※この作品はR-18です。

艦隊これくしょん・絆の旋律   作:京勇樹

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反撃開始

「須郷さん……聞きたいことがあるわ」

 

「何かな?」

 

明日奈は怒りを必死に抑えながら、時間稼ぎを含めて問い掛けすることにした。

 

「こんなことを起こした、理由はなに?」

 

「簡単さ。僕が、この世界の王になるためさ」

 

「王……?」

 

「そうさ、明日奈。今のこの世界はね、無駄ばかりなのさ。人員、物資……何もかもね。しかし僕が世界の王になれば、それは即座に解決する。要らない人材は切り捨てる。そうすれば、物資も必要な量だけになる。そして、僕の伴侶は君しか居ないのさ」

 

明日奈の問い掛けに、須郷は何処か確信した表情でそう語った。しかし、明日奈からしたら

 

「貴方は、何も分かっていない……須郷さん、貴方が世界の王になる? 貴方は、ただの科学者……しかも、人間を見下すことしか出来ない人に、世界を統べることなんて出来る訳がない」

 

「やれやれ……なんで分かってくれないんだい? 無為に生きることしか出来ないバカ共なんて、不必要だ。精々が、僕の実験の駒程度にしか使えない。その方が、よっぽど世界のためさ。手始めに、悠陽とかいう小娘を切り捨てる。次はこの駒だ」

 

須郷の言葉を聞いて、明日奈は怒りに手が震えた。その下らない考えで、今回の襲撃を企てたという。

 

「須郷さん!!」

 

明日奈は怒りで、拳銃を須郷に再度指向した。しかし、祐輔が前に立っていて引き金を引けない。

 

(そもそも、なんで祐輔君は須郷さんを……そういえば、アナリティカルシステムは、須郷さんが開発した物で、外科手術で脳神経と繋がってる……まさか!?)

 

明日奈はある考えにたどり着き、それを確認するために口を開いた。

 

「須郷さん……祐輔君を操ってるのは、アナリティカルシステムを使ったからね?」

 

「おや、気付いたのかい? 流石だね、明日奈。その通り、この駒は僕の発明品のアナリティカルシステムを登載している。それに、プログラムを流し込めば、後は簡単だったよ。他の駒の後催眠暗示より、効果は確実だ」

 

聞いてないことだったが、他の人員が従ってる理由も分かった。しかし、明日奈には打つ手が思い付かなかった。後催眠暗示は、時が経てば解除されていくが、アナリティカルシステムを使っている祐輔の場合は、方法が思い付かなかった。

もしかしたら、祐輔に衝撃を与えれば目覚める可能性はある。しかし、その可能性だけで祐輔を撃つ気にはなれなかった。

先に、須郷の目的は明日奈だと言っていたから、もしかしたら、明日奈が須郷の下に行けば、祐輔は解放されるかもしれない。

 

(だけど……だけど……!)

 

と明日奈が激しく葛藤していた、その時だった。

 

「やれやれ……仕方ないな……おい、お前……自分の頭を撃て」

 

と須郷が、祐輔に命令した。明日奈が息を飲んでいた時、祐輔は須郷が手渡した拳銃を自分の側頭部に突き付けた。

 

「何故だが知らないが、明日奈はこの駒が気になるようだ……だったら、この駒が居なくなればいいんだろ?」

 

「須郷さん、貴方はぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

須郷の言葉に、明日奈は激情に駆られた。やはり、須郷とは相容れない。明日奈は祐輔の手にある拳銃を狙い、撃とうとした。だが、その時

 

「なるほどね、こういう時の為だったんだね、桐ヶ谷技術少佐」

 

と祐輔の声が聞こえた。

 

「え?」

 

その困惑の言葉は、明日奈だったか、須郷だったかは分からない。しかし次の瞬間、祐輔が右足を軸にして体をまるで独楽のように回転させて、持っていた拳銃のグリップ部分で須郷の側頭部を強打した。

 

「がっ!?」

 

「須郷技術中佐……貴方の企み、程度が知れますよ……それに、貴方が00部隊の黒幕だったんですね」

 

殴られた衝撃で倒れた須郷に、祐輔は拳銃を指向しながら冷徹な言葉を紡いだ。

それも無理からぬことである。自身が数年間にわたり苦しんだ裏の存在たる、00部隊が須郷の実験部隊だと分かったからだ。

 

「き、貴様……! この僕を……世界の王たる僕を殴るなんて……!」

 

「貴方ごときが、世界の王? 寝言は寝てほざけ……ただの技術仕官風情が、世界の王? 人間の命を物としか見ない貴方が? ……ふざけるな」

 

祐輔は自身でも驚くほど低い声音で、口を開いていた。そしてそれは、明日奈も同じだった。祐輔がそこまで怒った所など、見たことが無かったのだ。

 

「そもそも、どうして洗脳が解けた!? 僕のプログラムは完璧だったはず!?」

 

「貴方程度の考え、気付く人が居たということですよ。技術研究厰の桐ヶ谷技術少佐がアンチプログラムを組んで、インストールしてくれていたんですよ。更に言えば、それは茅場技術大佐の指示だったようですが」

 

須郷が混乱した様子で問い掛けると、祐輔は左目のアナリティカルシステムを指差しながら教えた。

 

「茅場に桐ヶ谷……またアイツらか!? クソ! 何でだ!? 何で、アイツらにいぃぃぃぃ!!」

 

祐輔が告げた名前に、須郷は怒りを露にして声を荒げた。祐輔は知らぬことだったが、実は茅場技術大佐、桐ヶ谷技術少佐、須郷の三人は、同じ大学の同じ学部の先輩と後輩という間柄になる。なお桐ヶ谷技術少佐に関しては、まだその大学に在学中の身だが、茅場技術大佐が直接スカウトし、短期間の間にその頭角を現し、メキメキと出世したという異例の経歴の持ち主だ。

しかも、桐ヶ谷技術少佐が発表し採用された幾つかの技術は、須郷も考えて研究していたが、先に発表されたということがあったのだ。

それもあって、須郷は二人に対して並々ならぬ敵がい心を抱いていた。

 

「須郷技術中佐……いえ、元中佐。現刻で、貴方を拘束します。理由は、言わないと分かりませんか?」

 

祐輔がそう問い掛けた瞬間、須郷が

 

「ふざけるなぁ!! 10番から15番、こいつを処分しろ!!」

 

と怒声で指示を下した。その直後、明日奈達の方に小銃を向けていた人員が、祐輔に小銃を向けた。だが

 

「遅い」

 

「撃てぇ!!」

 

祐輔と明日奈の声が重なり、その五人に銃撃が集中射撃が放たれて、あっという間に無力化された。

 

「ちっ……躊躇わず撃てば良かったか」

 

その間に、須郷は逃げ延びたらしく姿を消していた。そこに、明日奈が駆け寄り

 

「祐輔君、大丈夫!?」

 

と祐輔の無事を確認してきた。

 

「はい、僕は大丈夫です。それより、明日奈さん。状況はどうなってますか? どうも、戦術データリンクが上手く接続されないんです」

 

「最新とは言えないけど、少し前までだと、戦術機部隊は此方の優勢だった。陸戦部隊は、裕也少尉とティアナ准尉の二人が率いる部隊が奮戦してるけど、相手の数が多いって言ってた」

 

明日奈が一部始終を教えると、祐輔は少し黙考してから

 

「分かりました。それでは、一度医務室に向かって、姉さんの保護をお願いします。僕は一度、指令室に入り、詳細を確認します」

 

「分かった!」

 

祐輔の指示を受けて、明日奈は引き続き陸戦部隊を率いて百合が居る筈の医務室に向かった。それを見送った祐輔は、指令室に向かった。

数分後、鎮守府の軍港

 

「クソ! クソ! クソ! なんてことだ! ここで、明日奈を手に入れる筈だったのに!?」

 

祐輔達の手から逃げ延びた須郷が、左腕を抑えながら走ってきていた。実は須郷が逃げ出した時、祐輔が一発発砲していたのだが、須郷の予想外の身のこなしに外してしまっていたのだ。そして須郷は、そこに停めてあったボートの一隻に駆け寄ると、手荒く傷の治療をしてから無線機を取り上げて

 

「おい! 無明を出せ! この鎮守府を、島諸とも焼け野原にしてやる!!」

 

と怒声を張り上げながら、指示を出した。そして須郷は、その無線機を放り投げて

 

「僕の物にならないなら、いっそ始末してやる! そして、明日奈の遺伝子から僕に従順な人形を作ればいい話だ!!」

 

と狂気染みた声で叫んだ。

そして、軍の闇に蠢いていた男との決戦の幕が開く。

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