※この作品はR-18です。

疫病神から悪運チートもらって、ハーレム勇者目指す   作:gazerxxx

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今回は後半から新キャラのフルーラや、ラドナの視点が中心になります。


疾速の剣、舞う

美少女剣士ラドナを勧誘したら、いきなり突き放されて、ショックを受ける俺。

 

 いや、前世ならこんな扱いも納得だったんだけど、今の俺は女神の加護で第一印象は悪くない…はず。大和撫子な巫女さんの美癒を落とした自信を持って、声をかけてみたんだけど、早くも自信が折れそうだ。

 あるいは印象ではどうしようもないほど、ラドナが他人に冷たいのか?

 

「マスター、騎士団が来るところ、厄介な魔物あり。必(かならず)。手配書を。見(みる)」

 

 目の前がクラクラなって、落ち込んでる俺をスルーして、ラドナは女主人(マスター)に魔物の情報を聞いている。

 

「そうだけど、騎士団に出現情報を伝えたのもウチだよ?フリーの人に情報教えるのはねえ…」

 

 そう断りながらも、なぜか俺たちの様子をチラチラ伺う女主人。

 

「魔物は私が独力で見つけたことに。いつも通り、報奨金折半。応(おうじる)?」

 

「やれやれ一見さんの前で、そのからくりを話すとは、よほど騎士団に先を越されるのが嫌みたいだねえ」

 

 女主人は掲示板にも張らずにしまってあった手配書を出してくる。俺にはわからなかったが、そこに書いてある懸賞金らしき数字を見て、美癒は驚く。

 

「これって、魔物にかけられた懸賞金ですか?しかもこんなに高額だなんて…」

 

「何にも知らないみたいだね、お嬢ちゃん。こんなものはあくまで建前の見せ金。実際には支払われちゃいないのさ」

 

 女主人が愚痴っぽく内情を語り始める。

 

 各地を侵略する魔物には危険度に応じて、帝国から懸賞金がかけられて手配されるシステムがある。いや、あったというべきか。

 

 魔物の侵略が激しくなるにつれて、懸賞金のためでも戦い続けられる強者は淘汰されていった。現在では勢力の強まった魔物を倒すのは、徴兵によって規模の充実した帝国騎士団や魔術士団がほとんどらしい。

 

 低い懸賞金の小物を狙って細々と活動する賞金稼ぎは多いが、そちらの稼ぎは知れている。

 高額賞金の魔物は帝国の兵力によって討伐され、かけた懸賞金はそっくり帝国に還元される。

 

 かつては酒場も魔物の情報を広報して、情報料として賞金稼ぎと懸賞金を山分けにできた。

 だが今は懸賞金を出している大本相手に対等な交渉はできず、稼ぎは激減している。

 もはや高額懸賞金は、「アマチュアは手を出すな」と帝国がお達ししてるようなものなので、女主人も店に貼り出す気が起きない。

 

 だからこそ、ラドナのように高額懸賞金を狩る賞金稼ぎは貴重なのだそうだ。ただ、あまり目立ちすぎると帝国の不興を買ってしまうから、表向きはあくまでラドナには教えていない体(てい)にしたいらしい。

 

「懸賞金かけておいて払う気はないって、インチキくさいな…そうなると、ラドナちゃんって、さっきの騎士団なんかよりも強いってことか」

「そりゃあ、疾速の剣(エア・ブレード)のラドナ・ポーラと言えば、ウチを含めて酒場の貴重な得意客だよ。どこからか手に入れた人造魔装具(アーティマ)の使い手で、そして、どの魔物が相手でも、ひとりで戦うってのも有名だ」

「マスター、私もう行く」

「あっ、ちょっと待ってください!」

「まだ話は終わってない!」

 

 ラドナが手配書と地図を持ってさっさと出て行こうとするのを、俺たちはあわてて追いかけた。

 

 目的地までラドナを追いかけるも、俺たちを振り切ろうとしてるのか、追いかけるこちらが焦るぐらい走りが速い。透明感ある水色の髪がなびいて、風に溶けてしまいそうなくらいな早さだ。

 スタミナで女の子に負けてるつもりはなかったが、一速飛ばしでジャンプして見えるほどのスピードで、すぐ見失ってしまった。

 

 だがそれでも、ある程度の距離をついてくると、後はどっちに向かえばいいかの見当はついた。

 魔物による破壊の痕が生々しく残っていたからだ。それに、町から離れて人の気配が全然ない。おそらくこの先は魔物に占領されている。

 

 俺たちは気を引き締めて、その道を進んだ。

 

 ラドナやラックが目指す先の、もはや人間に放棄された土地では、騎士団が既に蝕腕魔(テンタクラーズ)と戦っている。

 

「さあ行け、敵を囲めお前ら!」

 

 騎士団長レードの指揮によって、蝕腕魔を四方から騎士が囲み、剣でそれぞれ2本ずつ蝕腕をなぎ払う。

 

 蝕腕魔が邪魔者を始末しようと蝕腕を伸ばすと、一斉に後退して回避する。

 

「くっ、雑魚の人間どもが、生意気に!」

 

 ヒットアンドアウェイ戦法でかく乱されて、人間を軽々跳ね飛ばす巨体を生かせない蝕腕魔。その攻防の中、蝕腕を伸ばしきってタコ頭の隙が生まれたところに、跳躍してきたレードが切り込む。

 

「かかったな、雑魚はお前だ!」

 

 団員を使って消耗させたところを、レードが上空からの剣撃で唐竹割りにした。

 

「ははっ!これで『俺が』斬った魔物は10体目。次の褒美で人造魔装具(アーティマ)を貰える日も近いか?」

 

 団員を先に戦わせて、止めを持っていって手柄を立てるのがレードのやり方。場面だけ見ると一撃で魔物を仕留めたように見えるも、彼の代わりに団員が汗をかいて疲れているのである。

 

「おいフルーラ!お前さっき、動きが作戦と違ったぞ?一人だけ出しゃばりやがって許せるか、なあみんな?」

「団長が出世すりゃ、俺たちもそのおこぼれに預かれるんだ。そこんとこ忘れんなよ!」

「団長にフられたからって、逆らってんじゃないの?カンジ悪」

「…すまなかった、以後気をつけます」

 

 騎士団から総スカンを食らって、金髪をシニョンに結い上げた女騎士フルーラは悔しくも上官に頭を下げる。

 

 フルーラからすれば、レードはかつて別れ話を持ち出したら逆にフルーラを束縛するようになった、最悪の上司。そんな男が手柄を立てる作戦に、協力する気になれるはずがない。

 

 だが、レードは交際していた頃にはフルーラを副団長に引き上げるほど、権力を振るうタイプ。騎士団ではそんな彼に追従するものが多く、女の騎士団員もフルーラがイケメンのレード団長をフッたことに妬みを向けている。

 

 副団長になった時は、人々のために戦えると思ったものだが……これでは副団長の威厳もあったものじゃない。いや、元々自分にはふさわしくなかったのかもしれない。フルーラはほかの誰にも聞こえないように嘆息した。

 

「それほど手柄が欲しいなら、我らが次の関門になってやろう」

「もっとも決して超えられない、行き止まりの門だがな」

 

 そこに新たな刺客が姿を現す。3メートルほどの人型の魔物で、頭部は4本の短い触手を伸ばしたタコと、触角の生えたナメクジを模したように見える。全身に硬く巻きついた触手は、騎士の鎧のようだ。

 

「何だお前ら?俺の斬られ役になりたいのか?」

「我らは蝕腕魔人(テンタクロイド)。貴様ら人間は、力と肉体で蝕腕魔に劣る代わりに、剣と魔法でそれを覆しているそうだな?」

「その技は褒めておいてやろう。だが、あの程度では我らには通用しないと教えてやろう」

「化け物が。お前らみたいな珍しい魔物を狩れば、俺も褒美をたんまりもらえるもんだぜ。行くぞ!」

 

 再び団員が蝕腕魔人を囲むフォーメーションをとる。それに対して蝕腕魔人は2本の蝕腕にまとわり着いた粘液を固めて、槍状に硬化させる。

 

「我らに足止めは通用せんぞ」

 

 いつも相手にしている蝕腕魔たちとは、何かが違う殺気。それに気づいたフルーラは、周りに警告する。

 

「危ない、伏せろ!」

「はっ、何言ってんだ…」

「蝕腕の円舞(テンタクロンド)」

 

 次の瞬間、硬度を高めた蛸足の槍が円の動きで振り回され、鋭い音を立てて騎士団の剣を折り、全て弾き飛ばした。

 

「俺たちの剣が!」

「剣で触手が斬れなかった…。何なのあいつ?」

 

 タコの蝕腕魔人はゆっくりと騎士たちに歩み寄る余裕を見せながら答える。

 

「粘液で鋭く蝕腕を固めれば、我らにも剣術とやらは再現できるということだ。蝕腕の槍(テンタクランス)」

 

 頭部と両腕から、槍と化した赤黒い蝕腕を伸ばし、6人の騎士を鎧ごと串刺しにする。断末魔を上げて、6人の騎士が瞬殺される。

 

「馬鹿なっ、魔物どもには俺たちの鎧を貫く強度はないはずだろ…」

「進化したのか…私たちの戦いを通して…」

 

 何とか蝕腕をかいくぐって、剣を確保していたフルーラは、今までとは格の違う敵に震えていた。やつらの口ぶりから、触手で鎧や槍を真似た姿は、まさにコピー元である騎士団を倒すためとしか思えなかったからだ。

 

 だが、そんな恐怖の中で動いていたものが一人。

 

「むっ、上から来るぞ!」

 

 触角をぴくぴく動かしたナメクジの蝕腕魔人が、上空から跳んできたレードの剣を、槍に変えた両腕で受け止めた。

 ほかの騎士団がやられているうちに、レードはタコ魔人の首を狙いにきたようだ。そのまま着地したレードは、ナメクジ魔人と鍔競り合う。

 

「チッ、化け物のクセに鋭いな…」

「自分の部下が死のうと、一人勝ちの戦法を変えないとは、大した騎士だな」

「死ぬほうが間抜けなんだよ…俺の剣は他のやつらよりも高級品だ。簡単には折れねえぜ」

 

 その言葉通り、ナメクジ魔人のコーティングされた槍の表面に、ヒビが入り始めている。

 

「ならば、こうすればどうだ?」

 

 ナメクジ魔人の槍が、不意に元の粘液状に戻る。すると鍔競り合っていたレードの剣に粘液が飛び散り、すぐさま凝固する。あっという間に、レード自慢の剣は刃が固められて、鈍(なまく)らに成り下がった。

 

「ああっ、俺の剣に何しやがる!」

 

 粘液でべっとりした剣で切りかかるも、まったく刃が立たない。

 

「次はお前が死ぬ番だ」

 

 ナメクジ魔人がレードの顔面に、唾でも吐きかけるようにべチャッと粘液を吐きかける。

 

「へぶっ!~っ、~っ!」

 

 顔面が透明な粘液にふさがれ、呼吸を封じられたレードは必死に空気を求めるも、喉奥まで粘液を流し込まれるだけだ。

 

 酸欠にもだえ苦しみ、粘液がその顔を完全に固めた頃には、レードは見る影も泣く無残にゆがんだ死に顔をさらしていた。まるでその本性を露にした、醜いデスマスクでも被せられたように。

 

 その凄惨な殺し方には、騎士団は戦意と言葉を失って呆然とするのみ。フルーラだけが、まだ剣を構えて辛うじて戦意を見せている。

 

「どうした?女一人以外は、もう我らに挑む気も起きないか?」

「いや、どうやらもう一人来たぞ。我らと戦うものが」

 

 ナメクジ魔人が触角を動かして予感したとおり、風を切って戦場に現れた少女剣士の姿が。だが彼女は倒れている騎士団には目もくれず、魔物だけをにらんでいる。

 

「お前ら魔物を、倒すのは私。独(ひとり)」

「ほう、剣士一人で我らを倒すというのか」

「ここは我が相手してやろう。そこそこ速いようだが、まだまだ我には感じ取れる範囲だ」

 

 ラドナのスピードをある程度感知していたナメクジ魔人が、ラドナの相手を引き受ける。

 

「疾速の剣(エア・ブレード)・解」

 

 ラドナは短剣を引き抜き、鋭いガラスのように研ぎ澄まされた刀身を見せる。

 

「真空斬(エア・スラッシュ)・撃」

 

 そのままラドナが短剣を振るうと、その刀身がブレて、一瞬消えた。その後に放たれた一陣のカマイタチが、ナメクジ魔人の胴を裂いた。

 

「なっ?ぐおおあっ!」

「何だ、どうした?」

「今の攻撃、我の触角でも、見えなかっただとお!

 

 胴の傷を再生しながらも、ナメクジ魔人は傷を負わされたことに怒る。

 

「様子見したのが間違いか…こいつは我が倒す」

 

 ナメクジ魔人は槍に変えた蝕腕を伸ばして、ラドナを串刺しにしようとする。

 

 ラドナはそれを、細い太ももを覆うショートパンツの裾をはためかせながらも、軽やかに回避する。ナメクジ魔人はそれを追いかけていく。

 

「あいつめ、ムキになっているな。まあ本気でかかれば、人間一人に負けるはずがない。我は残り物を片付けるか」

 

 残ったタコ魔人は騎士団に止めを刺そうとする。

 

「…来るなら来い。私は最後まで受けて立つ!」

 

 フルーラは最後まで孤立無援でも、戦おうとする。

 

 一方のラドナは、ナメクジ魔人の強力な槍撃をかわしながらも、カマイタチを連続で飛ばす。ナメクジ魔人は不可視の斬撃をいくつか触角で感知して蝕腕でガードするも、その手数によってダメージが蓄積していく。

 

「我の相手ばかりでいいのか?騎士団はもうすぐ全員死ぬぞ」

 

 ナメクジ魔人はラドナのペースを乱そうと、揺さぶりをかける。

 だが返ってきたのは、一切ブレのない射抜くような視線。

 

「戦って死ぬのは自己責任。それは私もお前も…全(すべて)」

「我より先に死ぬのは貴様だ!」

 

 逆に挑発し返されて、ナメクジ魔人は2本の蝕腕で両側から挟み撃ちにしようとする。

 

「疾風推進(エア・ブースト)・轟」

 

 その攻撃に対して、ラドナは魔法剣からの風に小柄な身体を乗せて、蝕腕の真上を飛んで突っ切る。目標はは、蝕腕を伸ばしきって無防備な本体。

 

「させるかっ」

 

 ナメクジ魔人は正面から迫るラドナに粘液を噴き出して、窒息させようとする。

 

「真空斬(エア・スラッシュ)・纏」

 

 ラドナは真空をまとわせた刃で粘液を一切寄せ付けず、ナメクジ魔人の首を切り裂いた。

 

「ぎあああっ!」

 

 ナメクジ魔人の首が落ち、頭を失った胴体は、そのまま崩れ落ちた。勝負は一瞬で決まった。

 

 まだ息のあるナメクジ魔人の首に、ラドナは剣を向けて問いかける。首だけのナメクジ魔人は、地を這うナメクジ同然の姿だった。

 

「私の故郷、北の地を襲った魔物はどこ?答(こたえろ)」

「あのお方への復讐が…貴様の戦う理由か…だがあのお方を売る魔物はいないだろうな…」

「これまで倒したザコじゃ話にならなかった。お前は?答えるか、それとも。死?」

「我が答えたところで、道端の害虫をつぶすように殺しそうな目をしているな。だがひとつ教えてやろう。あのお方を裏切る魔物はいない。あのお方は、我らを全て見ているからな…」

 

 それ以上答える気のないナメクジ魔人を、ラドナは踏み潰した。

 

「全て見てるって…何?」

 

 考えてもわからない。ラドナが探す魔物の手がかりは、故郷が滅んだ嵐の夜に見た姿。ダイオウイカが魔術師を装ったような姿だけだった。




ラドナの使う疾速の剣(エア・ブレード)は、人造魔装具(アーティマ)と呼ばれる魔力を付与された剣で、神器とは別物。貴重品ではあっても、魔術士が作って、帝国内で流通しているのが違う所です。

今回は視点がシリアスに変わりすぎて、フルーラやラドナが主役になってた希ガス。
真の主役は遅れてやって来ますよ!
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