「内部犯……だと?」
「はっ……幾つものサーバーを経由していたので特定は出来ませんでしたが、間違いなく軍内部の犯行です」
帝国技術研究廠電子部門責任者、茅場昌彦技術大佐と副責任者、桐ケ谷和人技術少佐の報告を聞いて、武仁は両手を組んだ。
確かに軍内部は様々な派閥が入り乱れており、一枚岩とは言えない状況にある。
血筋主義にタカ派、穏健派。大筋はこの三つだが、細かいのを挙げたらキリが無い。
「……捜査の続行を。何か進捗があれば、逐次報告を」
「はっ」
「わかりました」
武仁の指示を受けて、二人は退室。それを見送った武仁は、近くに居た陽炎に
「夕張と青葉を呼んできてくれ」
と頼んだ。
その頃、ある場所にて
「何故だ! 何故僕の作戦が上手くいかない! 僕の作戦は、完璧だった筈だ!」
と一人の男が荒れていた。
その男は物に当たり散らしながら、声を荒げていた。
「データを書き換えて、通信プロトコルを変えて通信を出来なくした! なのに、何故だ!? 何故!!」
一頻り暴れ終わった男は息を荒げながら、椅子にドッカリと腰掛けた。そして、高級嗜好品のコーヒーを一気に飲み干して
「くそっ……手こずらせやがって……凡人のくせに……未来の王を手こずらせて……!」
と苛立ちを隠しもせずに、マグカップを机に叩き付けた。
「こうなったら、もう手段は選ぶものか……凡人のくせに僕を手こずらせた罪を償わせてやる……極刑だ!」
男はそう言って、パソコンに向き合った。
再び場所は変わり、初音島鎮守府。
ナインテイルの侵攻から、約二週間が経とうとしていた。その日の早朝
「っは……はぁ……はぁ……」
明日奈は、ベッドからその身を跳ね起こした。
「……嫌な……夢……」
跳ね起きた理由は、嫌な夢を見たからである。
状況的には、有り得ないと言える明日奈と祐輔が敵対していて、その背後に誰か立っていた。
「誰かは分からないけど……正夢にする訳にはいかない……」
明日奈はそう呟き、体にこびりついていた冷や汗を流す為に浴室に向かった。
そして浴室から出た時、電話が鳴り
「はい、明日奈です」
『明日奈さん! 百合さんが目覚めました!』
電から、その報告がもたらされた。
そして、十数分後。明日奈の姿は医務室にあった。
「では、兵籍番号と所属。官姓名を」
「兵籍番号、Fー1873562896。小間鎮守府所属、榊原百合医務軍曹です」
羽黒の問い掛けに、百合は淀みなく答えた。
そのやり取りを、祐輔と明日奈はカーテンを間に挟んで聞いていた。
『どう、祐輔君?』
『……声は、間違いなく姉さんです……兵籍番号も、当たってます……』
今しがた二人は、手話で会話していた。もしもを考えてである。
百合も軍人として鍛えられてるから、恐らくは祐輔と明日奈の気配には気づいているだろうが、誰かまでは分かっていない筈である。
「……今は、何年何月ですか?」
「……2003年、10月になります」
百合の問い掛けに、羽黒は少し間を置いてから答えた。そこから、数秒程間が開き
「……10年も……経って……」
と百合の茫然とした声が漏れ聞こえた。
確かに、簡単には信じられないだろう。
「じゃあ……あの時聞こえた祐輔の声は、夢じゃなかったんだ……少し大人びた、あの声……」
「百合さん……?」
「良かった……生きててくれて……!」
羽黒が名前を呼ぶと、百合は嗚咽を漏らしながらそう呟いた。
「……百合さん、衝撃を受けるかもしれませんが……こちらを御覧ください……」
「……こ、れは……」
「貴女の、カルテです……」
どうやら羽黒は、百合に百合のカルテを手渡したようで、暫く無言の時間が続いた。
そして
「これ……艦娘に、近い……!?」
「はい、その通りです……貴女の体組織の大半以上が、私達艦娘とほぼ同じなんです……原因は恐らくですが……一度、深海悽艦化したからかと思われます……」
「私が……深海悽艦化……!?」
「信じられないかもしれませんが、事実です……交戦の末、人に戻すことが出来ました」
羽黒がそこまで説明すると、百合は少ししてから
「……でも、そう言われたら納得出来ることが幾つか…
…」
と呟き始めた。
『聡明なお姉さんなんだね』
『はい。近所でも有名でした』
百合がすぐに考察を始めたことに、明日奈は思わず百合をそう評価した。
「……長い間、夢を見ているようで……けど、頭の中にノイズが走ってるような感覚もあって……まるで、自分が自分じゃないみたいな……そんな感覚が長く続いてた……」
「ノイズですか?」
「はい……確か……目の前の敵を、撃滅しろ……そんな言葉が、頭の中に響いていました……」
それを聞いた羽黒は、何やらサラサラとメモに書き留めた。百合の証言を纏めているのだろう。
「わかりました……暫くは不自由を強いることになりますが、申し訳ありません」
羽黒はそう締め括ると、椅子から立ち上がって離れた。
その後に、祐輔は明日奈が車イスを押して出た。
「どうするの、祐輔君?」
「……暫くは、第二医務室で過ごしてもらうことになるかと……その間に、色々と手回しします」
どうやら、受け入れる気らしい。
「無理はしないでね」
「はい」
明日奈の言葉に、祐輔は微笑みながら頷くのだった。
どういう話を書いてほしいですか
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