※この作品はR-18です。

疫病神から悪運チートもらって、ハーレム勇者目指す   作:gazerxxx

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連日の投稿ですが、その分来週は休むかも


女騎士、少女剣士との出会い

 翌朝、魔物の襲撃で死んだ村人たちの葬儀が行われた。

 

 俺の頭からはすっかり吹き飛んでたけど、俺が戦いを引き受けるまでの間に、蝕腕魔(テンタクラーズ)の犠牲になった人たちがいたんだ。村人たちは、俺と美癒が疲れ切って戻ってきた昨日のうちは、言うのをこらえていたんだ。

 

 巫女である美癒が社の庭で奉納の舞を踊り、その魂を神のもとへ届けるのが、この村の葬儀だった。

 

 黒髪と白紺の巫女装束をなびかせて舞う美癒は、昨日のエロい寝姿と違って、素直に美しかった。その舞を見る村人たちにも、悲しみを忘れさせるかのよう。

 

 その葬儀を見ながら思ったんだけど、死後の魂って厄祭さんのもとに届いてるんだろうか?俺以外の魂に、しばらく会っていないとか言ってたけど…。

 

(お察しの通り、次元の狭間に追いやられた私には、彼らの魂は受け入れられないわ)

 

 女神様直々に、葬儀の意義をぶち壊しにするような回答をされてしまった。いやいや、俺も葬式なんて元の世界で信じてなかったけど、神様自らそんなこと言っちゃまずいんじゃ…。

 

(それでもお祈りは他の世界の神には届いてるわ。彼らの魂はあなたみたいに、他の世界に導かれて転生してるから、その心配はないわね)

 

 そうか、祈りを受け取る神様が違っても、ちゃんと魂は他の世界に輪廻転生してるのか、よかった。

 

(それでも良くないわよ。この世界で生まれた魂が次々に他に出て行って、魂の絶対数が減る一方。私も手出しできなくなった危険な世界に、よそから魂を受け入れるのも、他の神が許さないし……。)

 

 魂がよそに出て行って減るってことは、この世界の命そのものが減るってことだよな。

 

 こういう救世主を必要とする世界でこそ、なんでチート転生者を量産しないか、なんとなく内情がわかってしまう。転生する魂の獲得競争なんて、神様も世知辛いよ。

 

 俺も厄祭さんの勧誘、というか誘惑に乗らなかったら、元の平凡な現代社会か、どこかの平和な世界に転生してたのかもなあ。

 でも後から他の神に、「危ないからやめて、うちに来い」って忠告されたとしても、初めての相手である厄祭さんからは離れられなかったけどな!

 

 少しずつ弱味を打ち明けてきた厄祭さんの声と、無言で祈る美癒の舞姿に誓うように、俺はつぶやく。

 

「もう犠牲は出したくない。この世界に生まれた者として」

 

 美癒が思わず踊りをやめて、村人たちと一緒に視線を集中させる。この葬儀でのつぶやき声は、思った以上に周りに響くものだったみたいだ。厳粛な儀式を邪魔してしまった、気まずさを感じてしまう。

 

「ラック様…そのお言葉で、きっと魂は浮かばれると思います。ラック様は、この時代に現れた伝説のお方ですから!」

 

 美癒は感激した面持ちで俺に駆け寄って、その肌白いたおやかな手で、俺の手を取って握り締めてくれる。周りの村人からも、ありがとう、頑張ってくれ、と感謝の声が聞こえてくる。

 

 予想外の反響に、俺も戸惑う中、俺は厄祭さんの声もかすかに聞いた。

 

(ありがと、ラック君)

 

 ラック・アブソードが、勇者の門出を迎えようとしていた頃、その旅を総出で”歓迎”しようとする者たちが、闇に閉ざされた神殿に集まっていた。

 

 神殿の中央にある高い祭壇の上には、異形の人影。白い三角帽をかぶったようなつるつるした頭部に、頭を一周して配置された数多くの黄色の眼。長身痩躯の身体に、青白い触手をマントのように巻き付け、顔の下半分も髭のような短い触手でおおわれている。

 魔術師風のダイオウイカといったその異形は、自らを邪神官リスキッドと名乗る。

 蝕腕魔(テンタクラーズ)よりも高位の魔力を持つ蝕腕魔人(テンタクロイド)に属し、魔物の指揮を執る最高幹部の立場にいる。

 彼は祭壇と向かい合わせになっている、巨大な渦を巻く甲殻のような邪神像に、報告をしているところだ。

 

「おお我が神、例の村を襲った蝕腕魔(テンタクラーズ)は、返り討ちに会いました。人間にはその魔力さえ感知できなかった神器を、使う者が現れたのです」

 

 今までは、敵すべてを腐食させる魔力を秘めながら、人間は誰もそれには気づかず、脅威対象外だった天魔紫雲(てんまのむらくも)。ほとぼりが冷めて、伝説が風化した今こそ始末しようというタイミングで、まさか使い手が現れるとは

 

 その言葉に対して、邪神像からは、咀嚼音のような不快な轟音が響く。邪神官には、その意味が分かるようだ。

 

「ええ、今ならまだ始末できますとも。我が目で見たところ、神器を得たのは、魔法も知らぬ未熟な剣士。まだまだ神器を使いこなせてはおりませぬ」

 

 邪神官リスキッドは、自らの眼をギョロつかせて、眼球を多方向に向ける。まるで、遠く離れた場所の、勇者ラックの戦いを見ていたような口ぶりだ。

 リスキッドは顔を邪神像に向けたまま、全方位を向いた自らの眼で、祭壇の周囲を取り囲む魔物の群れに命ずる。

 

「諸君、我らが神は、神器の排除をお望みだ。この世界の女神の遺物さえ消えれば、世界は我らのものではないか?」

 

 リスキッドの呼びかけに、魔物たちは雄たけびを上げる。彼らのターゲットは、神器とその使い手、ラック・アブソードに絞られた。

 

 そうして焚き付けられた蝕腕魔(テンタクラーズ)たちは、村を出発したラックと美癒の一行へ、次々に襲い掛かった。

 

「死ねえ!世界は我らのものだ!」

「そうあっさりと…死んでたまるかよ!」

 

 殺意をむき出しにした蝕腕魔(テンタクラーズ)の触手に、こちらも死の刃で対抗する。

 

「霧斬(きりぎ)りの舞!」

 

 天魔紫雲(てんまのむらくも)から発生させた紫の瘴気を、剣を回転させることで周囲にまき散らす。厄祭さんから教わっておいた技の一つだ。

 

「毒か!おのれ!」

 

 この腐食毒の危険性を知っている蝕腕魔たちは、溶かされまいと触手を引っ込めて後退しようとする。

 

「逃がすか!」

 

 そうして体制が崩れたところを、本命の剣で次々にたたき切る。使い手の俺は、この毒霧の中でも平気で動けるとも聞いてる。やっぱ毒も聞かなくなるんだな、女神の駕籠。

 流石に美癒には隠れてもらってるけど。美癒は山道に慣れてるだけあって、前回のような油断さえなければ、隠れるのは上手い。

 

「奴に近づくな、距離をとれ!」

 

 遠巻きに触手の波状攻撃を仕掛けてくる敵もいる。

 

「紫煙(しえん)霧斬《むざん》!」

 

 そんな離れた相手には、紫の斬撃を飛ばす。向こうから間合いを取ってくれるから、大ぶりのこの技で狙い撃ちできる。

 

 とはいえ、数が多すぎて、俺も疲れてくる。敵が何体も沸いてくるせいだ。剣を握る手の力が緩む。

 

「ラック様!」

 

 美癒の声とともに、淡く輝く光の球が飛んできて、俺に触れると手の疲れが引いていく。

 

 美癒は回復魔法の魔力を飛ばして、少し程度の疲労やダメージなら、離れていても回復できる。回復役としては、戦いに巻き込む心配がなくて、かなり便利だ。

 このおかげで、俺一人でも魔物たち相手に体力が持つわけだ。

 

 だが、一瞬隙を見せてしまったらしい。

 

「隙ありだ!神器を渡せ!」

 

 触手に引っ張られて、剣を奪われてしまう。しまった!正面からじゃ勝てないからって、武器を奪いに来たのか。

 

「この神器さえ奪えば、貴様などひねりつぶして…ぐおあああっ!!」

 

 言い終わらないうちに、その蝕腕魔は全身から煙を上げて、ドロドロに溶けてしまい、後にはカラン、と剣だけが落ちる。

 

 厄祭さんに聞かなくてもわかる。持ち主から天魔紫雲(てんまのむらくも)を奪おうとすると、こうなるんだ。今度から盗まれたりしないように気を付けないと。泥棒まで腐らせる気はない。

 

 一瞬勝った気になっていた他の蝕腕魔も、今のを見て完全に及び腰になっている。

 

「嫌気がさしてるのは、こっちも同じなんだ。一気に決める!連毒《れんどく》霧斬《むざん》!」

 

 フルスイングから生まれたブーメランのような斬撃が旋回して、残る蝕腕魔たちを一気に切り裂いた。

 

 すぐに俺を心配して、美癒が物陰から出てくる。

 

「疲れた…ここまで露骨に狙ってくるなんてな」

「今日でもう5戦目ですものね…ラック様、すぐに回復させます」

 

 旅に出てからという物の、他の人間よりも魔物の襲撃にばかり出くわしている。

 

 もちろん神器を使って戦い、美癒の回復サポートもあれば、負けないんだけど…。おちおち休むことも、眠ることもできやしない。

 体力はその都度回復してもらってるけど、戦い通しで睡眠もとってないから、精神的に来るものがある。これが俗にいう、過労死しそうな労働環境か……。

 

「もうすぐ次の街です。そこでご一緒してもらえる人を探しましょう?」

「新しくパーティーメンバーを探すってことか」

 

 確か、魔物自身も、集団で挑んでくるのが常識って言ってたな。俺一人で無双してる今の状態って、長期的に見れば結構無茶なのかもな。

 

「それにしても、次に目指す街への道から情報まで、結構詳しいね」

「旅のお方から、一緒に来るようにと町の話をよく聞かされたからなんですけど…」

 

 なるほど、旅人からのナンパのせいか。全員そのあとフられたんだろうけど、こうして俺の役には立ってるわけだ。

 

「あっ、もう見えてきた。どの建物かな、仲介やってるのは」

「はい、確か人の集まる酒場かと…」

 

 そうして酒場に入ってみたわけだが、そこの女主人の対応はよくなかった。

 

「あんたたち、まだ子供の二人連れで、お金も持ってないでしょう?で、目的地が北の地だっけ?うちは迷子案内はやってないんだよね」

「俺たちは、神器を手に入れて、魔物を倒すつもりなんだ!」

「戦える仲間を紹介していただくだけでいいんです」

「そうやって息巻いてるくせに他人に頼る若造が、早死にするのを私は数えきれないくらい見てきたよ。少数精鋭なんて、ほんの一握りしか生き残ってない。

 うちも今じゃ帝国騎士団への紹介が中心なんだ。あそこにいらっしゃる騎士団に入ってみたらどうだい?北に派遣されるかどうかは、お上が決めるだろうけどねえ」

 

 そこには、金髪碧眼で鎧を装備した騎士たちという、いかにもなメンツが。

 その中でも、特に煌びやかな金髪と、輝く碧眼の女騎士がいた。、金髪をシニョンにして結い上げ、年齢的に20歳超えてそうな落ち着きがある。

 

 少し視線を合わせると、その女性は自分が答えるべきと判断したのか、話しかけてきた。

 

「少年、仲間がほしいなら、騎士団で力を合わせるべきだ。神器にこだわらなくても、戦う仲間はたくさんいる」

 

 女騎士らしく、男性的な凛々しい口調で、騎士団に勧誘してくる。流石に神器の伝説は信じてもらえないけど、あれっ?なんかいい人そうじゃないか?

 

「おいおいフルーラ、この俺を差し置いて勧誘か?」

 

 年が女騎士と近そうな金髪碧眼で鎧も豪華なザ・イケメンといった感じの騎士が、話に割り込んでくる。

 

「お言葉ですがレード団長、私も副団長の立場故、意欲ある若者を勧誘する権限はあります」

「お前の権限?そんなもの、俺がお前と付き合ってやってたからだろう?俺を通さずに味方を増やそうってつもりなら、今すぐ騎士団から出て行ってもいいんだぜ?」

 

 レード団長は、女騎士フルーラになれなれしく肩を組んで、耳元で脅し文句を口にする。周囲の騎士たちは、男女含めてそれをニヤニヤ眺めているだけだ。

 

 うわっ、フルーラって人は女騎士らしかったけど、他がひどい。人間関係が悪すぎて、こんな騎士団には入りたくない。

 

「おう少年、その女の子と一緒なら騎士団に入れてやるよ。まあ北の地に行くには、俺の許可がないと無理だろうけどなあ」

 

 そう言いながら美癒にまで好色そうな視線を向ける。美癒は「嫌っ…」と小声でつぶやき、俺はその前に立って、男の視線から隠す。

 

「結構です。数や権力に頼って、女性も守ろうとしない騎士団なんて、誰が入るか」

 

 かなり頭にきたので、辛辣な本音でお断りしてしまった。しかし、これでレードを俺と同じくらい怒らせてやったみたいだ。

 

「数や権力の恐ろしさも知らない、子供らしい発想だなあ、おい。お前は後で頼んできても、どこの騎士団にも入れないからな、覚えとけ!」

 

 レードたち騎士団は、すまなそうな顔をしているフルーラの肩をつかむと、ぞろぞろ出て行ってしまった。今から俺を騎士団に入れないよう根回しする気だろうか?しかし俺も、あんな小回りの利かない組織に頼る気はない。

 

「それじゃ、おばさん。騎士団じゃなくて、少数精鋭の人を紹介してもらえる?」

「自分で、騎士団を蹴っておいてよく言うねえ。でも今まで少数でやってきた強者たちは、今更組みたがらないと思うけど…」

「そんなこと言わないでさ、誰か一人ぐらい…」

 

 そうして見回すと、一人の少女が目に留まった。

 透き通った水色のサラサラしたおかっぱショートの髪に、クリスタルみたいに人を見透かしそうな目。俺より年下っぽい未成熟で小柄な体格だが、短剣を身につけた軽装はおそらく剣士のもの。

 さっきまでもめ事を起こしていた俺にも、無関心そうにして、店の掲示板を見ている。

 

「あの娘とかは?」

「ああ、ラドナはダメだよ。ずーっと一人でやってきてる魔法剣の使い手だから。一人で戦えるくらい強いけど、自分で魔物を探して狩ることしかしない。うちにも魔物の情報を聞きに来るぐらいさね」

「一人で魔物と戦えるって、まるでラック様みたいですね…」

 

 美癒が俺の背後にくっつきながら感嘆の声を上げる。確かに、俺も一人で苦労してるから、そのすごさは分かる。というか、美癒みたいなサポートもなしで、本当に一人で戦い続けてるなら、むしろそのコツとか聞いてみたい。

 見た目は儚げな美少女なのに、一人で戦う剣士というのも、興味をそそる。

 

「あの、ちょっといいかな?俺はラック・アブソード。聞いてたかもしれないけど、俺たち仲間を探してて…」

「私、仲間いない、零。これから必要ない、断(ことわる)」

 

 その鋭く冷たい目を細めた虚無すら感じる、チベットスナギツネにも似た眼で、バッサリと断られる。

 俺は今までモテて来なかったと自負してるけど、それにしても、女の子からここまで排他的な視線は向けられなかった。

 美少女から見下される時点で劣等感を刺激されるが、剣士であるのを加味すると、まさに殺すような目つきだ。

 

 謎めいた美少女剣士ラドナとの出会いは、美少女萌えすら感じない、「怖い」という第一印象だった。

 




美形の人ほど、険しい顔すると凄みが出るって、あると思います。
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