機動戦士ガンダム MSV エリオット・レムの記憶 作:翔田美琴
ジョフィエルとの交わりを終わらせたアリエルは、メイド専用の部屋に行き睡眠を取る。その翌朝のことだった。
メイドの一人、アリシアは折檻されたアネットの姿を見つめていたため、罪悪感が残っていた。
彼女はベッドから起き上がると、隣で鏡を見ながらせっせと身支度をするアリエルに訊いてきた。
「アリエルさん」
「何でしょうか?」
「奥様・・怒っているのかな・・?」
「・・・・」
申し訳なさそうにするアリシアに、アリエルは独特の大きな翡翠の瞳を優しく輝かせて、まるで魔法をかけるように、そっと自分の豊かな胸に彼女を抱き締めた・・。
「忘れてしまえばいいわ・・。すべてを忘れてしまえば苦しみから解放される・・」
アリエルに宿る”陰”の気がアリシアの身体に染み込み、そして唐突にアリシアの首にくっきりと首を絞められた痕が浮かび上がってきた。
アリシアはそう遠くない昔を思いだす。
それは彼女にとってはいつまでも焼き付いて離れないトラウマだった・・。
『もう映っているのですか?!』
テレビカメラの向こう側の彼女が飲んでいたお茶を慌てて置いて、マイクを片手に笑顔で話す。
『こんにちは!ラピス・ラズリです!今回は開局50周年記念番組の収録に参加させていただいて、こうしてチャンスをくださった脚本家の先生やプロデューサーの方々には感謝の言葉しかありません!』
笑顔でそう祝辞を述べた彼女は、テレビカメラの前でマスコミの取材を受けている。
『役についてですか?とっても楽しみにしています!映画の脚本を読むたびに胸がドキドキしてくるんです。私、引っ込み思案な所があって、だからあの人に憧れているんです。いつも向日葵みたいな笑顔でみんなを和ませているあの人・・アリシア・クロフォードさんみたいに。あんな風になりたいなあ。なれたらいいなあって』
彼女も向日葵みたいな明るい笑顔でその取材を受けていた。
とある日の朝。映画撮影の前の朝のことだった。
レムレースの山のふもとのホテルに泊まっていた彼女は、いつの間にかレムレースの山の中に迷いこんでいた。
深緑の緑溢れる森の中を歩き、そしていつの間にかレム家の屋敷の敷地に迷いこんでしまった彼女。
その彼女がある男性にぶつかってしまった。
「痛いー」
そのある男性とは、アズラエルだった。彼は不敵な笑みを浮かべ呟いた。邪悪な表情を浮かべて。
「ほう。さすがご主人様は趣味がいい」
「何をするの!?やめて!!」
アズラエルは彼女を無理矢理、庭の片隅にある納戸に叩き込んで、纏っている衣服を無理矢理破いて、ふくらみを露出させる。
鮮やかな金髪をわしづかみをして壁に叩きよせる。
「ご主人様がお前をお見初めになられた。お前はもう籠の中の小鳥だ」
「嫌ーーっ!!」
彼女が履いている赤いサンダルが池に落ちる。
そして、アズラエルは無理矢理、メイドの衣装を彼女に着させると、首を絞めながら激しく強姦し始める。
まだ濡れていない蕾に荒々しく分身を入れ、彼女はその蕾から穢れなき処女を奪われてしまった印である鮮血を流す。
「あはははは・・!!」
「痛いっ!!ああっ!!嫌!!嫌ーーっ!!」
「さすがはご主人は趣味がいい。いい花びらをしている。首を絞めると奥の肉が締め付けるようだ!あははは・・!!」
アズラエルは彼女の首を絞め激しくレイプをする。硬いテーブルの上で・・彼に散々凌辱された彼女は、花びらからは鮮血を流し、余りのショックで放心している・・。
(嫌・・。もう・・消えてしまいたい・・)
そこに現れたのがアリエルだった。彼女は凌辱させたアリシアを胸に抱いて、そして呪文のように言葉を囁いた・・。
「忘れてしまいたいのね・・。私と同じ・・」
アリエルも己の過去を思い出す。
(私も忘れてしまいたい・・。私はエリオット様を愛していた・・。あの人しか目に入ってなかった・・。でも、あの人の目に映っていたのは奥様だけだった・・・)
「簡単なことよ・・。心を無にして、気持ちを泉の中に沈めてしまえばいいの・・。それで忘れることが出来るわ・・」
アリエルの豊かな胸に抱かれるアリシアはその大きな茶色の瞳を虚ろにして・・心をあの泉に沈めた・・。
(私は・・ラピス・ラズリ役の・・アリシア・クロフォード・・)
そして、うわごとのようにまた台詞を確かめるように・・呟く・・。
「私は・・ラピス・ラズリ役の・・アリシア・クロフォード・・」
「そう・・。全てを忘れてしまうといいわ・・。それで苦しみから逃れられる・・」
その頃、はなれの屋敷に向かったエリオット・レムは、池に渡された木製の橋を渡り、そのはなれの屋敷に姿を現す。
彼の瞳に映ったのは、あの穢れが咲かせた真紅の椿だった・・。
そして、またもやその椿に魅了され、瞳を虚ろにしてしまった。傍には大奥様であるアレシア・レムがいた。
「来てくださったのですね・・」
彼女は椿の花が舞い落ちる庭に一角で・・彼を横たわらせ・・分身を取り出して・・愛撫しながら甘く囁く・・。
「ずっと待っていました・・。あなたのことを。そう、あの時・・私は死を受け入れながらも・・死に切れなかった」
彼女が彼を咥えながら・・続ける。
「でも、この街の穢れが咲かせたあの真紅の椿に・・あの花に出会って・・私は生き返ることが出来た・・。んんっ・・はあっ・・」
やがて、自分の熱く濡れた花びらに彼を受け入れ、形の良いふくらみを露出させ・・そして彼を激しく求め始めた。
「解き放たれし力・・!!全ての穢れを受け入れし器・・!!その力を私に頂戴・・!!その”穢れ”こそ・・私を本当に生き返らせてくれる力・・!!」
アレシアが腰を巧みに上下に振り出す・・。
彼は更に椿の魔力でますます瞳を虚ろにさせると彼女とも激しく交わり始める。己の欲望が赴くまま彼女の細い腰を掴んで、彼女の身体を上下に揺さぶって抱き始める。
「そう・・そうよ!!もっと激しく・・!!欲望のままに私を抱いて・・!!エリオット・レム!」
その虚ろな彼の瞳にはアレシアとアネットが重なって映る。自分の愛妻が喘いでいるように見える。
すると、彼はそこで正気に戻って、思わず行為を中断して、慌てて自分を抜いて言い放つ。
「違う!!私が抱きたいのは・・あなたではない!」
「ううっ・・!!」
すると突然、激しい頭痛を覚えるエリオット・レム。思わず右手で頭を抑える。
そこで突如、椿の魔力で作られた結界に穴を開けた人物がいた。
「やはりな・・!!」
そこには厳しい表情を浮かべたスカーレットの姿があった。
褐色の瞳を怒らせて、右手でその魔力の結界をこじ開けたのだ。
「ただの死霊ではないと思っていたが・・さすがは元レムレースの巫女だっただけはある・・!!これ程の力を・・死霊の身で宿すとはな・・!!」
そこでスカーレットはエリオット・レムに言い放つ。
「がっかりさせてくれるなと言ったろう!?エリオット!」
「くっ・・!スカーレット・・!」
「危うくお前は、この死霊にお前の力を利用される所だったのだぞ!!」
「やはり・・そうか」
そこで彼はふらつきながら、立ち上がり、そしてこのアレシアがやはり死んだ人間であったことに確信を持てた。
少々、力を持って行かれた彼は厳しい顔をアレシアに向ける。
「こいつの始末は私に任せて、お前は月面都市へ逃げる準備を始めるんだ!」
「頼む!」
そのまま屋敷へ駆けていくエリオット・レム。
そんな彼を追うこともせず、アレシアは独特の青味を帯びた紫色の瞳を妖しくきらめかせ、彼女を見つめている。
「あなたも良い力を持っておいでのようね・・」
スカーレットは拳銃を取り出す。
「エリオット・レムの力を使って、この世に蘇ろうとは大した肝の持ち主だ。だが、その為に行われる「月待ちの儀」は止めさせてもらうぞ!」
「あなたにそれが出来るかしら?」
スカーレットの周囲には屈強そうな男たちが集まり出した。皆が皆、不気味な仮面を被り、片手には鋭利なナイフが握られている。
「ちっ・・!!」
やがて、不気味な仮面の男たちは、恐ろしい叫びを上げて、スカーレットに何の躊躇もなく、襲いかかる。その数はざっと三十人はいる。
スカーレットとアレシアの魔力で操られた男たちとの戦いが始まる頃、エリオットははなれの屋敷から、本来の屋敷へ駆けて戻ってきていた。
そして、足早に自室に戻ると、スマホ片手に、近くの空港に連絡を入れる。
そこで、一番早い、月面都市・グラナダ行のシャトルの便の予約を取る。
(早く、グラナダへ逃げなければ・・!!)
『一番早い、グラナダ行のシャトルの便でございますか?・・五日後の日曜日、午後十時の最終便に三名様分の席が空いております』
「では、その便の三名分の席の予約を頼みます。代金はクレジットカード決済でもよろしいでしょうか?」
『はい。受け付けております』
「ではクレジットカード決済で支払いします。・・はい。はい。わかりました」
スマホの電話を切った彼は、決意を固めて呟く。
「五日後の午後十時か。そこが勝負だな」
夜空を見上げるエリオット。上弦の月は半月になり、そして満ち始めている。
月が完全に満ちるまで後、八日。
彼は娘のジェニファーの部屋に向かう。三回、ドアをノックした。
「お父さん?」
部屋にいた娘・ジェニファーに彼は突然の話をする。
「ジェニファー。突然の話ですまないが、今すぐに荷物をまとめ始めてくれ」
「もしかして、宇宙へ帰るの?」
「ああ。シャトルの便の予約を取った。グラナダ行のシャトルの便だ。そこに向かうぞ」
「うん。わかった。音楽大学の方はどうしたらいいの?」
「グラナダの音楽大学に通いなさい。それの手配は私の方でする。必要最低限の荷物でいい。持っていけるだけをスーツケースに入れて、整理をしなさい」
「わかった」
「五日後には出発する。それまでに荷物をまとめておいてくれよ?」
この五日間が勝負だな・・。
エリオット・レムは決意を固め、愛妻・アネットの部屋に戻る。
だが・・そこには、アネットの姿は・・なかった・・。