機動戦士ガンダム MSV エリオット・レムの記憶 作:翔田美琴
題材はR-18PCゲーム「女系家族~淫謀~」から独自にガンダムの世界観を混ぜて、お送りしたいと思います。
女系家族 ~淫謀~(いんぼう)編です。
女系家族 ~淫謀~ 01 妖艶なる塔
サイド3に本社を置くジオン公国最大手の会社。ジオニック社。
つい最近になり、そのジオニック社の経営を担当する一族の長が亡くなったことが今、ジオン公国内は元より、その外のコロニーにまで話題が広まっている。
ジオン公国のとあるコロニーにはその象徴となる塔がそそり立つ。富と権力と謀略の象徴として。
ジオニック社の社長を務めるファミリーネームの名前はバートン家。そして亡くなったのは当代随一の好色者と呼ばれた人物…エリアス・バートン。
その生涯で変えた妻は9回にも上り、捨てた愛人は数知れず。
美人の女と見れば、彼はその金と権力を武器に次々に肉体関係を築いて、色欲と強欲の限りを尽くしてきた。
政財界の大物や誰でも知っているような大物政治家とも太いパイプを持っていたこの怪物が亡くなったのだ。唐突な死だった。
死因は心不全。何でも、このエリアスだけが知り得る部屋の中、彼一人が倒れて亡くなっているのをある一人の女性が発見し、そしてここまでの大騒ぎになったという。
そして、この怪物が死んだことにより、ある席が空白になったのだ。
言わずと知れた、ジオニック社の社長の座。
そして、誰が口にしだしだのか、とある者が口にした。
”次の王は誰か?”と。
呆れた当主の人生など、葬儀が終われば皆忘れる。だが、忘れてはならないものもある。
”次の王は誰か?”ということを。
俺は、その言葉を誰よりも、噛み砕いて考えていた。
エリアスには三人の娘と妻がいた。そして、今、空白になった王座を賭けて、この遺された女たちがそれを巡って争っているのことを知っている。
いや。そんな物ではない。強欲であるが故にエリアスは、どこかにあるという金庫に大事に貯めた”裏金”があるという。
彼女達はその”裏金”を探し出そうと躍起になっているのだと、あらかじめ潜入させておいた”愛妻”から聞いた。
ジオン公国が一年戦争を今にも始めようと躍起になっているこの時期に。
俺はその亡くなった社長がいる会社「ジオニック社」のMS開発者。
だが、同時にこの謀略に満ちた争いにこれから飛び込もうとしている者の一人。正しくは、”二人”…。
俺の愛妻とそして俺がこの妖かしに満ちた塔でこれから危険な綱渡りをしようとしている。
俺の名前は、エリオット・レム。
この妖艶なる塔にて、色と欲と謀略に満ちた物語を紡ごうとしている。
葬儀が終わったばかりのジオニック社の多目的ホール。
何故か俺は、技術陣なのに、秘書まがいの仕事をさせられている。
それは他の皆も一緒だった。他の技術者も今は終わったばかりの社長の葬儀の片づけに追われている。
その葬儀のホールに喪服姿の女性が一人いる。
その背中は悲しそうに、だが気配はその憎い夫に引導を渡していると表現していい雰囲気を出している。
艶やかな黒髪のロングヘアーの若い女性…とは言ってもそれでも40代はいっているが。
だが、この女性は俺でも知っている。
彼女はエリアスの9番目の妻。すみれ・バートン。
今時、珍しい日本人系の女性で、美貌の妻として有名だ。エリアスの心を鷲掴みした美貌はさすがのものである。
とりあえずは顔でも売っておくか。
そう思った俺は、その黒髪の女性に声をかけた。
「奥様…」
「あなたは…?」
「私、このジオニック社のMS開発者の一人のエリオット・レムと申します。ご挨拶を申し上げていませんでしたので」
「まあ…。わざわざ」
「この度は旦那様が…。心中、お察しいたします…」
「ええ。ありがとう」
「私で良ければお力になりますので」
「まあ、感心だこと…。力になってくれるのであればよろしくお願いしたいわ…」
……まるで、俺のことを子供扱いだな。
まあ、いいさ。今はそれでいい。何も知らない技術屋ってのも武器になるからな。
そんな時だった。
俺が聞きたくない奴の怒鳴り声が聴こえた。
「エリオット!こんな所で何を油を売っている!?」
「……」
「この葬儀が終わったら、次はパーティの準備があることを忘れたのか?!」
「パーティ…?」
ああ。そんなこと、聞いたな。確かに。俺には関係のないパーティが、ね。
「早く会場の掃除を終えて、お前もそのパーティに来るんだ。ただし、ボーイの代わりに、な」
「わかりました」
「ふん。これだから、技術屋ってのは…!」
こいつの名前は、ジオニック社の経理部長のパトリックって野郎だ。何でもジオニック社の顧問弁護士を務める、ウォルターと組んでジオニック社の金の流れを操っているという噂だ。
俺には関係のない奴と言いたいが、まあ給料の元締めがあいつじゃ歯向かった途端に俺の給料を減らすに違いない。
ここは穏便にするさ。
「エリオット」
「アネットさん」
「さっき、すみれ奥様にいやらしい視線、送っていたでしょう?目が野獣みたいに輝いていたわよ」
「そんなことないですって」
「またまた。そんなこと言って」
「本当に違いますって」
この眼鏡をかけた秘書はアネット・シンプソン。だが、正体を明かすと実は俺の愛妻だ。
メガネは実は伊達メガネで本来は彼女は眼鏡なんてかけない女性だ。ちなみにジオニック社の第2秘書として潜入してもらった。
俺がわざと敬語を使うのは、それは彼女と俺は赤の他人であると見せるため。
だが、心の底では、彼女と俺とで、バートンの裏金を奪おうと企んだ者同士だ。
「パトリックさんがあなたを呼んでいるわよ」
「あの人が?どこにいるのですか?」
「ジオニック社の2階の会議室の隣、一番奥の部屋。確か、この会社では珍しい木製の扉だからわかりやすいはずよ」
「あそこですね」
「すみれ奥様の喪服姿、そんなに綺麗だった?あなた、少し欲情している目をしていたわ」
やれやれ。俺もまだまだ修行不足だな。実際にあの喪服姿はそそられた。あんなに喪服が綺麗に見えたのも初めてだ。
俺は”ふん…”という感じで、目を閉じていた。
「あなたはどう感じました?」
「まあ、女の私から見ても綺麗だなって思ったわ。さすがはエリアスを落とした奥様よね~。あなたも大変ね。パトリックさんの八つ当たり相手というのも」
「仕方ないですよ。MS開発者だからといって下っ端であることは変わりはないですから」
(まあ、このまま下っ端でいる気はさらさらないが、な)
「フフ…」
「俺、何か変なこと言いました?」
「貴方の目、今、野心に輝いていたわ。”このままで終わる気は毛頭ない”って」
やれやれ。まだまだ俺も子供だな。そんな顔を彼女にわかってしまうなんて。
俺の野心に輝く目を見た彼女は注意を促すように、こう声をかけて、パトリックがいるという書斎へ向かうように言ってくれた。
「まあ、野心はともかく、まずはここの後始末を終わらせて、書斎へ向かった方がいいわね」
「そうだな」
そうして、葬儀場の後始末を終えた俺は書斎へと向かった。