ナインテイル侵攻から、もうすぐ一ヶ月。
「……中将に昇進……か」
「相手は仮にも、二つ名持ちだったんだよ? 本当なら、大将になってもおかしくない筈だよ?」
初音島鎮守府に、大本営から通達があった。
まず、祐輔は中将に昇進。明日奈は大佐。アリアはその戦果から大佐になり、更に大本営から新たな艦娘の配属が決まった。
「それに、人材もか……」
「詳しくは書かれてないけど、在日国連と帝国陸軍からだって」
そして、未だに人材不足が目立つ両鎮守府に人材も送られてくるのだ。誰が来るのからまだ分からないが、来るからには受け入れるつもりである。
それに関する書類を横目に、祐輔はゆっくりと腰を上げて
「ようやく、根回しが終わった……」
と呟いた。
根回しというのは、元ナインテイル。百合のことである。祐輔は百合に関することを、様々な所にしていて、その処理がようやく終わったのだ。
「じゃあ、百合さんは……」
「このまま、第一の医療班に引き取ります……」
明日奈の言葉を引き継ぐ形で、祐輔はそう告げた。
元々、百合は医務兵として兵役に就いていたのだから、適役だろう。何事も、適材適所だ。
「明日奈さん、同行してもらっても?」
「うん、わかった」
祐輔が同行してもらうように頼むと、明日奈は頷いた。
祐輔としては、久し振りの再会になるのでちゃんと喋れるか分からないからだが、明日奈はようやく補助杖無しで歩けるようになったから、念のためにと考えていた。
そして二人は、執務室から百合の居る第二医務室に向かった。最近祐輔は、ようやくランニングが出来る位までに回復した。しかし、距離は未だに全盛期の三割程しか走れないが、祐輔は諦めるつもりは無い。
そして、十数分後。
「失礼します」
と祐輔は、ノックしてから中に入った。
第二医務室の中では、百合が数冊の本を読んでいた。題名から、この数年間の情報のようだ。
顔を上げた百合は、一瞬驚いた表情をしたがすぐに
「久し振り、祐輔……大きく、なったね……」
と言葉を紡いだ。その言葉を聞きながら、祐輔は近くの椅子に座り
「久し振り、姉さん……10年振り……になるかな……」
とたどたどしく告げた。
「姉さん……羽黒から話を聞いてると思うけど……」
「ええ……あの大規模侵攻から、10年も経ってた……まあ、祐輔もこんなに大きくなってるし……それに、その指輪……結婚したのね……?」
百合の言葉に頷くと、祐輔は背後に立っていた明日奈に視線を向けて
「姉さん……この人が、僕の奥さんで副官でもある」
「榊原明日奈です。初めまして、義姉さん」
「初めまして、榊原百合です……不思議な感じね……同じ顔の人と会話するのって」
確かに、自分と瓜二つの人物と話すことなど、滅多に無いだろう。特に百合と明日奈の二人は、姉妹と言われても疑えない程に似ている。
髪と目の色が違うが、親からの遺伝で十分に通るレベルだ。
「同意します。私も、少し不思議な感覚です」
「ふふ……」
明日奈の言葉に、百合は短く笑った。
その間に祐輔は、持ってきていた鞄の中から書類と封筒を取り出して
「姉さんは、医務兵として医療班班長になってもらいます。階級は軍曹として。新しい軍籍と詳しい内容は、その中にある書類に書かれてあります」
と百合に手渡した。
「拝命します……けど、本当に軍人になってたんだね、祐輔……しかも、海軍の提督だなんて……」
「まあ、最初は陸軍の衛士だったんだけどね……」
祐輔はそう言うと、立ち上がった。そして
「後程、手空きの子に軍服やセットを持ってこさせますから……それまでは、待機をお願いします……また話そうね、姉さん……」
と告げて、第二医務室から退室したのだった。
そして少し歩くと、祐輔は背中を壁に預けた。それを見た明日奈は
「祐輔君?」
と気遣った様子で、祐輔に声を掛けた。
「すいません……なんだか……少しだけ……本当に少しだけですが……許されたような気がして……」
そう言った祐輔の声は、少しだけ震えていた。
それを聞いた明日奈は、優しく祐輔の頭を抱き締めて
「大丈夫だよ、祐輔君……大丈夫……」
と言いながら、祐輔の頭を撫でたのだった。
どういう話を書いてほしいですか
-
戦闘多め
-
日常多め
-
エロ多め