※この作品はR-18です。

機動戦士ガンダム MSV  エリオット・レムの記憶   作:翔田美琴

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作者の勝手な妄想が妄想を呼んだ、モビルスーツ開発の神様・エリオット・レムの回想物語です。彼目線の半生を描いた小説でございます。誰が得とかそーいうのは関係なしです。作者の勝手な妄想ですが、モビルスーツの開発がされた年数はあっていると思います。多分。


ベルベットロープ

 私達はみんな、特別だと思われたい。

 特別な人間だ、と。

 私だって、そう思う。

 でも、周りからは「天才」という言葉をよく聞くよ。

 天才技術者・エリオット・レム…と。

 そうかな?

 別に、私は天才ではないよ。

 

 

 宇宙世紀0032年。

 私はサイド1で生まれた。

 親父はコロニー外壁の修理工。母親は専業主婦だった。

 地球連邦総合大学へ推薦入学するまで、親父の仕事の手伝いはしていた。

 でも、嫌だった。

 だから、自分なりの道を捜そうと、地球連邦総合大学に入学したのだ。

 その頃から、私は彼女と付き合っていた。

 将来の伴侶となる女性・アネット。

 あの頃からの付き合いなんだ。

 やがて、そんなキャンパス生活を送ると、大学の方から、地球へ留学するよう言われた。

 迷いなんてなかった。

 私は地球へ留学しに行くことを彼女に伝えた。

 

「地球?」

「ああ。地球へ留学することになった」

 

 初めての地球へ行くのに、当の自分は楽しみにしていた。

 だが、彼女を連れて行こうかと思うと別な話で。

 アネットは、私と付き合っているのを親に反対されているようだった。

 でも、当時の自分は青臭い青年だった。

 そんなこと知るか。みたいな気分で付き合っていた。

 

「いつ頃行くの?地球に」

「後、一か月後には行く」

 

 大学のカフェでそんなやり取りをしていた。

 アイスコーヒーを片手に、頬杖をして、話す。

 

「お前はどうするんだ?」

「そうねえ」

「あなたと離れ離れになるのは嫌ね」

「突然の話ですまないな。でも、大学の指名で留学が決まってね」

「まだ、一か月は時間あるから、一緒に行くかはお前が決めろよ?俺はとやかく言わない」

「ええ」

 

 そして、一か月後。地球行のシャトルの空港で、私は追うようにして来る彼女を見た。

 

「待って!」

「アネット」

「私も行くわ。あなたと一緒に。地球に」

「後悔しないな?」

「あなたと一緒ならそれでいいわ」

 

 これが、私の殺し文句だった。

 そして、地球へのシャトルに乗って、留学しに行ったんだ。

 今、思えば、物凄い、甘い生活だったな。

 多分、青春真っ只中だったような気がする。

 初めて、地球の空を見た時は…とても感動したな。

 まがい物ではない、本当の青空。

 どこまでも続く、青くて高い澄んだ空。

 そして、アネットとの生活。

 デートはもちろん、もっと深いところまでいった。

 まさに青春だった。

 あの頃は、お互いに身体を貪るように求めあった。

 クーラーもない部屋で、汗でびっしょりになって、お互いに身体を重ねた。

 終われば終わったで、一緒にシャワーを浴びると、結局は欲情して二回戦。

 その時の彼女の口癖は、もっと深く突いて…だった。

 

「もっと…深く来て…!エリオット」

「もっと…。もっと…!」

「アネット…!」

 

 あの頃、毎日のように、キスを交わした。

 学生生活は本当に楽しかった。

 真夏のプール。水の中でも愛し合った。

 自分の服がずぶ濡れになろうが、構わないで、真夜中にプールでするのは凄い刺激的な一夜だった。

 彼女は水に濡れる私をよく、髪の毛をぐしゃぐしゃにしていた。

 その方がセクシーだって。

 花火を一緒に観に行って、そこでの一夜は最高だった。

 真夏の夜の夢だった。

 骨まで溶けるような熱いキスをして、酒を一緒に飲んで、朝が来るまで…求めあった。

 もう、あんなに激しく恋に落ちることはないだろう。

 留学中は勉強もそうだったが、それより彼女と一緒にいる方の記憶が鮮明に残っている。

 そんな学生生活を送りながら、大学院まで進学した。

 大学院で勉学に励んでいる時だった。

 とある企業から、招聘の連絡を貰った。

 

 ジオニック社。

 サイド3にある大手の工作機器メーカー。

 この時ばかりは、私も喜んだ。

 同時に新天地へと移住することも示していた。

 一流企業からの誘いに乗らない手はない。

 ものすごくいいタイミングだった。

 アネットとの結婚。

 サイド3に移住したら、正式に籍を入れたい。

 そう思った。

 

「ジオニック社?」

「ああ。そこから誘いの手紙が来た。大学院を卒業したらここで働かないか?って」

「あなたはどう思うの?」

「相手は一流企業だぞ?誘いを断る理由がない」

「だから…アネット。結婚しようか?」

「やっと、その言葉が出たわね」

「一緒にいよう。もう君無しじゃいられない」

「いいわ…。あなたと一緒になる」

 

 人目をはばからずその時は抱き合った。

 大学院卒業と同時に、私はアネットと共にサイド3に移住した。

 初々しい新婚夫婦がそこにいた。

 サイド3。後のジオン公国。

 この頃から、このジオン公国は不穏な雰囲気が流れていた。

 そして、ジオニック社へ入社した。

 ここから、世界と私の運命の歯車が回り出したのだ。

 ここは、運命の始まりの場所。

 すべてのはじまりの天地だった。

 私の人生の転機もここだった。

 社内ではSUITプロジェクトなるものが発足して、私はそのチームのスタッフになった。

 そして、さして時間も経たない間に、チーフになった。

 そう。この頃からだよ。

 みんなは、エリオット・レムに敵う人間なんかいない。

 あいつは“天才”だ。

 そんな言葉を聞くようになった。

 天才…か。

 私は天才ではないよ。

 物事にやたらと固執する力はあったけど。

 ジオニック社に入社して、安定した収入を得るようになって、私達は夜毎、身体を重ねた。

 激しく身体を求めあった。

 私は彼女を貪るように抱いた。

 時には彼女に、SMみたいなこともした。

 ネクタイで両手を縛って、目隠しをして、わざと彼女に訊くんだ。俺は今、君のどこを触っている…?って。

 恥ずかしそうに答える彼女は…凄くきれいだった。

 目隠しプレイは結構、燃えたな。

 異常に興奮したのを憶えている。

 この辺りからだ。自分の口に髭を生やし始めたのも。

 それには彼女は反対しなかった。

 むしろ似合うって。

 そうして、今の私のトレードマークにもなった。

 そんな生活を送って、するとアネットは、私の子を宿した。

 そして、生まれたのが娘のジェニファー。

 その間、世界はどんどん不穏な方向に流れる。

 その当時から、私は知っていた。

 ジオン公国は地球連邦と戦争をするつもりだったのは。

 ジオニック社だって、軍の委託でモビルスーツの開発をしていたんだ。

 私の戦争はもう、始まっていた。

 ある日。ジオニック社で先輩に会った時の言葉が印象的だったな。

 

「一つ、アドバイスをしてあげる。ステージに上がり、スポットライトを浴び続けたいなら、邪魔者を蹴落とすこと。最後の一人になった時、使ってもらえる。他に何もいうことはないわね」

 

 本当にそうだった。

 私はテクニカルチーフになった。同時に背中を狙われる立場になったのだ。

 この宇宙世紀というステージに上がり、スポットライトを浴び続ける為に、邪魔者は蹴落とした。

 うまく相手を出し抜き、私はチーフの座を守ったんだ。

 その為に、相手の話をうまくはぐらかせて、返してしまうような言葉遣いになっていった。

 自然と自分のことを“俺”じゃなくて“私”と呼ぶようになった。

 けして自分の手は汚さず…自分の欲しい物を手に入れてゆく…。

 権力を…金を…何もかも。

 この頃からさ。妙にかしこまった口調になったのも。

 私は立場上、けして、むやみに慌てることは出来なかった。

 とりあえずは落ち着いて、周りを見渡すことから始めるようになった。

 ジオニック社に入社して、モビルスーツの開発が進むごとに部下を持つことにもなった。

 責任がついて回ることになった。

 

 部下の中でも特に印象に残っているのは、テオ君かな?

 テオ・パジトノフ君。

 一時的にジオニック社からホシオカという会社に出向に赴いた優しい青年。

 私もびっくりしたけど、彼、日本酒に弱かったんだね。

 しかも、酔うと脱ぎ上戸になるとは思ってなかった。

 私は酒には強いのかって?

 どうだろう。ただ、我を忘れるほど酔ったことはない。

 べろべろに酔った記憶もない。

 酒にはまあ、強いんじゃないかな?

 脱ぎ上戸でもなかったし。

 さすがにテオ君が、酔っぱらって、服を、背広を脱ぎだすと笑って止めたけど、面白い青年だった。

 後は、メイ君も印象的だった。

 ジオンの名家・カーウィン家のお嬢さん。

 でも、彼女こそ真の天才だと思う。

 出逢った当時はまだ、10歳の女の子だった。

 でも、あの頃から才能は傑出していたよ。

 まさに、天才少女だった。

 彼女は私のことを『エリオットおじさま』と呼んでいた。

 ジオニック社にいる時は、ほとんどそう私を呼んでいた。

 実際、メイ君と私は親子ほど年齢が離れていた。

 モビルスーツの開発の親子だったんだ。

 その頃は、娘のジェニファーも同じ位の年齢だった。

 メイ君とね。

 

 ジェニファーは、アネットに似ていた。

 髪の毛はブラウンで、でも瞳の感じは私に似ていた。

 元気で素直ないい娘だ。

 可愛いよ。こんな娘の父親で良かったと思う。

 そうして、モビルスーツの開発が進んでいくに従い、私はジオン公国軍に出向軍属になることになった。

 モビルスーツの開発に直接関わっていたから、自然と軍のトップに君臨するザビ家の人間たちとも関わるようになった。

 私はジオン公国軍の技術士官としての人生を歩みだす。

 初めて軍服に袖を通したのは、一年戦争が始まる、5年も前の話。初めて自分の軍服姿を見た時は、まるで違う自分がそこにいるような錯覚をした。

 私はジオン公国軍の少佐待遇で、ジオニック社から出向してモビルスーツの開発をした。

 軍人か。軍って時々、無茶な要求をする時があるんだよな。

 まあ、その無茶な要求も、上の人物からなら、受けざるを負えないけどね…。

 

 そうして、宇宙世紀0074年。

 人類史上初の人型汎用兵器・モビルスーツが誕生した。

 これが後の『ザク』と呼ばれるモビルスーツさ。

 ジオン公国軍は密かに戦争の準備に追われていた。

 世界は不穏な方向に流れていく。

 戦争が始まるのだ。

 私の戦争はもう始まっている。

 陰謀を打算と策謀の日々…。

 相手を出し抜く為に、私はライバルを蹴り落とす。

 宇宙世紀、そしてジオン公国軍でスポットライトを浴びる為に、自分の好きなように研究したいが為に、ライバルを蹴り落とした。

 でも、ザクの正式採用が決まるテストで、私は敗北を味わう。ライバルの他社が開発したモビルスーツに、遅れを取ったのだ。

 さすがに負けたと思った。

 でも、私の目の前で、その競合したモビルスーツは、空中分解した…。

 そうだ。勝負に負けて試合に勝ったとはこのことだった。

 私にも野心はある。

 だから、高機動型ザクⅡを開発したのだ。

 宇宙の王者の地位が欲しかったから…。

 家族のみんなには、私が戦争に参加しているのは伝えた。

 ジオン公国軍の軍属になった瞬間に、ね。

 実際には、モビルスーツに乗って、実戦を体験した訳じゃないけど。

 連邦軍の人間を殺すための研究を進めていたんだ。

 私の…我々が作った兵器が、何の罪もない人々を沢山殺しているのも判っていた…。

 私は血に染まっているんだ…。

 たくさんの犠牲の上に立っているんだ。

 たくさんの生命がこの戦争で奪われた。

 言い訳にしかならない。今更、何を言っても。

 自分が研究している物が、人の生命を奪っている。

 奪われたら二度と戻ってこない、かけがえのない存在を。

 自分がもし、そういう立場だったら…?

 戦争で愛する妻を娘を奪われたら…その時、私はきっと復讐に身を焼くだろう。

 それは連邦軍とて、同じことだった。

 同じ人間同士。ただ、地球に住んでいるか、コロニーに住んでいるかの違い…。

 運命の砂時計は残酷に時を刻む…。

 

 そして…あの一年戦争が始まった。

 みんなはあの戦争で何も失っていないって言うだろうけど、実際は私も失った人間だった。

 友人を、戦友を、故郷を、失った。

 私にはもう、帰る場所は、アネットとジェニファーの場所だけになったのだ。

 一年戦争中、私は月の裏側の基地、グラナダにモビルスーツ開発部門の最高責任者をしていた。

 なかなかサイド3へ戻ることが出来ない。

 その間、家族は私がいない寂しさをどう埋めていたのだろうか?

 つながれて泣いている絆があった。

 悲しい想い出の鎖が、つながれて泣いている絆を縛った。

 少なくとも、つながれて泣いている絆を私は感じた。

 戦況はどんどんジオン公国に悪い方向に向かっている。

 この世界には慈悲なんてない。

 思いやりでさえも混沌を受け入れろ、そういう世界だった。

 混沌とした一年戦争。

 その中で散り去る命。

 死者の記憶もあっという間に、時代に飲みこまれてゆく。

 ただあるのは、凄惨な殺し合い。

 この世界に溢れるのは憎しみ。

 その矛先が私に向けられることにもなった。

 やがて、一年戦争は、ジオン公国の敗北という形で、幕を閉じる。

 私はジオン公国に残留を望んだ。

 今更、ぬけぬけと連邦軍に協力なんか出来るわけがない。

 しかし、ジオニック社はアナハイムエレクトロニクス社に買収された。

 私はもはや、ジオニック社の社員ではなかった。

 そして、度重なる連邦軍からの依頼。

 私は、これからの人生を連邦技術本部付き士官として生きていくことに決めた。

 当然、連邦の士官からは、私をジオン公国の裏切り者みたいな言い方をした連中もいた。

 でも、地球で住んでいいとも言われたし、住む国も決めていい、場所も提供するとまで、向こうは言ってきた。

 私には断る理由がない。

 まだ、育ち盛りの娘もいたし、アネットだって、一年戦争中は私がいなくて寂しい想いをしたんだ。

 なら、傍にいてやりたい。

 もう、つながれて泣いている絆に縛られる必要もない。

 私は多分、一生、モビルスーツに関わるだろう。

 それが、私の使命だから…。   

                     

 

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