※この作品はR-18です。

艦隊これくしょん・絆の旋律   作:京勇樹

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反撃の兆候

無明艦橋

 

「なんだ、あの部隊は!?」

 

「……どうやら、国連軍の特殊遊撃部隊のようです」

 

須郷が苛立った様子でモニターを睨んでいると、オペレーター席に座っていた一人の兵士が平淡な声音で答えた。どうやら、洗脳されている兵士のようだ。

 

「国連軍だと!? 烏合の衆の部隊ごとき、さっさと殲滅しろ!」

 

「現在、味方部隊は後退する敵部隊を追撃中……間もなく、有効打が与えられるかと」

 

また平淡な声音で一人が答えると、須郷は苛立った様子で舌打ちした。それと同時に空中で何かが爆発し、そして追撃していた須郷の私兵部隊の数が一気に減った。

 

「な……何が起こった!?」

 

「……どうやら、敵部隊の母艦からの飽和砲撃のようです……味方部隊、約二割が撃墜されました」

 

「世界の王になる僕に逆らって、只で済ますものか!! 残存戦術機も全て出せ! あいつらを撃滅しろ!!」

 

須郷が癇癪を起こしたように命令すると、甲板から次々に戦術機がカタパルトを使って出撃していく。

 

「この僕に逆らって……無事に済むと思うなよ、低俗共!!」

 

場所は変わって、デューカリオン艦橋。

 

「敵出撃部隊の二割の撃墜を確認しました。更に、敵母艦から新たな部隊を確認しました!」

 

「マグバリッジ艦長、対空榴散弾頭の第二斉射の用意が出来ました」

 

「界塚大尉からの指定は?」

 

「来ています。ポイントSEー55ー42です」

 

デューカリオンの艦長、ダルザナ・マグバリッジ大佐の問い掛けに、副官たる不見咲(みずさき)カオルが答えた。それを聞いたマグバリッジ大佐は、戦域をジッと見て

 

「しかしあの機体は、同じ帝国軍の機体の筈……」

 

と呟いた。どうやら彼女は、黒い不知火を見て呟いたらしい。すると不見咲が

 

「本来の配色ではありません……おそらく、不正規部隊かと……もしかしたら、噂に聞く捨て駒部隊の可能性もあります」

 

と告げた。

 

「……あの00部隊とかいう……実在した……?」

 

「艦長、砲撃指揮部署より通達。修正終了。何時でも砲撃可能とのこと」

 

マグバリッジ艦長が悩んでいると、オペレーターの一人がそう告げてきた。それを聞いて、マグバリッジ艦長は

 

「対空榴散弾頭、連続斉射!」

 

と指示を下し、その直後に轟音と共に砲弾が放たれた。

場所は再び変わり、初音島鎮守府司令室

 

「艦隊は対空砲撃を重視! ただし、撃墜は考えないで

! 侵攻を送らせられれば充分です!」

 

『了解!!』

 

明日奈の指示を受けて、前線の艦娘達から斉唱が返ってくる。なぜ、通信が使えているのか。それは、伊奈帆からデータリンク経由で送られたプログラムだった。それを夕張が、サーバーにインストールしたところ、通信に流れていたノイズが無くなったのである。それにより、通常の通信が使用出来るようになり、初音島艦隊は有効な防衛線の構築に成功した。

 

「話には聞いてたけど……界塚伊奈帆大尉……凄い人ね……まさか、戦闘中にプログラムを構築するなんて……」

 

明日奈はそう驚くが、そのプログラムは伊奈帆のアナリティカルシステムが構築した物なのである。伊奈帆のアナリティカルシステムは、伊奈帆が独自に組んだAIが搭載されていて、伊奈帆はそのAIと議論を交わして新しい戦術等を組んでいる。今回プログラムを組んだのは、そのAIなのだ。

 

「おかげで、戦術データリンクも全面的に復旧……ここから、反撃出来る!」

 

明日奈は意気込むと、戦域マップの敵を示す赤い光点(ブリップ)の内の一際大きい光点を睨んだ。須郷が乗っている筈の母艦である。

 

「須郷さん……私の……いいえ、私達の諸々の因縁を、ここで終わらせます」

 

そう言った明日奈の目には、強い意志の光が宿っていた。同時刻、海鳴鎮守府。その敷地内では激しい銃撃戦が繰り広げられていた。その一ヶ所では、赤と白の特徴的な軍服を着た数人の部隊が、悠陽を守って戦っていた。

 

「月詠、拳銃を私にも」

 

「殿下!? しかし!?」

 

「今ここで、私が撃たれる訳には参りません。それに私とて、教練は受けています」

 

悠陽の言葉に、真耶が驚いた表情で振り向いた。だが悠陽は、毅然とした態度でそう告げた。そして、真耶が拳銃を渡そうか迷っていた時

 

「殿下、伏せて下さい! 対戦術機榴弾です!!」

 

と前で銃撃戦をしていた、一人が叫ぶように報告してきた。反射的に見てみれば、敵の一人が確かに対戦術機用の榴弾砲(RPG)を構えていた。

 

「つっ!」

 

それを見た真耶は、悠陽を守ろうと庇おうとした。そこに

 

「伏せて下さい!」

 

と新たに、男の声。気付けば、小銃を持った男。神代冬也が悠陽と真耶の近くに居た。そして冬也は、小銃を斉射。対戦術機榴弾を持っていた相手を射殺。それだけでなく、他の敵兵士にも銃弾を次々と叩き込んだ。

 

「クリア!」

 

「クリアです!」

 

その援護射撃を受けて、護衛部隊が一気に残敵を掃討。安全を確保した。

 

「殿下、ご無事ですか?」

 

「貴殿は確か……この海鳴鎮守府陸戦隊の……」

 

「神代冬也少佐です。申し訳ありません、こちらの不手際ではぐれてしまいました」

 

悠陽が問い掛けると、冬也は敬礼しながら名乗り、そして謝罪した。

 

「いえ、構いません。あの混乱の最中では、仕方ありません……それより、負傷しているようですが」

 

「は……敵が90式を使用してきておりまして、それを撃破するのに少々強引に攻めた際に……」

 

気付けば冬也は、左米神と左肩から出血している。話を聞くに、強化外骨格を撃破する時に負傷したようだ。

 

「強化外骨格までだと!?」

 

「は。敵はかなりの装備を有しています……中尉殿、これを使用してください」

 

冬也は報告しながら、右肩から下げていたマシンガンを取り、弾が装填されてるか確認してから、真耶に差し出した。それは直ぐに悠陽が持ったが、冬也は周りを確認し

 

「あった」

 

と呟いてから、一つの金属製ロッカーの南京鍵を小銃の銃床で破壊。開くと、中から四挺の銃床が切り詰められた小銃と弾倉を幾つか取りだし

 

「護衛部隊の方々、これを使ってください。本来は八神提督の許可が必要なんですが、自分が責任を持ちます」

 

と言って、真耶達に渡した。それを受け取った真耶達は、小銃に弾倉を叩き込み、初弾を装填。安全装置を解除すると

 

「戦況はどうなっている」

 

と問い掛けた。冬也は、懐から端末を取りだし

 

「こちらをご覧ください。今現在、正門とグラウンドは完全に敵の制圧下です。このグラウンドには、敵の戦術機が小隊単位布陣しているのを確認しており、各施設では何とか地の利と防衛機構を使って食い止めています」

 

と説明した、

 

「戦術機だと?」

 

「は。司令室からの報告では、不知火と撃震とのことでした」

 

真耶が驚いた表情で問い掛け、冬也の説明を聞いた悠陽は

 

「……近い内に、陸軍を一斉査察した方が良いですね……」

 

と額に手を当てた。どうやら、戦術機の入手ルートを調べる気のようだ。

 

「こちらです。安全を確保してあります」

 

そして冬也は、端末を懐に仕舞うと悠陽達を先導するために歩き始めた。

少しずつだが、反撃の狼煙は上がっていた。

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