広い空間を誇る、初音島鎮守府の第二体育館。そこの一画をリハビリスペースにしてリハビリをしているのは、祐輔だった。
その時、ピピピと電子音が鳴り響いて
「祐輔さん! 一時間経ちました、休みましょう!」
と大井が声を上げた。
本来は明日奈の役目だが、その明日奈は今現在アリアと哨戒に関して協議中のために、大井にその役割が回ってきたのだ。
「はい……」
大井の言葉を聞いた祐輔は、汗だくになりながらも大井の所に戻った。
発達した医療技術により、昔は何ヵ月も掛かった大怪我の快復に、一ヶ月以内には治るようになった。
それにより、祐輔の怪我も塞がり、リハビリに入っていた。
「大分、早く歩けるようになりましたね」
「けど、戦術機を動かすにはまだまだです……」
大井の言葉を聞きながら、祐輔は水分補給をした。それに連動するように、大井が祐輔の汗をタオルで拭き始めた。
「大井さん……僕、汗臭いですよ?」
「体が冷えて、風邪を引かせる訳にはいかないんですよ。それに、気になりませんから」
祐輔が忠告するが、大井は気にした様子もなく祐輔の汗を拭いていった。
そこに、木曽が現れて
「大井姉さん、頼まれてた予備のタオルとシャツ、持ってきたぞ」
と籠に入れられたタオルとシャツを、大井の近くに置いた。
「ありがとう、木曽。祐輔さん、汗で濡れたシャツを脱いでください。交換しましょう」
「ですね……気持ち悪いですし」
大井の提案に従い、祐輔は汗まみれのTシャツを脱いだ。それを受け取った大井は、新しいTシャツを祐輔に手渡し、祐輔はいそいそと着こんだ。
すると、木曽が
「悪かったな、祐輔……オレ達が不甲斐ないばかりに」
と軽く頭を下げてきた。
「木曽さん?」
「オレ達が抜かされなければ、祐輔がナインテイルと戦うことは無かったんだが……」
祐輔が顔を向けると、木曽は申し訳なさそうにしながら再び頭を下げた。
どうやら、祐輔がナインテイルと交戦したのを自分達の責任と感じているようだ。
「いや、あれは全員が死力を尽くした結果ですよ……たからこそ、二つ名付きを撃破出来たんです。誇ってください」
「だが……祐輔……」
祐輔の言葉に納得いかないのか、木曽はなおも反論しようとしたが
「そこまでよ、木曽……貴女の戦果だって、あの神通に迫るものだったじゃない」
と大井が、木曽を静止した。
「大井姉さん……」
「私もかなりの戦果を挙げたけど、最前線で戦った貴女には及ばないわ。それは誇りなさい」
ナインテイル侵攻戦の際、最前線で突撃した二個水雷戦隊。その旗艦を勤めたのは、それぞれ木曽と神通であった。
そしてその二人に共通しているのは、近接戦闘も高いレベルで修めていること。
そんな二人の戦果は、吹雪に続いて2位と3位である。
まさに、水雷戦隊でトップ3の実力者達である。
そして大井は、第4位。彼女も、実力者なのだ。
「それに、誰も死んでない……確かに、敵の攻撃で施設には多少の被害は出たけど、そこはもう直ってる……だから、良しとしましょ」
「……わかった」
大井の説得を受け入れた木曽だったが、俯いていた。すると大井は、そんな木曽を抱き締めて
「責任感が強いのはいいけど、強すぎもダメよ……ね?」
と優しく諭した。
気っ風の良い木曽だが、それ故か責任感が強いという面もあり、大井や球磨が適度に力を抜くように忠告していた。
「それじゃあ、木曽。貴女は部屋に戻って休みなさい。貴女、少し前まで演習教官をしてたでしょ? 疲れてるはずよ」
「ん、わかった……確かに、少し疲れてるからな……部屋に戻って、昼寝でもしてくる」
そう言うと木曽は、マントをバサリと翻しながら離れていった。それを見送ると、祐輔は
「よく見てますね、大井さん」
と大井を誉めた。
すると大井は、少し恥ずかしそうに
「これでも、三人姉弟の長女でしたから」
と語った。
球磨型軽巡洋艦大井こと、
しかも、訓練時からその強さを見せつけ、歴代でも最高クラスの成績で訓練校を卒業。
その後は、高い思考能力と推察能力が買われて、技術研究廠に呼ばれた、まさに逸材である。
「ご姉弟は、お元気なんですか?」
「はい。少し前に妹から手紙が来まして、三人目の長男がようやく小学校を卒業したそうです。将来は海軍に入るって息巻いてるようです」
祐輔の問い掛けに、大井は微笑みながら答えた。どうやら、弟は海軍に入りたいようだ。
「元気なら、何よりじゃないですか」
「元気過ぎて、困ってるんですよね……もう少し、落ち着きを持ってほしいんです……」
祐輔の言葉に、大井は溜め息混じりにそう言った。
しかし、口元は笑みを浮かべているので、本気ではないのだろう。その時、また電子音が鳴った。
その意味は、休憩の終了である。
「それじゃあ……リハビリを再開します……」
「無理をしないでくださいね?」
立ち上がった祐輔から、大井は飲み物を受け取ってから忠告した。
その頃、明日奈は
「では、以後の哨戒に関しては、このようにしましょう」
「ぷいにゅ!」
哨戒に関して決め終わり、明日奈はアリアと握手した。
そして、明日奈は脇に書類を挟んで
「さてと……新しい哨戒艦隊を編成しないとね」
と執務室に向かった。
どういう話を書いてほしいですか
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