※この作品はR-18です。

疫病神から悪運チートもらって、ハーレム勇者目指す   作:gazerxxx

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今回は戦闘シーンまでの説明回です。


錆び付いた伝説

川沿いに緩やかな坂道を歩き続けて数時間。神器の祭られた社とやらはまだ見えない。歩けばすぐに見えてくると思ってたのに、結構離れた場所からスタートさせられてしまったみたいだ。

 

厄祭さん,ああ見えて、本当に転生の手筈とか慣れてないんだな……。後で会えたら文句言ってやろうか。

 

でも、長々と歩いてみると、転生後の俺には体力がついているのか、ほとんど疲れていない。それに、日に当たっていても、汗も少ししかかいてない。それなりに体力がついてる。そこはちゃんと仕事してくれたみたいだ。

 

川の上流まで来てやっと、木造りで平屋建ての小さな家々が点々と立っている村が見えてきた。昔話に出てきそうな山村。ここに、目的地の社があるのかもしれない。

 

ちょうど川で水くみをしているお婆さんがいたので、聞いてみることに。

 

「すいません。この近くに、神器の祭られた社ってありますか?」

「おお、あんたも社を見に来たんか?ちょっと待っとれ。お~い!ミ~ユ~!」

 

婆さんが誰かを呼ぶと、その声に答えてこっちに駆けてくる人影があった。案内人を呼んだのか?その姿がはっきり見えると、思わず目を見張った。こんな山村から出てくるとは思えないほどの美少女だったから。

 

深緑の瞳、控えめながらすっきりした鼻筋、花びらみたいに薄い紅色の唇は、真っ白な肌に映えている。長く艶めいた黒髪を顔の横では二つ束にして、残る後ろ髪は背中までベールのようにまっすぐ垂らしたうえで、先端だけ結んである。

服装は白い小袖に藍染の袴という、巫女装束。体形を覆い隠す服装でも、細面やたおやかな手を見ると、華奢なスタイルと推測出来る……と言いたいところだけど、白小袖の合わせ目に当たる胸と、藍染袴の尻の部分だけは、そのふくらみを主張して、布地が張り詰めている。可憐に見えても、出るとこは出ているスタイル…正直たまらない。

 

「おばあちゃん、また耳鳴りですか……。あっ、お客さんですね?私は、お社の巫女をしている美癒(みゆ)、と言います。お社はもう少し山道を登りますから、私がご案内しますね」

「ワシは山道がきついでの。お若い二人で行っとくれ」

「ああ、そうですか、えっと、ラックです。よろしく……」

「はい、ラックさん。こちらこそ、よろしくお願いしますね」

 

いきなり美少女と二人で山道デートキター!……と喜びたいところだけど、今まで女の子に相手にされてなかったから、いきなり二人きりにされても、どういう反応していいかわからない。ぎこちなく返事するも、そのまぶしい顔を直視できず、チラチラ窺うだけ。

 

女性との付き合いは女神様にリードされただけで、イケメンに生まれ変わったわけでもないしな。フラグ建てられる自信はない。今回は、目当ての神器の話をあれこれ聞いて間をつなぐのが、無難かもしれない。

この娘とそれだけで終わるってのは、なんともむなしいけど。

 

村を歩いている途中に何人も村人に声をかけられたけど、年配の爺さん婆さんばかり。神器の祭られた村にしては、過疎化した山村みたいだ。

 

「この森を抜けた先の社に、代々伝わる神器が祭られてるって本当?」

「はい。祭られているというよりも、封じられているいわくつきの逸品なんです…」

 

鬱蒼とした獣道を、見た目によらず軽やかに歩く美癒が、先に立って歩きながらその伝説を語ってくれた。

 

十数代前の昔に、厄災の女神たる厄祭様から、魔力の込められた剣が授けられた。剣を授かった者は、当時の戦乱の世を平定するために立ち向かい、その剣であらゆる武器を打ち砕き、そびえ立つ城塞さえも打崩した。

争いが収まって役目を終えた剣は、鞘に納めてその魔力を封じられ、戦乱への戒めとして建てられたお社に奉納された。再び世が荒れて、その剣に選ばれる者が現れるまで。

 

「その伝説が史実だとしたら、魔物がはびこってる今こそ、必要とされてるんじゃ?なんでこんな歩きにくい森の中に?」

 

厄祭さんから、お飾りになってるとは聞いてたけど、それでも伝説の武器が村人にも知られたうえで、森の社に放置されてるってのは、ちょっと信じられない。木々が生い茂ってまったく日の射さない深い森の、草だらけの獣道を歩かされた先に、伝説の武器があるものなのか?

川沿いの山道と比べても人の通る道じゃないから、どうしても不満が疑問になってこぼれる。

 

「わっ!?」

「あっ!大丈夫ですか。捕まっていてください」

 

足元の草で足を滑らせて転びそうになったのを、美癒のたおやかな手で捕まれて、何とかバランスを保つ。

女の子の柔らかな手に捕まれて、思わずどぎまぎしてしまうが、美癒は俺が転ぶのを止められてほっとした表情。俺とは違って、人の手を取って助けるのに慣れてそうだ。なんか俺だけ意識してしまって、余計恥ずかしい。

しかし、美少女と手をつなぐのは貴重なので、握り返しておく。美癒は安心したように微笑み返すと、話の続きを始める。

 

「魔物の進行が始まったころには、伝説を頼みにして訪ねてきた方も大勢いたんですよ。遠くから帝国の騎士団や魔術士団が調べに来たことも。でも、どなたが試しても、その剣は使い物にならなかったんです」

 

伝説通りなら、選ばれし者が鞘から剣を抜き放った時こそ、剣はその威力を発揮する。だが、どんな腕自慢が抜こうとしても、剣は軋んだ音を立てるばかりで、誰一人抜くことができなかった。

 

帝国騎士団は当時の巫女の反対を押し切って、刀鍛冶を使って鞘だけを壊そうとまでした。

魔術士団は腕力ではなく魔法を使って、中身を取り出そうとした。

 

しかし、何をやっても剣は頑として鞘から出てこなかった。

 

誰の手にも負えない剣は、やがてただの錆び付いてるから抜けないだけの剣だと揶揄されるようになった。中身だって、とうの昔にダメになってるに違いないから、抜けたところで無駄だろうと。

こうして、美癒が巫女を継ぐ頃には、伝説の神器を試しに来るのは、よほどの物好きか世間知らずしかいなくなっていた。

そりゃあ、社のことを聞いた婆さんも、あっさりしたリアクションしかしないんだろうな。

 

「それなら、俺がその剣を抜いて、伝説を証明してやるかな……なんちゃって」

 

やっぱり神器を授けた厄祭さんの実在を知ってる、俺がやるしかないみたいだ。自信満々で口に出したはいいけど……考えてみるとこのセリフって、美癒は剣を抜けなかった挑戦者から何度となく聞いてそうだ。途中で恥ずかしくなっておどけて見せるが、美癒は笑わなかった。

 

「冗談でも、そう言ってもらえるとありがたいです。私もこんな時代こそ、剣の使い手が来てくれたらって、時々思うんです。あなたなら、もしかしたら……あっ、すいません。期待しすぎても恥ずかしいですよね」

 

美癒はまだ、伝説を最後の希望にしてるみたいだ。だから、こんな山奥の社の巫女を務めている。しかし、それだけで生活していけるものだろうか。

 

そう考えながら歩いていると、足に痛みが走ってガクッと崩れる。体力がついたと思って飛ばしすぎたのか、険しい山道になって歩き詰めの疲れが出てきたか。山道の途中で歩けなくなるって厄介だな。

 

「もしかして、ここまで歩き続けだったんですか。少しじっとしててください」

 

美癒が俺の足首に手を差し伸べて、口の中で歌うように何かをつぶやくと、足の疲れと熱が嘘のように引いていく。

 

「治った!これって、回復魔法ってやつ?」

「はい。普段はこの魔法で、村の人たちを治してるんです。ご覧になるのは、初めてですか?」

「この世界…じゃなくて、この辺りでは魔法って、使える人も多いんだね」

「いえ、魔法が使えるかは古くからの血筋で決まるそうです。村には、神器とお社を継いできた私だけなんです」

 

なるほど、普段は回復魔法で村医者替わりをして生計を立ててるのか。というか、そっちが主な仕事になってるのだろう。あの山村だと、医者ってだけでも貴重だろう。

そういえば、さっきのおばあさんにも、耳鳴りがするのかと聞いてたが、そういうことだったのか。

 

「ありがとう。この山道を歩けて、回復もできるって、すごいよ」

「私にできるのは、そのくらいですから。もうすぐですから、頑張ってください」

 

その励まし通り、少し歩くと、ようやく古びた社が見えてきた。古いが社の周囲だけは足場が整えられて、落ち葉やつる草がくっついてる様子もない。美癒がきちんと手入れしてるみたいだ。

 

鳥居をくぐると、中庭には古く黒ずんだ女神像がある。かなり経年劣化してるが、俺にはそのモデルが分かった。

 

「これって、厄祭さんの像…」

「そうです!よくご存じですね!」

 

美癒は嬉しそうに反応する。俺は本人に会ってるからすぐわかったけど、その姿を知らない人のほうが多いのか。

俺から見ても、女神像は微笑を浮かべた表情や優雅な髪形、露出の多いドレスなども再現してある。優しげなアルカイックスマイルや、スタイルのいいドレス姿は、神性を感じさせる出来栄え。

でも本人はSっ気があってエロいんだよな……。セックスまでさせてもらったし。モデルを知っている親近感と優越感から、その女神像をじろじろ眺めてしまう。

 

「熱心にご覧になっていて、珍しい方ですね」

「この女神像目当てって人は少ないほう?」

「はい。中には女神像より私のほうが美しい!なんて見え透いたお世辞言ってくる人もいるんです。おかしいですよね?」

「いや、おかしくはないと思うけど……その、実際美人だし」

 

古びた女神像のモデルを知ってる俺から見ても、美癒の美少女っぷりは引けを取らない。厄祭さんと一味違って、清純で可憐な印象だし、服を着たうえでのスタイルの良さも負けてない。

伝説よりも美少女巫女目当てで来る連中も、結構いるんじゃないだろうか。

 

「ふふっ、ありがとうございます。でも、私はこのお社と村に残りたいと思いますから、旅の人にはついていけませんね、ごめんなさい」

 

美癒の受け流し方も、慣れたものだ。美癒と付き合うために、山奥の寂れた社に居つきたい男はいないだろうな……。まさに神様に操を立てている巫女って境遇だ。

 

社の祠の中から、美癒が神器である剣を取り出してくれた。

 

「こちらが、お社に伝わる神器、魔霧紫雲(まぎりのむらくも)です。ご期待には沿えない見た目かもしれないですけど……」

「……これが?」

 

目の前に出された剣は、さっき見た女神像よりも、はるかに古びて見えるひどい骨董品だった。鞘がびっしりと錆び付いて固まり、物理的に引き抜けない諸刃剣にしか見えない。柄の部分も黒ずんでいて汚く、正直握りたくない。

俺からしても、こんな剣で戦えるのか、疑問でしょうがない。どっかで間違えたのかもしれない。俺の勘違いだったかもと口に出そうとしたとき、社に駆け込んできた村人の姿が。

 

「大変じゃ、美癒!村が魔物に襲われとる!」

「村が!大変!すぐ行かないと!」

「魔物?こんな山奥にまで!?」

 

俺はここに来るまでに魔物に出会わなかったのは、ここが辺鄙な(へんぴ)山奥だからだと思ってた。こんなところにまで現れるものなのか。

 

「いかん!奴らは社を狙っておる。今は村で食い止めているから、ここはまだ気づかれておらん!今のうちに、山の裏道から逃げるんじゃ!」

 

その警告通り、山に地響きと轟音が響き渡り、鳥たちが逃げるように飛び去って行く。

 

魔物に狙われるってことは、この剣は本物なのか?

 

「嫌です。村のみんなは、どうなるんですか?私も助けに……」

「これはいつもの怪我や病気じゃない、戦争なんじゃ!戦場に、お前を出すわけにいかん!」

「でも、傷ついたみんなを、放っておけません!」

「これは村のみんなで決めたんじゃ!わしら年寄りは、どの道もう逃げきれん……。わしも奴らを食い止めて、老い先短い運命を村と共にする。じゃが、まだ若さと魔法があるお前は、死なせるには、余りに惜しい。わしらのことよりも、新しい行き先で……人を救ってくれ!」

「私だって村とお社は失いたくありません!最後まで一緒に…」

 

涙を浮かべながら、お互いに庇い合おうと、意地を張る美癒と村人のお爺さん。

その間にも別れを急かすように、地響きや破壊音が何度も響く。

 

何だか知らないけど、このままじゃ二人とも共倒れになってしまうんじゃないか?

急な話で置いてきぼり食らってたけど、これって、俺の出番かな?

 

「ここは、俺に行かせてくれないかな。その代わり、その神器を試させて欲しいんだ」

 

万を時して、勇者の名乗りを上げる俺。永きに渡って埋もれていた伝説の幕開けだ!

 

その俺の宣言を聞いた美癒と村人は、顔を見合わせる。そして・・・涙を引っ込めてあせりの表情を見せて、俺を引きとめ始めた。

 

「一人で魔物をとめるなんて、危険過ぎます。剣を試すのはやめて、逃げて下さい!」

「旅の人、よすんじゃ。命がいくつあっても足りん!」

 

まったく頼りにしてもらえませんでした。やはり好感度が足りない!

女神様に託されたとはいえ、出会ってすぐに戦うために神器預けろなんて、都合がよ過ぎたか……。

仕方ない。神器なしで行くしかないか。手持ちの剣はあるし、厄祭さんには剣術を覚えた肉体と、常時発動の女神の加護をもらってる。それでどうにかなるかもしれない。

 

「やっぱりいきなり神器貸してくれって頼んでも、信じて貰えないよね、ごめん。俺の力で何とかする」

「待ってください!ラックさん!」

「いかん!死にに行くようなものじゃぞ!」

 

二人の声を背にして、俺は来た道を駆け抜ける。旅歩きになれた俺の身体能力なら、一度歩いた山道を一人で歩くのは簡単だ。

 

最初は信じてもらえなくてもいい。だけど、あの二人をみすみす向かわせるくらいなら、俺が戦いに行ったほうがいい。たぶん、それが正解なんだと思う。

 

山道を下りて見えてきた村は、少し前の静かな光景とは様変わりして、荒れ果てて阿鼻叫喚の図だった。

 

家々がなぎ倒され、畑には巨大な何かがえぐったような跡がついている。

 

そして、破壊の後の中心に、そいつらはいた。

 

赤く丸い頭に、うごめく8本の触腕を振り回し、家々や人々を軽々と薙ぎ払っている。村人が斧やナタで立ち向かうも、ブヨブヨした身体に衝撃を跳ね返されて通じない。村人たちの決死の抵抗も振り払い、粘液を滴らせながら、身体を引きずって侵攻を続ける。

しかもそのタコの魔物は、言葉を発して、村人たちを嘲る。

 

「弱い弱い……伝説の神器とやらはどうした?今こそ使ってみたらどうだ?」

「我らテンタクラーズにその程度の力が通用すると思ったか?」

「やはり神器が目当てで、わしらの村を襲いに来たのか?」

「そうだ。渡さぬというなら、殺す!」

 

「待てえ!」

 

俺は村人を跳ね飛ばそうとしたその触腕を、横から飛び出して剣で斬りつけた。

 

ザンッ!

 

「何い!」

 

丸太ほどのぶよぶよした触腕が切断されてもげ落ちる。剣を通して、生き物を斬った手ごたえが確かに伝わってくる。魔物を斬るには十分な剣術を、この体は覚えてるみたいだ。

よし、これならいける!

 

「やってくれたな小僧…」

「鈍(なまくら)らな武器を使う老いぼれしかいない村だと思っていたが、我らに有効な剣士もいるではないか」

「旅の方、剣士だったのか。奴らには剣撃でないと歯が立たん。頼んだぞ!」

 

剣士というだけで、随分評価されてるな。改めて剣を見直すと、全体的に魔物の粘液がこびりついている。

 

「うえっ、気持ち悪っ!そうか、魔物って、こういう奴らか」

 

ぶよぶよな体と、その滑りをよくする粘液。この二つのせいで、生半可な鈍器や刃物では、力をそらされて有効打にならないってことか。でも鋭い斬撃、あるいは力ではない魔法攻撃なら通用する。

 

「旅の剣士か。おい貴様、我らが用があるのは、この村の神器のほうだ」

「貴様一人で、我らに挑む気か?命が惜しければ去れ」

「俺もこの村の神器に用があるんだ。せっかく試しに来たのに、お前らに邪魔されたからな!」

 

不意打ちとはいえ、一本腕を切断した相手の、脅しに屈する気はない。神器の前に、こいつらを片付けてやる。

 

俺は剣を手にして、タコの魔物たち・テンタクラーズとの戦いに飛び込んだ。

 

 

 

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