※この作品はR-18です。

機動戦士ガンダム MSV  エリオット・レムの記憶   作:翔田美琴

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これもまた作者の勝手な妄想が生んだエッチな小説です。
時系列で言うと宇宙世紀0082年。スターダストメモリーの一年前の設定です。
なお住んでいる所がイギリスというのも作者の勝手な妄想です。ジャブローに住んでいるとかそーいうのは一切関係なしです。


Killing Me Softly ~やさしく殺して~

 宇宙世紀0082年。

 とうとう私も節目の50歳になった。

 何かあっという間の人生だったな。

 それくらい、この宇宙世紀は様々な事柄があった。

 私の戦争は、それこそ俗に一年戦争と呼ばれる、ジオン公国と地球連邦との戦争が起こる5年も前から始まった。

 いや。もっと前から。

 私がジオニック社に入社した時から、始まったのだ。

 ジオニック社。ジオン公国の最大手の兵器開発会社。

 後にモビルスーツと呼ばれる人型兵器が生み出される会社。運命のはじまりの場所。

 この奈落のような、地獄のような、混沌とした世界に、私は脚を踏み入れた。

 覚悟はしていた。こうなることくらい。

 でも、この世界に慈悲はない。

 思いやりでさえも混沌を受け入れろという世界だった。

 残酷な時の砂時計は、運命の日へ向けて、刻んでいく。

 時に宇宙世紀0079年。

 その日、世界の運命が動きだした。

 私の運命も、残酷な砂時計のように刻まれていく。

 当初は何もかもうまくいった。

 実際はモビルスーツを産みだす苦しみを味わったが。

 ジオン公国は最初は優勢だった。だが、連邦にとあるモビルスーツが開発されたことで、ジオン公国軍は破滅への坂道を転がり落ちていく。

 やがて、ザビ家の人間たちの権力争いで、ジオン公国は一年戦争を敗北という結果で迎えた。

 あの時の、敗北宣言の放送は、工業コロニー内で聞いた。

 いつの間にか、私の戦争は終結していた。

 あの時はサイド3に残留したかった。

 今更、連邦に戻った所で、ジオン公国軍の技術士官だった過去は変わらない。

 でも、連邦軍は何度も何度も、私の下に訪れて、私に連邦技術本部に士官として迎えたいと言ってきた。

 丁度いいかも知れないと思った。

 娘のジェニファーに本物の空を見せてやりたい。

 作り物ではない、本当の青空を。本当の太陽を。

 昔、私が初めて地球に留学に行った時に見た感動を、娘にも味合わせてやりたい。そう思った。

 悪い条件でもなかった。

 連邦政府は、地球に住む所を用意してくれると言ってくれていたし。私が望む場所で暮らしていいとまで宣言した。

 という訳で、イギリスに住むことにした。

 そこが住みやすいからだ。

 それに、クリスマスになれば、雪が降る。

 雪のあるクリスマス。

 白銀の雪が降るクリスマス。

 悪い景色ではない。むしろ好きだった。

 確かに寒さが身に染みる季節ではある。

 でも、その方が季節を感じられていい。

 今までは一年中、快適な温度で暮らしていたけど、クリスマスという感じはしない。

 でも、今は、イギリスの街はクリスマスの景色で華やかな雰囲気だった。それらしく感じる。

 この日もあいにくの雪だったが、街に響く鐘の音が、心地よく聴こえる。

 白銀の雪が舞う。

 まるで、自分の髪の毛のような銀色の雪。

 その景色を、今は私は、我が家の窓から眺めていた。

 外の景色に目を奪われていた。

 凄い静寂に包まれている。静かで心地よい世界。

 機械の音で四六中囲まれていたあの頃とは、天と地の差だ。

 ストレスも感じない。

 このまま世界が平和でいてくれたら…と思う。

 せめて、この地だけには、戦争なんて訪れて欲しくない。

 だが、私が日々研究しているのは、人殺しの研究だった。

 モビルスーツは人殺しの兵器。

 人間は昔からの業を捨てきれずにいる。

 殺しあわずにはいられない。

 互いの理想が、互いの利害が、互いの感情が、対立する限り、戦争は終わらない。

 だが、今だけは平和でいて欲しい。

 このクリスマスの夜だけは、平和であって欲しい。

 今日は、彼女と外で食事に行くんだ。

 約束したから。戦争が終わったら、食事に行こうという約束をしたから。

 今日は、その約束の日だった。

 今日は、朝から準備に追われている私がいた。

 随分と久しぶりのデートだった。

 今日は平日の金曜日だった。

 久しぶりのデートということで、既にレストランには予約は入れておいた。

 なかなか予約が取れない高級レストラン。

 でも、幸運にも、予約は取れて良かった。

 一安心したのもつかの間で、今度は今夜のデートに着る服に頭を悩ませている私がいた。

 

「どのスーツにするかな…?」

 

 私は自室のクローゼットの中を覗いてみた。

 何着もあるスーツの中で、今日は特別な夜会ということで、思い切ってタキシードをクローゼットの奥から出した。

 お揃いの灰色のベストもある。

 ネクタイは黒い蝶ネクタイ。

 私は鏡を見ながらその服装をタキシードに着替えた。

 随分と久しぶりに着る気がする。

 それまで、ジオン公国でもパーティがあったが、あの時は軍属だった私は、ジオンの軍服を纏って姿を見せた。

 めったにタキシードなんて着ることはなかった。

 最後に仕上げに、黒い蝶ネクタイを首に巻き付け、準備を終わらせた。

 外は寒いだろうから、一応、黒いコートも上に羽織る。

 私がダイニングルームに来ると、アネットもイブニングドレスを着て待っていた。

 それを見ていたジェニファーは、私達に声をかけて、家から見送ってくれた。

 

「たまにはのんびりしてきていいよ?」

「ああ。そうするよ」

「留守番頼むわね。ジェニファー?」

 

 彼女は笑顔で私達を見送ってくれた。

 自分達の使用する電気自動車に乗って、私達は夜のロンドン市内にある高級レストランへと車を走らせる。

 街灯はクリスマスのイルミネーションが輝き、白銀の雪も降る。それが幻想的な美しさを映し出している。

 街の要所にはクリスマスツリーが飾られ、サンタのコスプレをした男性が、街の店のPRをしている。

 やがて、私達が乗る車は、閑静な住宅街に入って行く。

 閑静な住宅街も今はクリスマスのイルミネーションで家全体が光輝いている。

 車の運転をする私は、その光景に感心した。

 

「毎年見るけど、この光景は凄い綺麗だな」

 

 落ち着いた青いイブニングドレス姿のアネットは私の一言に応える。

 

「何だか今夜は本当に久しぶりね。あなたとデート」

「ああ。約束したからな。戦争が終わったら、食事に行こうって」

 

 やがて、その目的のレストランの外観が見えた。

 レストランの名前は“ブルーローズ”。

 まさに都会の喧騒から離れた隠れ家的なレストランだった。車を駐車場に停めた。

 レストラン・ブルーローズに取りつけられたレトロなベルが鳴った。

 私達がこのレストランに来たのは丁度午後の6時。

 私は事前に予約を取ったことを知らせる為にスマートフォンを取り出し、店員に見せた。

 

「ご予約されたエリオット・レム様ですね。では、こちらにどうぞ」

 

 ブルーローズの店内は、全体が木目調で優しい雰囲気だった。部屋の照明も明るく過ぎず、目に優しい。

 私達は木製のテーブルに白いテーブルクロスが敷かれたテーブルを彼女と共に囲む。

 

「食前酒はいかがでしょうか?」

「私はいい。ノンアルコールのカクテルとかはないかな?」

「レッドローズというカクテルが当店の人気カクテルでございます」

「アネット。君はどうする?」

「では、赤ワインをください」

「こちらが今夜のディナーのお品書きとなります」

「では、本日のお勧めディナーをいただこうかな」

「私もそれでいいわ」

「少々、お時間をいただきますがよろしいでしょうか?」

「ああ。構わない」

「では、お料理が出来上がるまで、少々おくつろぎくださいませ」

 

 黒いコートを脱いだ私は、自分の椅子にそれを畳んでかけた。中の空気は暖房があって暖かい。

 

「あなたって変わらないわねー。その外見」

「え?」

「本当に今年で50歳?そうは見えないわ」

「そうかな?歳相応だと思うけど?君こそ変わらないな?」

「そうかしら?あなたと一つしか変わらないけどね」

「でも、そういう方がいい。いつまでも若く見える方がいいよ。お互いに、ね」

「そうね?あなた、本当はジオンにいたかったのでしょう?」

「本当はな。だけど、みすみす連邦政府も私を捨てる選択はなかったようだし。そりゃあ、戦争には負けたけど、戦争の勝ち負けで生活が変わるようなものじゃない。特に、私が選んだ仕事は、これからますます発展するものだ。なら、育ち盛りのジェニファーが安心して暮らせる選択をしただけだ」

「あの子、最近、バイオリンが上手になったわよね」

「もしかしたら、才能があるかもな。娘にまで、私の後を継がせようだなんて、思わない」

「それよりも、一年戦争中は君に寂しい想いをさせてしまったような気がする。なかなか家に戻れないですまない。あの時は本当に戦争のことしか頭になかった」

「でももう寂しい想いはさせない」

「いいわよ。今更、謝らなくても。今ここにあなたがいることで埋まったわ」

「そろそろ一緒になって30年近いな?」

「何かあっという間ね。色々、あなたの周囲でもあったし。でも、不幸だなんて一度も思ったことはないわよ」

「それよりもあなたが苦しい方が気がかり」

「…俺が連邦軍でジオン公国の裏切り者呼ばわりされていることか?もう慣れたよ」

 

 私はそこで笑って見せた。

 

「そう呼ばれることくらい、判っていた。俺は曲がりなりにも元ジオン公国の人間だ。ジオンの象徴であるモビルスーツを作った人間だ。今更過去は消せない」

「だって、過去を消したら、今の君もジェニファーもいなくなってしまうよ。それは嫌だな」

「そう言えば、まだジオン公国で技術士官をしていた頃、あなた、私にだけ言っていたよね。いつものマッサージを受けながら…」

「あれか?あのマッサージは気持ち良かったな」

 

 実はジオン公国で技術士官をしていた時だが、そうしょっちゅう家に帰宅できたわけではないが、サイド3の我が家へは帰宅は許されていた。

 その度に、アネットから私に肩のこりを和らげる、マッサージを受けていたのだ。

 私は素直な人間ではないから、いつも憎まれ口をきいていた。でも、彼女と共にいる時だけは、そういう素直な自分に戻れた。

 その時が大概、ジオンの軍服をそのまま纏って帰宅していたのを憶えている。

 

「たたいまー」

「お帰りなさい。エリオット」

「ああ。やっと暇が貰えたよ。だから、帰ってきた。ジェニファーは?」

「まだ学校よ?」

「そうか…。それにしても、久々に肩が凝ったな」

「今のうちにする?いつもの」

「ああ。頼む」

「寝室で待っていて?軍服も脱いで、上半身裸でベッドにうつ伏せで寝ているのよ?」

「わかったよ」

 

 ジオン公国軍の中佐待遇の派手な軍服を脱いで、近くのハンガーにそれをかける。下のインナーシャツを脱いで、上半身裸になった私は、枕に顔をうずめるようにして、彼女を待った。

 温かく熱せられた温湿布が、私の背中に置かれる。

 そうして、いつも妻のマッサージを受けていた。

 

「うっ」

「だいぶ凝っているわね」

「ジオン公国軍では、だいぶ、突っ張っているからな」

「この戦争…あなたはどう思っているの?」

「このジオン独立戦争か…?」

 

 彼女の背中のマッサージを受けながら、正直な気持ちを話した。

 

「負けるよ。たぶん…」

「何故…?」

「連邦軍はモビルスーツの量産に成功した。それも、コストパフォーマンスに優れた優秀な機体を。このままジオンが、いくら優秀な性能を持ったモビルスーツを開発して、量産出来たとしても、連邦軍の圧倒的な生産能力に、勝てるとは思えない」

 

 私は枕に顔をうずめて笑って見せたよ。心地よい、妻のマッサージを受けながら、迫る現実を素直に話す。

 

「それにジオン軍には、最大の脅威がいる。例の『木馬』さ。彼らは、あの青い巨星を、黒い三連星を、撃破してしまった。昔からの知り合いが、次々、彼らのせいで私は失っている。彼らは失ってはいけない宝だったのに、な」

「悔しい?」

「ああ。悔しいな。でも、私には優秀なモビルスーツを開発することが使命だから。仕方ないさ…。いたた…っ」

「ちょっと、凝り過ぎていない…?」

「念入りに頼むよ…うっ…」

「あなたも身体の感じは変わっていないわね」

「モビルスーツの開発って、意外と体力も使うからな」

「眠れているの?月のグラナダでは?」

「だいぶ、生活は乱れているよ。夜中まで起きている場合が多い」

 

 彼女のマッサージは全身の凝りをほぐす。

 そのまま、眠りに落ちてしまいたくなる。

 

「あなたもいい加減、中年なんだから、少しは身体のことも考えたら?」

「何を言いだすかと思えば…そんなに親父か?」

「昔よりは体力は落ちている感じねー」

「ふん…。あっちは元気なんだがな」

「この辺、すごいわね。ちょっと痛いわよ~?」

「いたたっ。そこは効く!」

「軍で突っ張り過ぎよ。あなた。ストレスが溜まっているんじゃない?」

「あそこは、ストレスの塊だよ」

 

 そうやって、アネットに愚痴をこぼしたものだ。

 でも、私は戦争に勝ちたいわけじゃない。

 より性能がいいモビルスーツを開発したいだけだ。

 例え、戦争に負けても、モビルスーツが商業としてベースに乗ったからには、私はそれの研究をすればいい。

 だから、戦争の勝ち負けには別段こだわってはいなかった。

 だが、友人が戦争で命を散らしていく。

 その現実は、私には辛かった。

 友人を悼む暇もないまま、一年戦争はどんどん激しさを増している。

 そして、ジオン公国は、結局は、私が予想していた通り、敗北してしまった。

 最初から見え切った戦争だったよ。

 今にして思えば。国力の劣るジオン公国は、あの南極条約の時に戦争を終わらせておけばよかった。

 だが、運命とは皮肉なものだ。

 そのまま、ジオンはなし崩し的に、慣れない地球での戦いに、どんどん疲弊していく。

 そして、どんどん、私達が作ったモビルスーツは、戦争の中でより鋭い刃になっていく。皮肉なものだ。戦争がなければあそこまでモビルスーツは進化しなかった。

 でも、私もその戦争中で生命を奪っている人間でもあった。

 実際に引き金を引いて殺したわけではないにしろ、連邦軍を倒す為にモビルスーツを開発する。

 人を殺す研究をしていたに過ぎない。

 私も、血で汚れているんだ。

 私は思わず、失笑したよ。

 

「ふふふ…っ」

「どうしたの?いきなり、笑って?」

 

 アネットのマッサージを受けながら、そんな自分に惚れた女性がそこにいることに笑った。

 

「なあ…?」

「何?」

「戦争、終わったらでいい。食事に行かないか?」

 

 マッサージが終わると、私は最後に肩を回して、そのままベッドに横になって言った。

 上半身裸の上に白いシャツを着ながら、彼女を誘った。

 

「たぶん、ジオンは負けるよ。その時、俺はジオンにいるかわからないけど、たぶん戦争にはもう加わらない。時間も出来ると思う。だから、クリスマス・イブとか、そういう特別な日に、食事に行かないか?夫婦二人で」

「クリスマス・イブに夫婦二人きりで?」

「ああ。このマッサージのお礼をしたいし」

「私は別に見返りを求めてやっているわけじゃないわよ」

「君はそう思うだろうけど、俺は見返りを貰っているんだ。なら食事くらい奢らせてくれよ?」

「そうしないと、いつまでも借りを貸したままじゃないか?」

「まあ、いいわ。あなたの好きにして?」

「ありがとう」

 

 その時、誓いのキスを交わしたのを憶えている。

 

 それで今頃になって、その約束の夫婦二人きりのディナータイムを取っているわけだな。

 しばらく、そこのレストランで待っていると、そのレストランでディナーショーが始まろうとしていた。

 実はこれを目当てにこのレストランを予約したのだ。

 しかも、この日はかなりの有名な曲を歌ってくれた。

 

「それではみなさん、お待たせしました。本日のディナーショーは、レナ・ブルージーさんによるソロライブでございます」

 

 レストランのステージでは、女性シンガーとジャズバンドが集結していた。私でも知っている構成だった。

 ピアノ、ウッドベース、ドラムス、アコースティックギター、サックスという定番の組み合わせだった。

 今日がクリスマス・イブということで、店の客も注目して見ている。

 ここでかかった曲も旧世紀の大ヒットナンバーだった。

 その題名がすごかった。

 女性シンガーがその題名を教えてくれた。

 

「皆さま、こんばんは。本日は私、レナ・ブルージーのソロライブにようこそ。本日はクリスマス・イブということで、旧世紀の大ヒット曲を中心に歌いたいと思います。まず、1曲目は、「Killing Me Softly With His Song」やさしく歌ってです」

 

Strumming my pain with his fingers

Singing my life with his words

Killing me softly with his song

Killing me softly with his song

Telling my whole life with his words

Killing me softly with his song

(私の苦しみを彼の指で奏でて

 私の人生を彼の言葉で歌って

 私を彼の歌でやさしく殺して

 私を彼の歌でやさしく殺して

 私の人生をすべてを彼の言葉で語って

 私を彼の歌でやさしく殺して)

 

I heard he sang a good song, I heard he had a style

And so I came to see him, to listen for a while

And there he was, this young boy a stranger to my eyes

(彼が素敵な歌を歌っているのが聴こえた

 彼にはスタイルがあったわ

 私は彼を見に近づき、そして、しばらく聴き入った

 彼はそこにいたわ。この若い少年は、私の目にはとても見知らぬ感じに映った)

 

Strumming my pain with his fingers

Singing my life with his words

Killing me softly with his song

Killing me softly with his song

Telling my whole life with his words

Killing me softly with his song

(私の苦しみを彼の指で奏でて

 私の人生を彼の言葉で歌って

 私を彼の歌でやさしく殺して

 私を彼の歌でやさしく殺して

 私の人生をすべてを彼の言葉で語って

 私を彼の歌でやさしく殺して)

 

I felt all flushed with fever, embarrassed by the crowd

I felt he’d found my letters and read each one out loud

I prayed that he would finish, but he just kept right on

(私は熱で顔が赤くなっているのを感じた。

 周囲に人がたくさんいて恥ずかしかった。

 彼は私の手紙を見つけ、その一つ一つを読み上げた。

 はやく読み終えて欲しいと祈ったけど

 彼は読み続けたわ)

 

Strumming my pain with his fingers

Singing my life with his words

Killing me softly with his song

Killing me softly with his song

Telling my whole life with his words

Killing me softly with his song

(私の苦しみを彼の指で奏でて

 私の人生を彼の言葉で歌って

 私を彼の歌でやさしく殺して

 私を彼の歌でやさしく殺して

 私の人生をすべてを彼の言葉で語って

 私を彼の歌でやさしく殺して)

 

He sang as if he knew me in all my dark despair

And then he looked right through me as if I wasn’t there

But he was there, this stranger, singing clear and loud

(彼は、深い絶望の淵にいる私のことを知っているかのように歌った。

 それから私のほうをまっすぐに見つめた

 まるで私がそこに存在しないかのように

 でも見知らぬ彼はそこにいたわ

 はっきりと高らかに歌いながら)

 

Strumming my pain with his fingers

Singing my life with his words

Killing me softly with his song

Killing me softly with his song

Telling my whole life with his words

Killing me softly with his song

(私の苦しみを彼の指で奏でて

 私の人生を彼の言葉で歌って

 私を彼の歌でやさしく殺して

 私を彼の歌でやさしく殺して

 私の人生をすべてを彼の言葉で語って

 私を彼の歌でやさしく殺して)

 

Strumming my pain with his fingers

Singing my life with his words

Killing me softly with his song

Killing me softly with his song

Telling my whole life with his words

Killing me softly with his song

 

 レストランの中は当然、拍手でうめつくされていたよ。

 まさかここで、この歌が聴けるとはね。

 かなり有名な曲だったのを覚えているよ。

 何せ、目の前の妻が好きな曲だからね。

 そうこうしていると、本日のお勧めディナーが運ばれてきた。

 マグロのカルパッチョに、魚介類のパスタに、ローストビーフ、後はデザートにショートケーキ。きちんと苺も乗っている。

 極上に料理に舌鼓を打つ私達。

 その間、ずっと心地よい音楽の生演奏がかかっていた。

 まさに、大人のためのレストラン。

 すると、レナ・ブルージーはもう一曲、美しいバラードを歌ってくれた…。

 これも旧世紀の日本の歌姫が歌った英語の曲だった。

 こちらの方が私には実は身に憶えがあったのだ…。

 

「次の曲は、旧世紀の日本の歌姫さんから、この曲を歌いたいと思います。曲は「Come Back To Me」です」

 

The rain falls on my windows

And a coldness runs through my soul

And the rain falls, rain falls

I don’t want to be alone

(雨が部屋の窓に降り注ぎ

 冷たさが私の心を通り過ぎていく

 そして雨は降り注ぎ 降り注ぎ続ける

 一人になりたくないの)

 

I wish that I could photoshop all our bad memories

Because the flashbacks, on the flashbacks

Won’t leave me alone

(私達の苦い思い出を書き換えられたらいいのに

 それは頻繁にフラッシュバックし

 私を悩ませているから)

 

If you come back to me

I’ll be all that you need

Baby, come back to me

Let me ,make up for what happened in the past

(もし、あなたが戻ってきてくれたら

 私は何でもするわ 

 ベイビー 戻ってきて

 してしまったことの償いをさせてちょうだい)

 

(chorus)

Baby come back to me (come back)

I’ll be everything you need (come back)

Boy you ‘re one in a million (come back)

Baby come back to me (come back)

I’ll be everything you need (come back)

Baby come back to me (come back)

You’re one in a million (one in a million)

(ベイビー 戻ってきて

 あなたの望むすべてになるから

 ベイビー 戻ってきて

 あなたは百万人に一人の人だから

 ベイビー 戻ってきて

 望むことは何でもするから

 ベイビー 戻ってきて

 あなたは百万人に一人の人)

 

Lower east side of Manhattan

She goes shopping for new clothes

And she buys this

And she buys that

Just leave her alone

(マンハッタンのイースト・サイドへ

 彼女は新しい服を買いに出かける

 それも買って

 あれも買った

 彼女をそっとしておいてあげて)

 

I wish that he would listen to her side of the story

Is isn’t that bad

Is isn’t that bad

And she’s wiser for it now

(ただ、彼が彼女の話に耳を傾けてくれたらと思う

 それはそんなに悪くない

 それはそんなにも悪くない

 彼女も今は賢くなったから)

 

I admit I cheated

Don’t know why I did it

But I do regret it

Nothing I can do or say can change the past

(浮気をしてしまったのは認めるわ

 どうしてそうしてしまったのか分からない

 だけど、私は後悔しているの

 何を言っても したとしても過去は変えられない)

(chorus)

 

 

Everything I ever did

Heaven knows I’m sorry babe

I was too dumb to see

You were always there for me

And my curiosity got the better of me

Baby take it easy on me

(私が今までにしてしまったこと全部

 神様は知っているわ ごめんなさい

 私はあまりにも愚かだった

 あなたはいつだってそこにいてくれたのに

 私の好奇心がそうさせてしまったの

 どうか 許してちょうだい)

 

Anything from A to Z

Call me what you wanna but

I open my heart to be

You are my priority

More than enough already

Baby take it easy on me

(AからZまでの言葉のどれでも

 あなたの好きなように呼んでくれて構わない

 私はあなたに心を開くわ

 あなたが一番大切なの

 分かるでしょう あなたは私に罰を与えたわ

 でも もうそれも十分のはず

 どうか許してちょうだい)

 

Baby, take it easy on me

(どうか許してちょうだい)

 

Baby come back to me

Baby come back to me

(戻ってきて 私の所へ戻ってきて)

 

Baby come back to me (come back)

I’ll be everything you need (come back)

Boy you ‘re one in a million (come back)

Baby come back to me (come back)

I’ll be everything you need (come back)

Baby come back to me (come back)

You’re one in a million (one in a million)

 

Baby come back to me (come back)

I’ll be everything you need (come back)

Boy you ‘re one in a million (come back)

Baby come back to me (come back)

I’ll be everything you need (come back)

Baby come back to me (come back)

You’re one in a million (one in a million)

 

 万雷の拍手と賞賛の声がレストランに響く。

 今夜のクリスマス・イブは本当に最高の夜だよ。

 その後、レナは何曲が歌って、そのライブは一時間程で終了した。

 その頃には、私達も、食後のワインを飲んでいた。

 

「このレストラン、いいわね~?」

「だろう?いつも予約でいっぱいだったけど、運が良かったよ。こんな聖夜で予約が取れたのだから」

「さっきの歌、すごい良かったよね。『やさしく殺して』とか。あれは私にも言える言葉ね。あなたにやさしく悩殺されていたわ。昔」

「悩殺か…。本当に君は確かに俺しか見えていなかったものな。俺もそうだよ」

「…でも、その後の曲も、俺には感慨深いものがあるな」

「今更、過去は消えないし。昔の若気の至りという奴を思いだしたよ」

「でも、あなたはあの後、あの曲みたいな言葉を言ってくれたわ。どんな風に呼んでくれても構わない。だから、償わせてくれ…って」

「本当にすまない。まさか浮気をするなんて」

 

 彼女にはそう謝るしかなかった。

 実は、昔、まだ私がジオニック社の社員だった頃だ。

 実は同じ社員の女性と一時的に不倫をしたことがある。

 私の直接の上司だった女性だった。

 彼女にはその時、役に立つ助言を貰ったが、実は結構深い仲になってしまった。

 あの時はアネットが、ジェニファーを身ごもっていたので、私は精神的にイライラしていたのだろう。

 なだれこむように身体を重ねてしまった。

 その時、一度、私の過ちで存亡の危機になったけど、さっきの歌のように、言葉をかけて戻ってきてくれた。

 あの時の光景がまたフラッシュバックしてきた。

 私は必死になって彼女をとめた。

 どんな風に呼んでくれて構わない。

 だから、その償いをさせてくれ…と。

 まあ、アネットは、その後、寛大に許してくれた。

 そして、私も自制心が身についたわけだな。

 

「ねえ?」

「何だ?」

「レストランでの食事が終わったら、どこに向かうつもりなの?」

「たまには、別の所でお互いに燃えてみようか?」

「え?」

「君を久しぶりに感じたい」

「…いいわ」

「行こうか…?」

 

 ディナーショーも終わって、ディナータイムも終わった私達は、またお互いにコートを着て、会計を済ませて、レストランの外に出る。

 さっきよりも雪が粉雪になって、うっすらと積もっている。

 吐く息は真っ白に見えるほど、外は寒い。

 だが、ロンドンの街のイルミネーションが凄くきれいだった。まるで宝石のように輝いている。

 

「どこに向かうの?」

「どこって決まっているだろう?ラブホテルだよ」

「え?」

「ジェニファーがあんなに大きくなったら、自宅で思い切り二人で楽しむのは怖いだろう?」

「なら、そういう所で、今夜だけは俺が燃えてみたいんだ」

「いいだろう…?」

 

 彼女は頬を赤くして、黙って頷いてくれた…。

 車に乗りこんだ私達はそのまま、割と高級なホテルへと向かった。

 大体、そのレストランから10分くらいの場所にあるホテル。

 今夜だけは私も激しく乱れてみたかった。

 もう一回、彼女に恋に落ちてみたかった。

 私も…彼女にやさしく殺してもらいたかった。

 やがて、ホテルについた私達は、タキシード姿とイブニングドレス姿でベッドに倒れ込んだ。

 そのまま、なだれこむように、激しくキスを交わす。

 

「エリオット…あなた…若い頃と同じ…。凄く甘い」

「君も…凄く甘い…!」

 

 そのまま、妻のイブニングドレスを脱がし始めた。

 後ろのファスナーを開けて、そのまま背中に唇を這わす。

 つい癖のようにそのまま、彼女のふくらみに手を触れて、乳首を責めた。

 私達の間に切ない喘ぎ声と甘い吐息が波のように絡み合う…。

 アネットがうつ伏せになってベッドに倒れている。

 イブニングドレスがどんどん脱がされて…彼女の白い肌が、薄暗い照明の中で色っぽく見えた。

 私も首に巻いた黒い蝶ネクタイを外して、下のグレーのベストのファスナーを開いた。

 タキシードのジャケットを、そのまま脱ぎ棄てる。

 グレーのベストも脱いで、白いワイシャツと黒いズボンだけになった。

 その間に彼女の素肌が露わになった。

 相変わらず、きれいな身体だった。

 そのまま、しばらく黙って…抱きしめ合う…。

 

「あなたとするの…久しぶりね…」

「本当だな」

「ねえ…?エリオット?」

「何だい?」

「私を殺すように…抱いて…?」

「あなたにもう一回、やさしく殺されてみたい…」

「もちろんだ…」

 

 すると彼女は、私のワイシャツのボタンを外し始めた。

 一つ一つ、ゆっくりと…。

 やがて、私の素肌も露わになっていく…。

 そのまま、タキシードの黒いズボンを、私は下ろした。

 私達の衣服が、部屋に無造作に脱ぎ棄てられている。

 お互いに全部の素肌を晒した。

 何年ぶりだろうか?

 彼女とこうして、全部の素肌を晒したのは。

 妻が枕の方に横たわり、私が全裸で覆いかぶさる。

 もう、自制心が利かない状態だった。

 そのまま、彼女を情熱のままに愛した。

 彼女が喘ぎ始める。既に蕾からは溢れるほど、彼女の愛が流れている…。

 激しく口づけを交わす。

 舌を絡ませて…お互いの口の中を賞味する。

 その内、彼女の手が、私の銀髪に触れ始める。

 そして、ぐしゃぐしゃにした。

 私は身体を密着させて、右手で花びらを愛撫する。

 溢れるほどに流れる、彼女の愛…。

 私の右手を温かく濡らしていく…。

 彼女は私を抱きしめて、快楽に身を委ねている。

 

「アネット。今夜はアフターピルはしなくていい」

「何故?」

「別にセックスはあれを入れるばかりじゃない。今夜は、俺はあれは入れない。手と唇だけで君を喘がせてみせる。満足させてみせる。君の身体に触れたいだけだから」

「あなたはそれで満足なの?」

「ああ。十分に満足だよ。お互いにもう子供を作るのは、少し遠慮しよう。それにアフターピルは身体にも負担がかかると聞いた。俺のわがままでそんなことを強要させるのはしたくない」

「エリオット…。ありがとう」

 

 彼女が私の唇に唇を重ねてきた。

 そのまま、私は彼女の身体に埋もれた。

 今でも十分魅力的なふくらみに顔をうずめる。そのまま瞳を閉じて、彼女のふくらみを触る。つい癖のように、指先で乳首を刺激してしまう。

 薄暗い照明の中、ただ彼女の温かな肌の色が私の目の前に広がる。そこから響く彼女の喘ぐ声。

 やがて、私の素直な欲望は、自然とふくらみを口に含むことで加速した。そっと彼女を口に含んだ。自然と舌で転がして、吸う。そして、舐めた。

 彼女が悩ましい喘ぎ声をあげる。

 

「きれいだ。アネット。君のその声、好きだな」

「私もあなたの声、好き」

「そうか…?」

 

 その間も私はふくらみを緩急つけて揉んでいる。

 私のやましい欲望は、自然と彼女の下半身へと行く。

 彼女の愛で濡れた花の芯。無性に舌で刺激したくなる。

 私の左手の中指はそのままその花の芯を刺激する。

 そっと擦ってみせた。温かい愛が私の指を濡らす。

 彼女の顔を覗き込む。彼女はやはり頬を赤くして、私を受け入れていた…。

 彼女の手は相変わらず、私の髪に触れている。私の顔に手を触れている。

 まるで、私は猫みたいな感じだ。

 自然と私も瞳を細めて、笑ってしまう。

 

「そろそろ…君の好きな私の舌で愛してあげようか…?」

「お願い…。あなたの舌が欲しい…!」

 

 鋭いナイフみたいな鼻でそこに触れた。彼女の愛の蜜を確認するように嗅いだ。

 独特の愛液の匂いだ。

 そして、私はそこで舌を這わせ始める…。

 花の芯を刺激する。淫らな音を立てて、私はそこで一人の雄になった。

 ダメだ。もう止められない。

 だんだん私も理性が効かなくなってきた。私もこのプレイはやめられない。

 自然とラビアの中に舌を入れてしまう。口髭で花の芯を刺激して、瞳を閉じて、彼女を抱いた。

 微かに甘い。甘い蜜だった。あの頃と変わっていない。

 挿入なしのセックスでも十分満足できるよ…。

 君のここを愛することが出来る男は、私だけなら…。

 

「…甘くて…美味しい…!」

「本当?」

「ああ。微かに甘い。毎回思うけど、君のここは甘いよ…。アネット」

「もっと激しく愛して…!」

「今夜はお互いに燃えてみよう」

「そう…ね」

 

 彼女が妖しく動き出した。腰を妖しく動かし…私を誘っている…。

 その間も私は彼女の花びらを愛している。

 彼女は艶やかに髪を乱して、私という快楽に身を任せる。

 だんだん激しく舌を使いだす。奥へ、彼女の奥へ…。

 彼女の花びらからは溢れるほどに、彼女の愛が流れている。

 それを私は味わう。

 やがて、彼女が激しく喘ぎだす。

 どんどん溢れてくる。すごいよ…。

 彼女が荒い息遣いを始めた。そろそろ絶頂が近いんだ。

 だんだん彼女の花びらも痙攣してきた。

 物欲しげに私を求めている…。

 やがて…一回目の絶頂が彼女に襲い掛かる。

 

「イ…いっちゃう!」

「イッていい。アネット。イクんだ」

「あうっ!!エリオット!」

 

 彼女が身体をのけぞらせた。たまらない快楽が全身を支配したんだ。

 彼女の花びらもヒクヒク痙攣している。

 夫に視姦され、妻は恥ずかしそうにしている。

 

「恥ずかしい…!」

「何を今更…。凄い…ヒクヒクしている…。欲しいんだね。俺が」

「遠慮しなくていいのよ。エリオット」

「アフターピルはするから…あなたを入れて…!」

「お願い…!あなたが全部欲しいの」

「わかった…。その前に…アネット。君の口戯でこれを装着させてくれないか?」

「コンドーム?」

「アネットのことだから、そう言うだろうと思って、フロントで買っておいた」

「何もかもお見通しね。いいわ…」

 

 今度は私が枕の方に寝転がる。

 アネットは艶やかに微笑み、自分の口戯で、コンドームを装着させてくれた。

 

「んんっ…!」

「んっ…!」

 

 私も微妙に喘ぐ。

 彼女の口戯を私は見つめた。そして、何物にも代えがたい快楽が、私を満たす…。

 彼女は深く私を咥えて、コンドームを装着させて、そのまま激しく愛してくれた。

 

「君のこれも最高だよ」

「んんっ…そ、そう…?」

「あなたも興奮しているのね…!すごい大きくなって…破裂しそうになっている!」

「ああ。いつでもいい。来てくれ…」

 

 

 彼女が花になった蕾に私自身をそっと近づける…。

 そのまま腰を落としていった。

 

「うう…!」

「ああ…!」

 

 久しぶりにつながった…。

 彼女がやがて妖しく蠢きだした。艶やかに微笑み、腰を上下に振り始めた。

 彼女の髪の毛が艶やかに波打っている。瞳を閉じて、私を求めて、次第に情熱的になってきた。

 

「ねえ?手を繋いで…!」

「ああ」

 

 やがてお互いの左手を繋いだ。私達の左手に輝く結婚指輪がきれいなきらめきを放っている。

 

「突き上げて!」

「行くよ」

「あうっ!!もっと激しく、来て…!」

 

 彼女が激しく私を求めている。こんなに情熱的な彼女は久しぶりに見た。欲しいんだね?私が…?

 誰にも渡したくないんだね。自分だけに振り向いて欲しいんだね。私を独占したいんだね…。

 彼女が私を起こさせて自分の胸に抱き締めた。

 そう。まるで彼女は、これは私の物…みたいに私を抱きしめている。私も彼女を抱きしめた。お互いの身体に汗が滲んできている。彼女は、私を受け入れ、腰を回して、自分で快楽を操った。時に浅く、時に深く腰を落として、私に溺れる。私も自分の腰を動かす。違う快感を操る。

 彼女が天井に顔を向けて喘いでいる。私の顔を自分の胸に沈めて抱きしめている。自然と私はそのふくらみを舐めた。その間、彼女は淫らに腰を自ら振っている。だんだんと私もその愛しい快楽が押し寄せてきていた…!

 

「すごい…!アネット…今日の君はすごいよ」

「どうしよう。止まらないの…!あなたが欲しい…!全部欲しい…!!お願い…!私の欲望を満たして…!」

「ああ。満たしてやるよ。もっと激しく、俺を求めて」

「もっと深く来て!」

「ううっ…!結構来ているが、もっと激しく…か?」

「私を壊すくらいに愛して!」

 

 凄い…!今までで一番深く入っているかも知れない。

 まるで…拷問みたいな凄い快楽が、私を満たしている。

 頭の中のヒューズが飛んでしまいそうだ…!

 やがて、私も快楽の絶頂に駆け上がろうとしていた。妻に無理矢理、絶頂へいかされる…!だが、今夜は最高のクリスマス・イブだった。

 私達の間に響く喘ぎ声とお互いを求める声。

 私の欲望を…彼女の欲望を…愛しい快楽が私達を埋め尽くしていく…!

 そうやって、いつまでも私達はつながり続けた。

 後に残ったのは、穏やかに抜ける快楽のみだった…。

 しばらくの間、私達はつながったままベッドに横になっていた。欲望を満たした妻は、少し寝息を立てている。私の胸で眠っている。

 左手をつなげたまま、彼女の乱れた髪が目の前に広がっている。彼女が絶頂へ駆け上がった時の言葉は、いつも聞いている言葉だった。

 

「愛している」

 

 ああ。私も君を愛しているよ。

 こんなに激しいのは、久しぶりだった。でも、おかげで私の欲望も満ちた。私に溺れる君は綺麗だ。

 

「愛しているよ。アネット」

 

 そう、囁いて、私の胸で眠る妻をただ抱きしめた。

 ラブホテルの一室には、ただ脱ぎ棄てられた、今夜の礼服があった。タキシードとイブニングドレス。そして、それぞれの下着…。

 今夜は泊りがけになるかもな。でも、それもいい。

 こんなに激しい愛の交換は、さすがにジェニファーには見せられないし、恥ずかしい。

 でも君が私に溺れる姿はいつ見ても綺麗だ。

 ここが愛の巣だから、君も溺れることが出来たんだね。

 私を君は“やさしく殺して”くれたよ…。

 

「ありがとうな…アネット…」

 

 そして…私も心地よい眠気が差して、そのまま深い眠りへと落ちていった…。

 

 翌朝。

 すっかり雪も積もったイギリスの街の朝に出た。

 昨夜から着ていた礼服姿のままで、眩しい光を浴びる。

 その光に瞳を細めている、私と彼女がいた。

 息が白く見えるほど寒い朝。

 

「さあ、帰ろうか?」

 

 一声かけると、彼女は頷いてくれた。

 

「ジェニファーが心配しているかも知れないわ」

「そうだね」

 

 イギリスの空は、綺麗な青空が見えた。

 新雪が積もる道を、私達は歩いていく。

 

「私達って花だと何かしらね?」

「何かな?あえて言うなら、百合の花じゃないか?」

「君が白い百合で、私が黒い百合。そういう組み合わせだよ。きっと俺達は」

「黒い百合って「呪い」って意味らしいわよ?」

「呪いか。俺に溺れる君はその“呪い”にかかった女性だね」

「まあ」

「一生、この呪いは解かないぞ?」

 

 私はそこで薄く微笑んで見せた。

 そんな私に、彼女も微笑み返してくれた…。

 私の“呪い”は、この愛だな。

 アネット。君は私に呪われたんだ。

 でも。それは私も同じだよ。

 君という“快楽”に私は呪われたのかも知れないな。

 でも、こんな呪いなら、私はいいよ。

 昨夜はお互いを“やさしく殺して”愛し合ったのだからね。

 一生、君の傍にいたい。

 私の願いはそれだけだ。

                     END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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