「遅いぞ、このグズ!!」
初音島に接近する船、明神型戦術機空母の
「僕の思い通りにならないなら、全て消し去ってやる! 僕こそが世界の王だ!」
と声を荒げた。その頃、祐輔も須郷が乗った無明を視認し驚いていた。
「明神型戦術機空母!? まだ建造中の筈!?」
明神型戦術機空母。日本帝国が初めて建造する本格的戦術機空母で、トラマリン構造を採用。更に三基のカタパルトを使って戦術機の迅速な展開を狙った大型空母だ。最大収容戦力は、一隻で36機まで可能となっており、正に日本帝国軍に肝いりの艦となる予定だ。
しかし何より、建造には非常に高い費用が必要とされており、予定費用は大和型四隻分の費用が掛かると予想されている。
「つっ!? 新手の戦術機部隊か!」
そうこうしている間に、無明からは更に戦術機部隊が展開。初音島の戦力に向けて、砲火を放った。それを祐輔は、海面ギリギリを這うように進行しながら回避する。祐輔機の周囲や過ぎ去った後には水柱が乱立し、濃密な弾幕が形成されていることを物語っている。
「けど、この程度!!」
しかし祐輔は、怯むことなく突撃を敢行する。砲撃の間を進みながら、短連射。瞬く間に、二機を撃破した。
だがその間にも、無明からは更なる戦術機部隊が展開されていく。いくら祐輔が腕利きとはいえ、数の多さに撃破が間に合わない。
「僕が知ってる明神型なら、一個大隊規模だけど……! 対処が、追い付かないっ!!」
祐輔は悔しさに歯噛みしながら、更に二機を撃破。しかしその間に、一個中隊規模が祐輔機を半包囲。砲口を向けていた。
「くっ!?」
祐輔は回避機動をとりながら、更に突撃砲を連射。更に数機を撃破したが、気付けば二機が祐輔機を挟んでいた。
(ダメだ、間に合わない!?)
と祐輔が、被弾を覚悟した時
『マスタング0援護する』
と祐輔にとっては、懐かしい少年の声が聞こえた。その直後、祐輔機を挟んでいた二機が爆散した。
「今の声は!?」
祐輔は直ぐに、視界端に表示させていた戦域地図を広範囲表示に変更した。すると、初音島鎮守府を中心にした5時の方向から、複数の友軍を示す光点が接近してきていた。その先頭の光点はマスタング0と表示されている。普通、部隊番号で0という数字は先頭には使わない。何故ならば、存在しないという意味も有るので不吉とされているからだ。しかし祐輔は、例外を知っている。国連軍指揮下の部隊で、二つの部隊が部隊番号の頭に0を使っていて、その中で一人だけ0のコールサインを使っていることを。
「久しぶりだね、伊奈帆君!」
『やっぱり、祐輔だったか……とりあえず援護したけど、必要だったかな?』
その相手、
祐輔と伊奈帆の出会いは、技術研究厰に所属した時のことだった。伊奈帆は訓練生の時から頭ひとつ抜きん出た成績を叩き出していて、たまたま視察に訪れた当時巌谷中佐が直接スカウト。訓練校を卒業後、すぐに技術研究厰の戦術機部隊に配属となった。その直後に祐輔が配属となり、祐輔と伊奈帆の二人が当時の戦術機部隊の中でも凄まじい戦果と成績を発揮。その後、伊奈帆は国連軍で新たに発足した特殊遊撃部隊の配属となり、その直後に祐輔は提督となった。
そして伊奈帆が所属することになったのは、第01独立遊撃部隊。通称、デューカリオン隊だった。
「だけど、なんで伊奈帆君がここに!?」
『実は、近々行われる帝国発の大規模作戦にデューカリオン隊も参加することが決まって、本当は海鳴鎮守府に寄港する予定だったんだけど、通信が繋がらなかったんだ。それで何が起きたのかを問い合わせようと、初音島鎮守府に通信しようとしたら、光学カメラで戦闘を確認してね……艦長の判断で援護することにした』
祐輔の問い掛けに、伊奈帆は新たに構えた支援突撃砲を発射。伊奈帆機が撃った砲弾は、曲線を描いて一機の黒い塗装の不知火に直撃した。
『す、凄い……曲射で、直撃させた!?』
『敵機の機動先を予測したのか!?』
祐輔の耳に、明久と結華の驚愕する声がした。
「流石だよ、伊奈帆君……相変わらずの、予測だ……」
伊奈帆の見事な砲弾精度に、祐輔も思わず賞賛の声を漏らした。伊奈帆の砲弾精度の理由は、その右目のアナリティカルシステムである。
ただ、伊奈帆のほうが祐輔より親和性が高いらしく、祐輔より計算速度と効果がより強い。
そこへ
『デューカリオンより戦域の友軍に通達します。至急、指定するポイントから離脱されたし。繰り返します、至急指定ポイントより離脱されたし。対空榴散弾頭による飽和砲撃を行います』
と女性の声が聞こえた。そして、戦域地図にそのポイントが表示され、祐輔は
「アサルト1より初音島鎮守府戦術機部隊へ! 後退戦闘! デューカリオンの指定ポイントから離脱する! 殿は僕がする!」
と指示を下し、自身も後退戦闘を開始した。
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