機動戦士ガンダム MSV エリオット・レムの記憶 作:翔田美琴
「メイ君。これ、知っているかな?」
唐突にエリオット・レムは、とある錠剤を、自分の部下であるメイ・カーウィンに見せた。
メイ・カーウィンは、その錠剤に書かれている英語のスペルを読み上げた。
「L・U・N・AーC…。ルナC…?何の薬ですか?レム中佐」
「あはは。本当にメイ君は健全なお嬢様だな。結構なことだ」
そんな彼女に、エリオットは笑って応えて見せた。
今は夜。月のグラナダで、メイはエリオット・レムの私室及び研究室にいた。既に夜の22時。だが、ジオン軍のグラナダ基地は、そこが夜であろうが、夜中であろうが、常に活動していて昼夜の差はない。
彼らの仕事の時間はもう終わっている。だから、メイも彼の私室にいるという訳だった。
エリオット・レムは自分のデスクの椅子に座り、己の長い脚を組んで、自分の部下である彼女にその錠剤の説明をした。
「ルナC。別名・天使の羽。最近、グラナダで流行っている新種の麻薬だよ」
「麻薬?!」
「そう。麻薬だ。元々は向精神薬として開発された合成麻薬だ。だが、強力な催淫作用があることが判ってね、そちらで先に注目された。確かにヘロインなんかと違って、注射針もいらないし、いろんな飲み物に溶けるから粘膜からの摂取も可能。手軽にハイになれてセックスの時も最高と来ている。その上習慣性や常習性もなし。流行るのも判るよ」
「でも、非合法ではないのでしょうか?」
「ああ。もちろん。だが、グラナダでは黙認だよ」
「何でですか?」
「それ、ジオニックで流しているんだ。大事な収入源なのだよ?」
「ええっ!?」
そこで彼女は度肝を抜かれたように驚いた。あのモビルスーツのメーカー、ジオニック社がそんなものを流しているなどとは初耳だった。
だいたい、モビルスーツを作る会社が、合成ドラッグを作っているというのも初めて聞いた話だった。
その裏事情を、エリオット・レムは話して聞かせた。
「しょうがないだろう?ジオン公国からの資金だけでは、出来ることに限りがあるし、モビルスーツ開発部門はわが社では特に資金源が必要な部署だしね。それの裏帳簿をジオニック社の第2経理部が付けていると聞くし…」
「でも…!?」
「それより…。メイ君。君もその”ルナC”を飲んだんだよ?休憩時間の時に飲んだコーヒーに入れておいたのだが、気分はどうかな…?そろそろ効いてきたのではないかな?」
「え…?冗談ですよね…?」
そこで、メイ・カーウィンはぶるぶると震え始める。だが、彼女のあどけない顔から、汗が出てきた。
「冗談?それはどうかな…?”ルナC”。口から摂取した場合、胃に溶けて通常、三十分から一時間程で効果が発現する。まずは顔面の紅潮。続いて、発汗。その後、圧倒的な陶酔感が来るぞ…。どうした?メイ君?顔が赤いぞ?」
「こ、これは気のせいですよ…!レム先輩が、変なことを言うから…!」
「へえ…?なら…」
エリオット・レムは、バスローブ姿の彼女に近づき、そっと…秘められし場所に触れてみる。彼の姿はまだジオン公国軍の中佐待遇の制服姿だった。しかし、いつもの白い手袋は外している。自分のデスクにそれを置いて、彼は目の前の部下が当惑する様子を見つめた。
「ここはどうしたのかな?随分と溢れているようだが、これも気のせい…かな…?」
「あうっ…」
「凄いね…。我慢できない感じだね」
そこで彼は、瞳を閉じて、彼女に言い聞かせるように、囁いた。まるで自分が体験してきたように、彼女の肩に触れ言った。
「大丈夫…。何も恐れる必要はない。すぐに何もかもわからなくなる…。他の一切がどうでもよくなる。頭にあるのは身に受けることだけ。身に受ける”快楽”のことしか考えられなくなる。身に受ける刺激が全て”快楽”に変わるんだ。そう…痛みさえも。薬が切れるまで、君は悦楽の虜になれる」
「はあっ…はあっ…」
メイは、そこで彼に縋りつくように腕を絡めた。エリオット・レムはただ前を…白い壁を見て…縋りつく自分の部下に顔を向けた。
「使ったことがあるんですね…?レム中佐も」
「ああ。一度だけな」
(嘘だ。本当は毎回、使用している)
縋りつく目の前の部下の唇に、己の唇を重ねる…。そのまま、ジオン軍の中佐待遇の制服のファスナーを開いて…彼らはベッドに倒れこんだ。
エリオット・レムは、そこで自分が犯したことを思う。
ジオニック社の上司連中…女性の上司を抱くとき、私は”ルナC”を飲む。薬なしでは辛すぎて自分が許せそうになかったからだ。
それをしているのを、私の妻は知らない。妻は、私が彼女以外の女を抱いているなんて、思わないだろう。だが、実際はそうではない。
私が思う存分、モビルスーツの研究をするための条件は、女を悦ばせることだった。そう代価として、私は”快楽”を売ることだった。
私がこの外見を持っている故に、女性の上司は私に”快楽”を代価として支払うなら、モビルスーツの研究開発をしていいと言われた。
金ではなかった。私はジオニック社の社員だから、給料を貰う代わりに”快楽”を売る。そうして、私の身体を求めている。
その行為をする時、私は”ルナC”を飲む。
今では常用し過ぎたため、ほとんど効果は感じられない。
それほど、私は”ルナC”に頼っていた…。
後悔はない。他に逃げ道なんてなかったのだから…。
なら…私は”ルナC”で獣になった。獣みたいな顔で…女を抱いた。
「すごい…もう…こんなになって…!」
「レム中佐…っ!」
エリオット・レムは目の前の部下のバスローブを剥いで、身体を愛撫し始める…。
彼女が、”ルナC”の効果で、身体を敏感に反応させた。いつも以上に…愛の蜜が溢れ出る。頬を赤くし、彼女の目の前の士官はまるで獣のように彼女を抱き始める。
「初めてだろう…?こんな感じになるのは…?」
「レム中佐…やめて…ください」
「何が”やめて”かな…?ここをこんなにして…」
「見ないで…見ないでください!お願い…見ないでください」
「どうして…?君のここは綺麗だよ?ほら、吸いつくようにひくついて…指に絡んで…私を逃がさない」
彼は目の前の部下の蕾に、己の指を絡ませた。彼の指に、彼女の愛の蜜が絡みつくように流れる。
彼は少し興奮している様子だった。その瞳を熱く濡らして、彼女が喘ぐ様子を見て、薄く微笑む。
だが、彼女はその薬で狂いそうな程の快楽で逆におかしくなりそうだった。彼のベッドにうつ伏せに倒れて顔を隠し喘ぐように訴える。
「気持ち良すぎて、ダメです…!!わたし…きっとひどい顔をしている。こんな薬で…こんなケダモノみたいな顔…先輩に見せられない…!!」
その言葉に、彼は瞳を見開いて…そして…心で思った。
(それは…考えてもみなかった。それでは、あの時、私もケダモノのように…快楽に身を溺れさせていたのだ。だからといって君を許すわけにはいかないな…)
「いいだろう。なってしまうといい。ケダモノに。いやらしい肉の悦びに溺れて、君も思う存分、”快楽”の虜になってしまうがいいさ」
彼はジオン軍の軍服を乱して、目の前の部下の愛の蜜で滴る蕾に、己を入れた。そのまま、セックスに溺れ始めた。彼は冷たい微笑を浮かべ、部下を蹂躙するように抱く。
彼女が悲鳴のような、甲高い喘ぎ声をあげる。彼を受け入れ、身体中に汗にまみれて…。狂気に囚われる。
「…どうして。どうして…こんな嫌な薬を、私に使うんですか?」
「……」
彼は目の前の部下の指摘に、胸を痛めた。でも、表情は相変わらず、すましたあの技術士官のままだ。
「こんな薬がなくたって…先輩となら…私は…!」
彼は薄く微笑し、瞳を閉じて、叱った。ジオン公国軍の制服を乱して、銀色の髪の毛も乱して、目の前の部下の蕾に己を入れたまま。
「生意気…だな。言わないでくれ。こんなの…ただの遊びだよ…」
そして、目の前の部下のふくらみを舌先で舐め…そして、冷徹に言ってのけた。彼女の顔を左手で掴み、快楽で当惑した部下を睨みつける。
「だから…いいかな?余計なことは、考えず、言わず、君は私の言うことを聞いていればいいのだ」
彼女は目の前の上司が、今は別の人格になっているような錯覚を覚える。まるで、普段見ている紳士が、そう、今は冷酷な紳士に見えて…。
彼は氷の微笑を浮かべると、彼女を抱きしめ自分の乱れた軍服に身体を密着させた。そして、言葉で責め始める…。
「さあ、いい子だ…。ふふ…そうだ…いい声だね…。素敵だ…メイ君。もっと、私に聞かせてくれ。君の恥ずかしい声を…」
「ああっ!あん!」
彼は目の前の部下を己で突き上げつつ、まるで八つ当たりするように身体を重ねた。ただ整えられた口髭も、唇も、薄い笑みの形にして…。
「ほら、ここは…?」
「んんっ!」
「ここは?」
「あうっ…」
「ほら…ほら…!いいんだろう?もっと、鳴いてみせてくれよ…?」
「あっ…あっ…もう…わたし…壊れて…!!」
目の前の上司は、荒い腰遣いで、目の前の部下を責め立てる。少し彼にも汗が滲み始める。その声は今は冷徹な男性だった。
彼女が荒い息をあげ、今にも…気が狂いそうなほどの”快楽”を存分に味わう…。狂乱してしまいそうな程の地獄のような…上司の”快楽”に飲みこまれる。
「いいから…イッていいよ…。ここは監視カメラなんてない。誰も見ちゃいないよ」
彼はそう言うと、彼女から己を抜き去り…背中を向けた。彼女は…淫らな声をあげ…無理矢理、快楽の絶頂に昇らされた。
しばらくの間…その部屋は沈黙で支配された。目の前の部下は、今は安らかに寝息を立てて眠っている。
彼は…ふらりと身体を起こすと…悲しそうな瞳を向け…そして…呟く。
「メイ君。私には、その薬は効かないんだ…。私にはその薬は効かない。いいや…。薬だけではない。私の…救いになるものは…何にもない…ここには…ないんだよ」
君は私のような人間になるな。ジオニック社のホストみたいな私みたいになるな。陰謀も、策謀も、会社の打算も、利益も…関係なく生きてくれ…。
私は、己の為に、身体を売って…研究をしている。娼夫なんだ。君はそんな風になるな。穢れのない女性でいてくれ。
彼は笑いながら…涙を流して…自分のデスクの椅子に腰をかけて…長い脚を組んだ。
ただ、乱れたジオン軍の軍服姿の彼が…唇を笑みにして泣いている姿があった。