祐輔は、デューカリオンが指定する範囲から離脱を図りつつ、何とか敵の戦術機部隊をその範囲に留めるようにと、攻撃していた。
(流石に、敵の全部は無理か……だけど、約半数以上は範囲に留めることが出来る)
そう思いながらも、祐輔は更に一機を撃破。そして、視界端に表示されている着弾までの時間を確認して
(そろそろ限界か……)
と判断し、機体を反転させて離脱した。その直後、敵戦術機部隊の直上で何かが小さく爆発し、そして、広範囲で焔の絨毯が形成された。
対空榴散弾頭による、飽和砲撃。世界でも唯一の飛行戦艦のデューカリオン。それの主砲たる計12門による一斉砲撃は、絶大な効力を発揮した。
弾頭の中から解き放たれた子弾は、空中で広範囲に拡散され、侵攻してきていた須郷の戦術機部隊を次々と撃墜・撃破した。
「……20機は、墜ちたか……さあ、須郷元中佐……終わらせましょうか……!!」
それを確認した祐輔は、再び機体を反転させて須郷の座乗する無明に突撃を開始した。そこに、一機の不知火弐型が祐輔機の隣に来た。IFFが示すのは、明日奈機。
「明日奈さん!?」
『祐輔君……私も、一緒に!』
いつの間に出撃したのか、と祐輔が驚きで明日奈の名前を呼ぶと、明日奈は強い意志を感じる声音で自身の意志を告げた。それを聞いた祐輔は
「分かりました、着いてきてください! 敵部隊はデューカリオン隊や皆に任せます! 目標は、空母!」
『了解!』
指示を下すと同時に、祐輔は最高速で無明に向けて突撃を開始。それに続くように、明日奈も無明に突撃を開始した。場所は変わり、無明艦橋
「何故だ! 何故、僕の作戦が上手くいかない!?」
須郷が自身の考えた作戦通りに事が進まないことに怒り、怒鳴り散らしながらアームレイカーをダンダンと叩いていた。もしこの場に、自身の意思が残ってる者が居れば、恐らくはこう言った筈である。
『実戦を知らぬ者が、数での戦力しか計っておらずに考えた作戦だから』
と。須郷の考えた作戦というのは、事前にハッキングして調べた配備戦術機数と艦娘の数から考えた作戦で、各員のスキル等を一切考慮していなかったのだ。
確かに、数というのは一番単純な戦力だ。世の中には、数の暴力という言葉もある程だ。
しかし、初音島鎮守府では数の差というのは何時もの事が多い。何せ、約100km離れた島から侵攻してくる深海艦隊は、膨大な数で侵攻してくるのが殆ど。そして祐輔を筆頭に、初音島鎮守府に居る衛士と艦娘達は、悉くが対多戦を熟知していた。
例えば、今祐輔と明日奈の二人が、無明に向けて進撃しており、須郷は残存戦術機部隊に迎撃するように命令した。それを受けて、残存の一個中隊程が二人に向かった。
だがその直後、祐輔機と明日奈機を挟むように、二個中隊規模が、敵の前に割って入った。
『行け、祐輔!』
『こいつらは、俺達が抑えます! 母艦を!!』
ホワイトファング中隊とトライアド隊、ウォードッグ隊が、二人の援護に入ったのだ。この時、既に戦力差は覆されていた。祐輔は艦娘達は出撃させていなかったが、戦術機は約二個中隊が展開しており、それに対して須郷の部隊は約一個中隊となっていた。
その大きな要因となったのは、戦力の逐次投入。
一個大隊という大きな戦力を、小刻みに投入。その結果、同じく削られた。その前には、陸戦隊を投入していた。もし祐輔だったら、陸戦隊の投入直後に直ぐ様戦術機部隊を中隊単位で制圧させていただろう。
しかし須郷は、陸戦隊を投入してから暫くしてから、まず戦術機部隊を一個小隊のみ投入。
その理由が、明日奈を手に入れるためだった。私欲のために、勝てる確率を下げたのだ。
それが結果的に、須郷の危機を招いた。
そして祐輔機と明日奈機は、仲間達の援護もあって一気に無明に近づいていく。無明からは、二機を近づけさせまいと機銃による対空攻撃を開始した。だが、二機は巧みな操縦で機銃を回避しつつ、逆に機銃を一基、また一基と破壊。とうとう、無明の甲板に強硬着艦した。
「須郷元中佐……ここまでです。投降するならば、命までは取りません……」
『投降しろ……だと!? この僕にか!? ふざけるな、この低能が!』
祐輔が投降を勧告するが、須郷は祐輔機を睨み付けながら怒鳴った。やはり、投降するつもりは無いらしい。その証拠に、右腕を挙げて
『今から、貴様の鎮守府を吹き飛ばしてやる!!』
と言って、右手で握っていたスイッチを押した。しかし、何も起きない。須郷は何回も押すが、何も起きない。
『な、何故だ!?』
「……優衣ちゃんに施してあった、深海細胞が納められたカプセル……ですか?」
祐輔のその言葉に、須郷は息を飲んだ。
『祐輔君、どういうこと?』
「以前、僕達が保護した優衣ちゃん……電ちゃんからの報告では、その遺伝子は非常に艦娘に近かった……それが気になった電ちゃんは、何回も検査を繰り返した……その検査の内の一つで、優衣ちゃんの体の中に、異物を発見した……そして電ちゃんは、ある計画を思い出した……それが、艦娘の強化計画……それも、深海細胞を使った強化」
『な、何故それを!?』
深海細胞を使用した、艦娘の強化計画。これは、近年特殊な能力を持つ姫や水姫級という一部の個体に対応するために、国連の指導下で立案・実行された計画だった。天文学的な資金と多大な犠牲を出しながら深海棲艦の姫級の細胞を採取。その細胞を、艦娘に投与した。
しかし、結果は大失敗だった。
何故ならば、投与された艦娘は全員が例外なく自我を失い、大爆発を起こしたのだ。
その結果を受けて、国連は計画を即座に中止。以後、その実験を行うことを全面的に禁止した。
しかし須郷は、それを行ったのだ。
国際法を無視してまで。
「電ちゃんは、その異物……深海細胞が納められたカプセルを、なんとか摘出しました……相当神経を使ったようですが」
『て、摘出しただと!?』
まさか摘出されるとは思っていなかったようで、須郷は驚いていた。そのカプセルが埋められていたのは、鎖骨の下だった。と祐輔は電から聞いていた。
「……須郷元中佐……さようなら」
『まっ!?』
祐輔は400mm無反動砲を構えると、即座に発射した。放たれた砲弾は、艦橋に直撃。艦橋諸とも、須郷を吹き飛ばした。
これが、世界征服を企んだ男の最後だった。
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