねる家柄である

色は、山吹色

しかし彼女が所属しているのは、海軍だ

なぜ海軍に所属しているのか

それは、今は割愛する

その時だった

裕也が右耳に手を当てて

 

「わかった」

 

と言った

すると、視線を明日奈に向けて

 

「少佐。後方から戦術機中隊が近付いてきます。念のために、バーを掴んでください」

 

と言いながら、明日奈に近付いた

 

「わかりました。その戦術機中隊の所属はわかりますか?」

 

「は。近衛の、ホワイトファング中隊と聞いてます」

 

明日奈は部隊名を聞いて、眉をひそめた

ホワイトファング中隊の名前は、明日奈も知っていたからだ

帝国軍技術研究厰に籍を置いている、近衛戦術機部隊だと

なぜ、そのホワイトファング中隊が初音島に来ているのか

明日奈が黙考していると、裕也が

 

「来ます、衝撃に備えてください」

 

と言って、明日奈の前で足を踏ん張った

その直後、船の真上を次々と戦術機がフライパスしていった

だが明日奈は、船室の天窓から見えた機体を見て驚いた

 

「武御雷じゃ、ない?」

 

通り過ぎた戦術機部隊は、近衛軍専用機体の武御雷ではなかったのだ

その機影は、陸軍が配備している機体

不知火に酷似していた

明日奈が黙考している間に、船は島に近付いていた

そして十数分後、明日奈が乗っていた船は軍港に停泊

明日奈は、船から降りた

すると、裕也が

 

「少佐、あちらに案内係の方が」

 

と言って、ある方向を指し示した

その方向に居たのは、二人の艦娘だった

改造された巫女服を着て、腰に刀を差した姉妹

伊勢と日向だ

 

「お待ちしてました。私達が案内係の伊勢と」

 

「日向だ」

 

二人が敬礼すると、明日奈も敬礼しながら

 

「出迎えご苦労様です。私が結城明日奈少佐です」

 

と名乗った

すると、伊勢が

 

「神代裕也少尉も、お疲れさまでした」

 

と裕也に労いの言葉を言った

すると裕也は、返礼しながら

 

「自分は、任務を果たしたまでです」

 

と言った

すると、日向が

 

「兄君に、今度剣の相手を。と言ってくれ」

 

と言った

それを聞いて、裕也は

 

「は、伝えておきます」

 

と返答した

すると、海の方から

 

「少尉! 間もなく燃料の補給が完了するそうでーす!」

 

と元気な声が聞こえた

そちらの方に居たのは、長良型一番艦の長良

そして、その艦隊の皐月、睦月、如月、衣笠、秋月が居た

彼女達が、護衛艦隊である

 

「了解した! 完了次第、海鳴鎮守府に帰投するぞ!」

 

「了解!」

 

裕也の言葉を聞いて、長良は敬礼した

すると裕也は、振り向いて

 

「では、これにて」

 

と言うと、船に戻っていった

三人はそれを見送ると

 

「それじゃあ、鎮守府に案内するね」

 

と伊勢が言った

すると明日奈が

 

「あ、荷物」

 

と言いながら、自身の後ろにある段ボールの山を見た

すると伊勢が

 

「あ、それくらいなら大丈夫」

 

と言って、日向と二人で半分ずつ持ち上げた

それを見て、明日奈は

 

「流石は、戦艦娘」

 

と呟いた

そして十数分後、三人は執務室前に着いた

 

「一応、荷物はここに置いておくわよ?」

 

「あ、はい。ありがとうございます」

 

伊勢の言葉を聞いて、明日奈は頭を下げた

すると、日向が

 

「提督。もう一人の方を連れてきたぞ」

 

と言いながら、ノックした

すると中から

 

『あ、はい。どうぞ』

 

と入室を促す声が聞こえた

それを聞いて、明日奈は

 

(あれ、聞き覚えがある声が……)

 

と内心で首を傾げた

すると、日向がドアを開けて

 

「どうぞ」

 

と明日奈に言った

それを聞いた明日奈は、意識を切り替えて入室した

明日奈が入室すると、中には既に一人の女性士官が居た

長い黒髪に、山吹色の特徴的な近衛軍の制服を着た女性士官だった

その女性士官を、明日奈は知っていた

その女性士官の名前は、篁唯依大尉

現篁家当主を勤める女性だ

過去に何回か、京都で会ったことがある

明日奈は唯依と目で軽く挨拶すると、姿勢を正して

 

「本日付けで、この鎮守府の所属となりました。結城明日奈少佐です。よろしくお願いいたします」

 

と敬礼しながら名乗った

すると、提督

祐輔は軽く驚いていたが、すぐに表情を改めて

 

「ようこそ、初音島第一鎮守府へ。僕が、当鎮守府の提督の榊原祐輔大佐です」

 

と名乗りながら、敬礼した

この時明日奈は、祐輔の顔と声を聞いて、思い出した

 

「貴方は確か、沢渡島撤退戦の時の」

 

と明日奈が言うと、祐輔はしばらく目を上に向けて黙考

そして思い出したらしく、指を鳴らして

 

「貴女は、あの時のオペレーターさんですね?」

 

と明日奈に問い掛けた

すると明日奈は頷き

 

「は。久方ぶりです」

 

と言った

沢渡島撤退戦

それは、今から約一年と少し前に行われた戦闘だった

その撤退戦は、初音島と同じ防衛の前線を担っていた島からの撤退戦だった

その島は、対深海戦争が開戦してから長い間初音島と共に防衛の最前衛を担っていたのだが、度重なる深海悽艦の波状攻撃で大打撃を受けて、防衛戦闘が不可能となったのだ

それにより、その島に残っていた島民と負傷した軍人達を本土に移送する撤退戦が行われたのだ

結果を言えば、民間人と負傷軍人に多数の死者が出たもののなんとか成功した作戦だった

その作戦に、祐輔は艦隊を率い、更には技術研究厰の戦術機部隊と共に出撃

辛くも生還したのだ

明日奈はその作戦時には、大本営から参加していたのだ

すると、祐輔が

 

「しかし、転属ですか……僕の方には、監査と知らされたんですが」

 

と言いながら首を傾げた

すると、明日奈が脇に抱えていたファイルから一枚の書類を取り出して

 

「ですが、私の書類には転属と」

 

と言いながら、祐輔に手渡した

その書類を、祐輔は見た

確かに、転属となっている

 

「どうなってるんだ?」

 

と祐輔が首を傾げた時、ドアがノックされて

 

『失礼します』

 

と声が聞こえた

祐輔が入室を促すと、入ってきたのは大淀だった

大淀は急いだ様子で、祐輔に近寄り

 

「今しがた、これが」

 

と祐輔に一枚の書類を手渡した

その書類には

 

『こちらの手違いにより、本来転属と知らせる筈が、監査と知らせてしまった。申し訳ない』

 

と書かれていた

そして祐輔は、書類の一番したに書かれてる文に目を向けた

そこには小さく

 

『早う、ワシに孫の顔を見せんかい』

 

と書かれてあった

それを見た祐輔は、前の二人に気付かれないように書類を持っていた左手に力を入れた

そして内心で

 

(要らん茶目っ気を出しやがって。霧島さんにリークしてやる)

 

と誓い、明日奈に視線を向けた

 

「どうやら、大本営の手違いのようですね。結城少佐の方が正しいようです」

 

と言った

すると、明日奈は安堵した表情で溜め息を吐いた

それを見た祐輔は、二人顔を向けて

 

「では、貴官達を迎え入れます。ようこそ、初音島第一鎮守府へ」

 

と言った

それを聞いた二人は、敬礼した

すると祐輔は、明日奈に顔を向けて

 

「ただし、結城少佐はお部屋の用意が出来てないので……」

 

と言った

そして、伊勢と日向に視線を向けて

 

「伊勢さん、日向さん、すいませんが、結城少佐の部屋の準備を手伝ってください」

 

と言った

すると二人は

 

「ん、了解」

 

「わかった」

 

と返答した

すると祐輔が

 

「後で、皆さんの部屋にこの鎮守府で過ごす上での注意書が書かれた冊子を配付させます。それと、出す書類が有りましたら、後程持ってきてください」

 

と言った

その後、四人が廊下に出ると、廊下には11人の女性達が居た

明日奈は、その女性達が全員、胸元にあるウィングマークから衞士だと気付いた

ホワイトファング中隊の衞士だと

 

「大尉、私達の部屋の準備は終わりました」

 

「わかった」

 

部下の報告を聞いて、唯依は頷いた

すると、一人の部下

雨宮薫(あまみやかおる)中尉が明日奈に

 

「貴女はもしや、結城明日奈さんですか?」

 

と問い掛けた

すると明日奈は、頷き

 

「そうです。帝国海軍所属、結城明日奈少佐です」

 

と敬礼した

それを聞いて、雨宮中尉は片眉を上げて

 

「貴女が、海軍所属?」

 

と首を傾げた

どうやら、明日奈が海軍に居るのが不思議らしい

すると唯依が

 

「詮索するな。訳が有るのだろう」

 

と言った

それを聞いて、雨宮中尉は

 

「は、失礼しました」

 

と明日奈に謝罪した

すると明日奈は、返礼しながら

 

「いえ、構いません」

 

と答えた

その後明日奈は、伊勢、日向の二人を連れて士官寮に向かった

士官寮は大きいが、部屋は大分空いているようだ

明日奈は一階の部屋の一つに荷物を運んでもらい、更には伊勢と日向に頼んで、家具の位置を変えてもらった

そして、数時間後

 

「しまった……一枚、書類を忘れてた」

 

明日奈は少し焦った様子で、執務棟の廊下を歩いていた

その理由は、出し忘れていた書類があったからだ

それは、戦術機の使用に関する書類だった

明日奈は海軍所属だが、高い戦術機適性も有していた

今までは、海軍が保有していた陸軍提供の不知火を使っていた

そして当然ながら、その不知火は持ってこれない

だから、この鎮守府に配備されている機体を申請する必要があった

その書類の提出を、すっかり忘れていたのだ

それを思い出した明日奈は、その書類片手に執務室に向かっていた

 

「確か、まだ稼業時間の筈……」

 

それは、後で一人の駆逐艦娘が持ってきた注意書冊子からだ

初音島第一鎮守府の稼業時間は、朝の6時から夜の9時までとなっていた

現在時刻は、8時半

少しギリギリだった

だからか、執務棟は大分静かになっていた

時々廊下をすれ違うのは、宿直係らしい数人の艦娘達

全員、明日奈とすれ違う度に明るく挨拶してくる

それだけで、この鎮守府が良い鎮守府だと明日奈は思った

世の中には、艦娘達に酷い鎮守府

通称、ブラック鎮守府も存在することを明日奈は知っていた

明日奈も度々、その検挙に同行したことがある

そこで見た艦娘達は軒並み、眼に光が無かった

それはまさしく、絶望の眼だった

それに対して、初音島第一鎮守府の艦娘達は皆明るい

それを知った明日奈は、祐輔に対する評価を上げた

その時、執務室のドアが見えた

どうやら、薄く開いてるらしい

床に、薄く明かりが見えている

明日奈が近づいた時

 

「まさか、唯依が来るなんてね。思わなかったよ」

 

「巌谷の叔父様が行ってこいとな。祐輔が困ってるみたいだから、手伝って来いとな」

 

と、中から会話が聞こえた

その親しさから、昔からの知り合いなのかな

と明日奈は思った

その時

 

「彼女を見て、驚いたんじゃないのか?」

 

と唯依が言った

すると、祐輔が

 

「そう、だね……姉さんに、似てたしね」

 

と祐輔が、少し辛そうに言った

そして、続けて

 

「もう、10年も経つのにね……未だに、夢に見るんだ。目の前で、助けに来た姉さんや、父さんや母さんが吹き飛ぶところを」

 

と言った

それを聞いていた明日奈は、入ろうか迷った

 

(多分、タイミング悪いよね……でも、これも出さないと)

 

と

その時、明日奈の背後に重巡洋艦娘

古鷹が現れて

 

「結城少佐、どうしました?」

 

と声を掛けた

そして

 

「祐輔さん、篁中尉。ドアの前に、結城少佐が居ましたよ」

 

と言いながら、ノックした

すると

 

「あ、どうぞ」

 

と入室を促された

明日奈は覚悟を決めて

 

「榊原大佐、書類を持ってきました」

 

と言いながら、入った

祐輔は執務机で執務していたが、唯依は立っていた

唯依の手には、コーヒーがあった

おそらく、コーヒー擬きだろう

今のご時世、嗜好品は高級品である

あるのは、大本営か軍本部

もしくは、天皇家か一部の資産家位である

そして明日奈は、書類を出してから

 

「あの、大佐……」

 

と祐輔に視線を向けた

すると祐輔が

 

「あ、呼び捨てでいいですよ? 結城少佐のほうが年上ですし」

 

と言った

確かに、祐輔が19に対して、明日奈は20だ

すると、明日奈は

 

「冊子は見ました。私は、祐輔君と呼びます」

 

と言った

郷に入れば郷に従え

明日奈はそれを実施したようだ

 

「では僕は」

 

「明日奈でいいわ。結城だと、名前と間違える人が出るかもしれないし」

 

祐輔の言葉に被せるように、明日奈はそう言った

すると祐輔は、少し驚いて

 

「分かりました。明日奈さん」

 

と言いながら、微笑んだ

そして祐輔は

 

「あ、書類はその上に置いてください」

 

と、書類の山を指差した

その書類は、高さ50cmはある

 

「その山は?」

 

「明日朝一で送る書類です」

 

明日奈の問い掛けに、祐輔は即答した

その量に、明日奈は固まった

そして、嘗ての上官が来る前に言っていた言葉を思い出した

 

『次の行き先だが、相当忙しいらしい。手伝ってやってくれ』

 

と言われたのである

 

(確か、試験部隊も兼ねてるんだったわね……それでかな?)

 

はっきり言えば、書類の量が尋常ではない

 

「あ、明日奈さんは休んでいいですよ。来たばかりなんですし」

 

祐輔はそう言うが、どう見ても稼業時間内に終わる量ではない

 

「でも、その量は……」

 

「あ、慣れてるんで、大丈夫です」

 

明日奈の問い掛けに、祐輔はそう言った

すると、ドアがノックされて

 

「祐輔さん、お夜食持ってきました」

 

と吹雪が入ってきた

その手には、おにぎりが乗ったお皿があった

 

「あ、ありがとう。そこの机に置いといて」

 

祐輔はそう言うと、また書類捌きに戻った

すると吹雪が

 

「祐輔さん……また12時ですか?」

 

と呆れた様子で、祐輔に問い掛けた

すると祐輔は、書類の量を見て

 

「これなら、11時くらいかな?」

 

と首を傾げた

そこから明日奈は、祐輔が稼業時間を何時もオーバーしてることに気づいた

すると唯依が

 

「相変わらずか……少しは変わってるかと思ってたんだが」

 

と首を振っていた

その話ぶりから、昔からだと分かった

すると明日奈は

 

「手伝います」

 

と言った

 

「へ? でも」

 

「手伝います」

 

明日奈は笑顔でそう言った

笑顔なのだが、眼が笑っていない

 

「いいですね?」

 

「あ、はい」

 

迫力に押されて、祐輔は頷いた

そうして明日奈は、祐輔の書類を手伝い始めた

こうしてまた、新しい仲間が増えたのだった

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