「……予想より、敵の戦力が多い……」
祐輔は司令部の戦況モニターを見ながら、一人呟いた。その理由が、戦況モニターに表示されている須郷が投入した戦力にあった。
戦術機の数で言えば、約二倍強の数が投入されている。
「だけど、どこから……」
と祐輔が、悩んでいると
「祐輔さん! IFFに応答しない船舶が接近中!」
と大淀が、祐輔の近くのモニターにレーダーの情報をオーバーラップした。確かに、一隻の船舶が初音島に近づいてきていた。
「レーダーの反応から、船舶はかなりのサイズのようです!」
「……僕は、最前線で指揮を執ります。大淀さん、こちらは頼みます」
「分かりました!」
大淀の返事を背に聞きながら、祐輔は地下司令部から退室。ロッカーで強化装備に着替えて、ハンガーに向かった。
そして祐輔は、ハンガーに繋がる道を進んでいる時、隔壁が破壊されているのを見つけた。
「まさか!?」
祐輔は片手に拳銃を持ちながら、先を急いだ。
「銃声は聞こえない……無事で……!」
祐輔は破壊されていた二つ目の隔壁を越えて、通路から下を見ながら拳銃を構えた。確かに、銃撃戦の痕跡がある。強化外骨格で置いたのか、戦術機の装甲がバリケード代わりに置いてある。そして祐輔は、味方がハンガーを防衛しきったと気づいた。血溜まりに倒れ伏してるのは、全員が浸入者達だったからに他ならない。
それに安堵しながら階段を降りていると、祐輔は驚きで手すりを飛び越えた。
「リズさん! ケガを!?」
初音島鎮守府整備班班長の里佳が、肩辺りから血が流れていたのだ。
「アタシは平気よ。かすっただけだから……それより……」
「え……裕也君!?」
里佳が視線を向けた先には、脇腹から出血している裕也の姿があった。先ほど気付かなかったのは、戦術機の装甲の陰に隠れていたからだ。
「すいません、祐輔さ……ぐっ」
「喋らないで、裕也!」
祐輔に謝罪しようとした裕也だったが、傷みで呻き、そしてティアナが真剣な表情で治療している。
「アタシを庇って、撃たれたのよ」
「代わりに……相手は全員射殺しましたが……それよりも……機体が……」
祐輔は裕也の視線を追うと、コクピット部分が大きく損傷している祐輔機が見えた。
「敵が対戦術機榴弾を持ってきて、この装甲を吹き飛ばそうとしたのよ。それに気付いて射殺したんだけど、最後の力か、発射された弾頭が……」
里佳のその説明で、祐輔は全て把握した。
「……あの機体を使いましょう」
そう言った祐輔が見たのは、奥に駐機されていた機体。近衛仕様の不知火弐型だった。
「あれを!?」
「元々、あの機体は僕用にと宛がわれた機体で、今までずっと予備機扱いでした……使うなら、今です」
「……仕方ないか……今は、少しでも戦力が欲しいところだからね」
里佳は立ち上がると、その弐型にパソコンを接続。調整を開始した。だが
「つっ……」
「リズさん、無理なら……」
「アタシのプライドが許さないわ……整備士が整備が出来ないなんて」
里佳はそう言って、腰のポシェットから無針式の注射器を取り出して、自分の首筋に宛がい、スイッチを押した。すると、中の薬液が注入された。恐らくは、鎮痛剤だろう。
「任せなさい……直ぐに終わらせるから」
里佳はそう言って、パソコンのキーボードを叩き始めた。祐輔は、それを静かに見守ることにした。里佳の整備士としてのプライドを理解しているからだ。
そして、数分後
「よし、祐輔のOS設定をダウンロード完了……後は……これで!」
最後に、里佳はキーボードのエンターをタンッと叩いた。そして、画面を見てから
「行けるわよ、祐輔! 最初は違和感を感じるかもしれないけど、直ぐに無くなる筈よ!」
「ありがとうございます」
里佳の言葉を聞いた祐輔は、一気にキャットウォークを駆け上がり、コクピットに入った。
『装備は!?』
「
祐輔がそう告げると、すぐにガントリークレーンが機体の背部ラックに長刀を二本装備。更に、左手に複合突撃砲を、右手に400mm無反動砲を装備した。
祐輔はその接続を確認すると
「準備完了!」
『カタパルトまで移動開始!』
祐輔の言葉の直後、里佳の指示に従って妖精がメガガントリーで機体をカタパルトに接続させた。
『接続確認! 行きなさい、祐輔!』
「了解! アサルト1、榊原祐輔……出ます!」
宣言した直後、祐輔の体は強いGでシートに押し付けられて、機体は空中に放たれた。祐輔はフットペダルを踏み、跳躍ユニットを噴かして機体を飛翔させ戦域に向かった。
自身の過去に、決着を着けるために。
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